食事を食べる、会話を楽しむ、物をもち上げるときに食いしばる…。歯や歯茎(歯肉)は、私たちが生活する上で、非常に重要な役目を果たしています。  
 しかし、むし歯(う蝕)や歯周病にかかっている人は多いのが現実。どうしてなのでしょう。  
 今回は、むし歯と歯周病の原因と、その予防法について、ご説明します。
どうしてむし歯になるの?
 むし歯の原因はストレプトコッカス・ミュータンス(以下ミュータンス菌)という細菌です。  
 ミュータンス菌は、私たちが食事を食べた後、食べかすのなかの糖質(ショ糖)を分解し、歯垢(プラーク)を作ります。 歯垢はとてもネバネバしており、歯にべったりと付着します。また歯垢は、ミュ ータンス菌の住みかとなります。このなかで、ミュータンス菌は増殖し、酸を作りだします。この酸により、歯が溶かされ、むし歯になってしまうのです。
 
 
歯周病の原因は?
 歯周病の原因も歯垢です。歯垢はミュータンス菌などの細菌の温床となり、その細菌によって歯茎の炎症などが起こります。これが歯周病です。  
 ただ、歯周病の場合、要因が多くあります。例えば、ストレスや疲労もそのひとつ。ストレスや疲労により身体の免疫力が低下し、口のなかの細菌が繁殖するため、歯周病が悪化するのです。 この他にも喫煙や、糖尿病などの全身疾患、体調不良なども、歯周病の要因となります。  
 なお、歯周病は「歯肉炎」という状態から始まり、進行すると「歯周炎」になりま す。歯周炎になると歯がぐらつき、抜けてしまうこともあります。

 
<歯周病の要因>
ストレス・疲労…身体の抵抗力が弱まり、歯周病にかかりやすく、また悪化しやすくなる
喫煙…歯周組織の抵抗力を弱らせる
糖尿病…歯周病になりやすい傾向がある
食べ物…糖分の多い飲食物や柔らかい食べ物が中心の食生活だと、歯垢が蓄積しやすい
 
 
●コラム●
子供の歯は虫歯になりやすい?
 歯の一番外側にある組織をエナメル質といいます。このエナメル質は非常に硬いのですが、乳歯や生え代わったばかりの永久歯は、エナメル質表面の結晶構造がまだしっかりしていません。このため、歯の表面が溶けやすく、むし歯になりやすいのです。  
 また、噛み切る役目の前歯よりも、噛み砕く、すりつぶす、といった役目の奥歯のほうが、くぼみに食べかすがたまりやすいため、歯垢ができやすいといえます。歯磨きの習慣をつけさせる、仕上げ磨きや歯磨き後のチェックをするなど、親御さんがお子さんの歯を守ってあげてください。
 
むし歯と歯周病を予防するためには
 むし歯の原因菌であり、歯周病の原因、歯垢を作りだすミュータンス菌は、決して特別な菌ではなく、成人であれば誰の口のなかにもいます。ですから、むし歯や歯周病を予防するには、ミュータンス菌の「エサ」となる食べかすや、ミュータンス菌などの細菌の温床となる歯垢を取り除くことが重要。食後には必ず、歯を磨くようにしましょう。このとき、歯ブラシだけではなく、歯と歯の間の清掃用具(歯間ブラシやデンタルフロス)を用いると、より効果的です。  
 また、定期的に歯科検診を受けることも大切です。食べかすや歯垢は、ちゃんと除去できているつもりでも、意外と残ってしまいます。歯科医院で半年〜1年に1度は診てもらい、歯や歯茎の健康状態をチェックしてもらいましょう。  
 この他、食生活や喫煙などの生活習慣の見直しも、むし歯や歯周病の予防になります。
 
<むし歯・歯周病の予防法>
1.基本は歯磨き!
 食後は必ず歯を磨きましょう。歯間ブラシやデンタルフロスを併用すると効果的です
2.定期検診を受ける
 年齢を問わず、定期検診を受けましょう。正しい歯磨きの仕方を教わることもできます
3.食生活を見直す
 噛みごたえのあるものをよく噛んで食べましょう。また、栄養バランスを考えた食生活を
4.生活習慣の改善
 ストレスや疲労を溜めない、睡眠をしっかりとる、禁煙など、生活習慣を改善しましょう
  
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2008年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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