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低血圧高血圧

 私たちが病医院で受ける一番身近な検査は、「血圧測定」ではないでしょうか?
 「血圧なら家でも毎日測ってるよ」 −血圧が高いなどの理由で、毎日血圧を記録するように勧められている方もいるでしょう。反対に、「健康診断の度に血圧が低いと指摘されるけれど、低血圧は病気ではないと聞くし、どうすればいいのだろう?」という方も多いかもしれません。  
 血圧が高い、低い……今回は、普段とりあげられにくい 「低血圧」について、それから、生活習慣病と結びつきやすい「高血圧」についてとりあげます。

血圧とは?
 血圧とは、血管のなかを流れる血液が、血管の壁を押し広げる力のことです。つまり、血液が血管壁を押す力が強くなるほど、血圧は高くなります。  
 血圧は、二つの値で表わされます。よく、「上がいくつ、下がいくつ」といういい方をしますが、心臓が縮んで、血液を送りだしたときの血圧を「収縮期血圧(最大血圧)」といい、これを俗に上の血圧とよびます。
低血圧と低血圧症
 厳密には定義されていませんが、一般的に上の血圧が100m/hg以下の場合を、低血圧とよびます。しかし、血圧が低いこと自体は、病気ではありませんので、低血圧によって、治療を必要とする何らかの症状が現れると「低血圧症」という病名がつきます。低血圧症には、次の4つがあります。
1、本態性低血圧症
 低血圧を起こしている原因はわからないが、何らかの自覚症状があるもの。
 
2、症候性(二次性)低血圧症
 心臓疾患・内分泌系器官疾患・自律神経失調症といった他の疾患、また、降圧剤や向精神薬などの副作用が原因となって、低血圧が引き起こされるもの。それに伴って何らかの症状が起こる。この場合は、元の疾患の治療を行なう、薬剤の処方を変えるなどして、低血圧の改善をはかる。
 
3、起立性低血圧症
 急に立ち上がったときや、長時間立っているときなどに、自律神経による血圧の調整がうまく働かず、低血圧を生じ、それに伴って何らかの症状が起こるもの。
    
4、食事性低血圧症
 食事の際、胃と腸の血流が増え、全身への血流が減少し、急に低血圧となり、何らかの症状が起こるもの
 
低血圧症の症状と治療 
症状
 身体症状としては、めまい・立ちくらみ・頭痛・全身のだるさ・動惇・頻脈などがあり、ときに失神を起こす場合もあります。
 精神症状としては、朝の目覚めがよくない・起きられない・不安感・不眠・食欲不振などがあげられます。
治療
 低血圧により、前述のような身体症状がみられる場合は、血圧を上げる薬やステロイド薬が、精神症状に対しては、抗不安薬や自律神経を整える薬などが処方されます。
 
生活改善
 日常生活を振り返ってみて、生活が不規則になっている場合は、早寝早起きをするなど、生活改善をはかります。また、リラックスすることを心がけ、一日のなかで、くつろげる時間を設けましょう。
高血圧 
 低血圧と違い、高血圧(表1参照)は身体に様々な悪影響をおよぼし、生活習慣病を引き起こす引き金ともなります。  
 高血圧には、何らかの疾患が背景となって高血圧が起こる「症候性(二次性)高血圧」と、様々な因子が重なることで起こると考えられている「本態性高血圧」の二種類があります。  
 
成人における血圧の分類(表1)
分類 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
至適血圧 <120 <80
正常血圧 <130 <85
正常高値血圧 130〜139または85〜89
軽症高血圧 140〜159または90〜99
中等症高血圧 160〜179または100〜109
重症高血圧 ≧180または≧110
収縮期高血圧 ≧140かつ<90
 
 前者の場合は、背景にある病気を治療することで高血圧の改善をはかります。しかし、高血圧を患っている人の90%以上は後者の本態性高血圧(図参照)であるといわれています。血管に常に高い圧力がかかっていると、血管の壁が厚くなり、弾力性が失なわれていきます。これを動脈硬化といい、放置すると、様々な生活習慣病につながる可能性があります。
 
 
 表2にあるように、40代までは男性の高血圧の方が多いのですが、女性も70代以降になると、高血圧の方が多くなっています。  
 高血圧を指摘されたら、生活習慣を見直して改善をはかるとともに、必要に応じて服薬を中心とした治療を行なうことになります。健康維持のために大切なことですので、自分の血圧はよく把握しておきましょう。
 
参考資料;表1日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2004年版」より/表2 厚生労働省「平成16年度国民健康・栄養調査
  
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2008年11月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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