盲腸って何?
−急性虫垂炎について−
 よく耳にする病気の一つに盲腸(盲腸炎)があります。
 でも、一体どのような病気なのか、身体のどの器官で起こっているのか、皆さんご存知でしょうか?
 そこで今回は、俗にいう盲腸−急性虫垂炎について、ご説明します。
盲腸は盲腸で起きていない? −虫垂について−
 まずは俗にいう盲腸(盲腸炎)が起きる場所についてご説明しましょう。
 盲腸は、実は盲腸では起きていません。盲腸にぶらさがっている虫垂(ちゅうすい:図1参照)という部分で起こります。
 ですから、一般的に盲腸や盲腸炎とよばれている病気は、正確にいうと虫垂炎(急性虫垂炎)となります。
 虫垂にはリンパ組織が集まっています。このため腸扁桃(ちょうへんとう)とよばれており、免疫に関わる器官だともいわれています。しかし、大腸の一部でありながら、消化・吸収の働きはしていません。
なぜ起こる?どんな症状? −急性虫垂炎の原因と症状−
 急性虫垂炎は、虫垂に急性化膿性の炎症が起こる病気です。その原因ははっきりとしていませんが、何らかの理由(虫垂がねじれる、虫垂内部に便や粘液がつまるなど)で血行が悪くなり、そこに大腸菌などの腸内細菌やウイルスが侵入して発症すると考えられています。また、暴飲暴食や過労、不規則な生活、便秘、胃腸炎などが誘因となることも、しばしばあるようです。
 症状としては、まず腹痛があげられます。最初はみぞおちあたりに、そして次第に下腹部の右側に痛みを感じます。この痛みは時間が経つにつれてひどくなっていきます。
 ただし、お腹全体や、おへそのあたりが痛くなるといったように、痛みの感じる場所や感じ方には個人差があります。また、お子さんやお年寄りの場合、痛みが軽かったり、うまく痛みを訴えられない場合もありますから、注意しましょう。
 この他、37〜38℃前後の発熱や食欲不振、吐き気や嘔吐、便秘などもみられます。
油断できない虫垂炎! −急性虫垂炎を放置すると−
 前記したように、急性虫垂炎は虫垂に化膿性の炎症が起きる病気。つまり、放置していると虫垂に膿が溜まってしまうのです。
 しかも、症状が悪化すると虫垂の壁が破れ(穿孔といいます)、溜まっていた膿が腹腔内に放出されてしまいます。こうなると、腹膜炎を併発するなどの危険性があるのです。
切除するか、「散らす」か −急性虫垂炎の診断と治療−
 急性虫垂炎が疑われる場合の診察では、まず問診と触診が行われます。触診では図3の部分(マックバーネー点といいます)などを押して、痛みの有無や程度を調べます。
 血液検査(急性虫垂炎になると白血球の数が多くなる)や超音波検査、CTを使った検査を行い、進行度や周辺器官への影響などを確認します。
 その後、治療となるわけですが、その治療法は大きく分けて2つ。手術療法で虫垂を切除するか、抗生物質を使って炎症を緩和する、俗にいう「散らす」かのどちらかになります。この判断は、発症してからの経過時間や、炎症の進行度、穿孔が生じているかどうか、などを踏まえた上で判断されます。
 では、それぞれの治療法について簡単にご紹介してみましょう。
手術療法
 もっとも確実な治療法といえます。以前は開腹手術が一般的でしたが、現在では、身体への負担が少なく、術後の回復が早いので、お腹に小さな穴を数か所開けるだけで行なえる腹腔鏡下手術が増えてきました。
 ただし、症状が悪化している場合は、開腹手術でしか治療できないこともあります。
 
薬物療法
 抗生物質を投与して炎症を緩和させる療法で、俗に「(痛みを)散らす」などといわれます。初期段階であれば手術療法と同じくらいの効果があります。ただし、抗生物質の投与のみで治療した場合、再発する確率は高いという研究結果も報告されていますから、不安な方は医師の説明をしっかりと受けるようにしましょう。
 なお、手術療法を行う前後に、抗生物質を投与することもあります。
 急性虫垂炎(盲腸)というと、「手術は簡単だし、それはど恐い病気ではない」という考え方が一般的なようです。確かに、発症初期であれば入院日数も短くてすみますし、手術も困難ではありません。しかし放置してしまうと、手術も簡単ではなく、重篤な状態になってしまう危険性があります。
 どのような病気でもそうですが、急性虫垂炎も初期対応が非常に大切。「お腹が痛いくらい大丈夫」と我慢せず、すぐに医療機関(外科または胃腸科)を受診してください。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2008年3月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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