救命処置を覚えよう!
〜心配蘇生とAED〜

命に関わる重篤な状態のときに行なう応急手当、それが救命処置です。今回は、その救命処置のうち、心肺蘇生法のやり方とAED(自動体外式除細動器)の使い方をご説明します。身近な人が目の前で倒れたとき、その命を救うため、あなたにできること。それが心肺蘇生法であり、AEDを使用した救命処置です。これを機会に、ぜひ、覚えてください。

〜心配蘇生のやり方〜
 それでは早速、心肺蘇生法の手順(傷病者〔倒れている人〕が8歳以上の場合)から、ご説明します。
1、意識の確認
 傷病者を発見したら、肩を叩き、耳もとで大きな声でよびかける(例「もしもし、大丈夫ですか!」、「○○さん大丈夫!?」)。これを3回行なう。
 
2、周囲に助けを求める
 意識がなかったら、大きな声で周囲に助けを求める(例「誰か来てください!人が倒れています!」)。
 
3、救急車とAEDの手配
 助けが来たら、救急車の手配とAEDをもってきてもらうように頼む。このとき、それぞれ特定の人に頼む(例「あなたは救急車をよんでください。あなたはAEDをもってきてください」)。周囲に人がいない場合は、自分で119番通報し、すぐに4を行なう。
 
   
   
※1 4、軌道の確保と呼吸の確認
 手であごの先をあげ、気道を確保する。次に、自分の頬を傷病者の鼻と口に近づけ、目線を傷病者の胸に向ける。この状態で、傷病者の (1) 胸や腹部が上がり下がりしているか (2) 呼吸音が聞こえるか (3) 息が頬で感じられるかを確認。呼吸していない、または正常な呼吸でない場合(しゃくりあげるような呼吸、途切れ途切れの呼吸)、すぐに 5 を行なう。
 
 
※1 5、人工呼吸
 額を押さえている手の親指、人差し指で傷病者の鼻をつまむ。次に、自分の口で傷病者の口を覆うように塞ぎ、1秒かけて息を吹き込む。これを2回行なう。このとき、胸がもち上がっているか、確認しながら行なうこと。ただし、胸がもち上がらなくても、人工呼吸は2回までとし、すぐに6を行なう。また、傷病者が口から出血している、嘔吐物がある、C型肝炎などの感染症が疑われる、といった人工呼吸が躊躇(ためら)われる場合、人工呼吸は行なわず、6を行なう。
  
 
6、胸骨圧迫(心臓マッサージ) 
 人工呼吸を2回行なったら、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始する。胸の真んなかに手の付け根を置き、もう片方の手を重ね、両手の指を組む。肘を伸ばし、垂直に圧迫(傷病者の胸が4〜5cmくらい沈む程度の強さ)。このとき、早いテンポで、絶えまなく行なう。また、圧迫と圧迫の間は、しつかりと胸が戻るまで、圧迫をゆるめること。これを30回続ける。
 
 
 
7、胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返す(心肺蘇生法)
 胸骨圧迫を30回行なったら、人工呼吸を2回行なう。この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせ(30:2)が心肺蘇生法で、傷病者が通常の呼吸をし始めるか、救急車が到着し、救急隊に引き継ぐまで、※2 休まず続ける
 
※1 現在、気道確保後の呼吸の確認と、人工呼吸を省略する方向にあります。
※2 ただし、2分間(5サイクル)行なった時点で体動(呼吸や手足の動きなど)を確認し、体動がなければ心肺蘇生法を続けます。またこのときに、心肺蘇生法を行なえる人が複数いる場合は交代してください。
 
 
〜AEDの使い方〜
 心臓が止まる原因に「心室細動」があります。心室細動とは、心臓の筋肉が細かく震え、全身に血を送りだせない疾患のこと。AEDは、この状態を電気ショックにより治め、心臓を元の状態に戻す医療器具です。  
 ただ、医療器具といっても、AEDは使用方法が簡単で、音声メッセージに従って操作できるようになっています。ですから、必要になったとき、その場にいる誰もが使えるのです。  
 では、使い方をご説明しましょう。  
 「心肺蘇生法のやり方 3」で、AEDをもってくるよう頼んでいますが(3・救急車とAEDの手配)、心肺蘇生法を行なっているときにAEDが届いたら、心肺蘇生法を中断し、ケースから本体を取りだして電源を入れます。
 
 
 次に傷病者の衣服を脱がせ、胸をだし、AEDの電源パットを貼ります。このとき、傷病者の身体が汗などの液体で濡れている場合はよく拭き取り、体毛が濃い場合は、強く貼りつけるか、一度パットをつけてはがし、体毛を除去してから、新しいパットを貼ります。  
 電源パットを貼ったら、※3 自動的に心電図の解析を行なうので、周囲の人に離れるよう促します。電気ショックが必要な場合は、音声メッセージに従って、ショックボタンを押します。このときも、周囲の人に傷病者から離れるよう促してください。  
 電気ショックが終了したら、音声メッセージに従って、心肺蘇生法を再開します。  
  
 今回、心肺蘇生法のやり方とAEDの使い方をご説明しましたが、頭で理解するだけでなく、※4実際に身体を動かして練習したほうが、いざというときに自信をもって行動できます。もし、救命処置に興味をもたれた場合は、お住まいの地域の消防本部や自治体などで行なわれている救命講習にご参加ください(日程や講習場所などについては、消防本部や自治体にお問い合わせください)。  
 また、傷病者が8歳未満の場合、やり方が違います。お子さんがいる、あるいはこれからお子さんが誕生する ※5親御さんやご家族の方は、講習を受けておきましょう。  
 なお、現在の心肺蘇生法は、以前と比べ簡略化された点が多く、行ないやすくなりました。過去3年以上、講習を受けていない方も、新たなやり方を覚える意味で、再度、講習を受けることをお勧めします。
 
※3  解析ボタンを押すタイプもあります。音声メッセージに従ってください。
※4 大変危険ですので、人を傷病者に見立てた練習はせず、専用の人形を用いてください。
※5 妊娠中の方は危険ですので、出産後、心身ともに落ち着いてから講習を受けましょう。
 
参考資料・[改訂3版]応急手当講習テキスト〜救急車がくるまでに〜(制作・東京法令出版株式会社) 
 
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2008年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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