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今月号のテーマは「脳腫瘍」です。みなさんのなかには、病名を聞いただけで「不治の病」や「怖い病気」というイメージを抱く方がいらっしゃるかもしれません。
 しかし、決してマイナスイメージばかりではなく、脳腫瘍は、きちんと治療すれば完治する可能性の高い病気でもあるのです。この機会に脳腫瘍について正しい知識を知っておきましょう。
 
脳腫瘍って何だろう?
 臓器はそれぞれとても重要な役割をもっていますが、とりわけ脳は、生命の維持のために重要であることはもちろん、心の面でも記憶や感情のコントロールなどをつかさどるなど、きわめて重要な臓器であるといえます。
 脳腫瘍とは、その脳や脳をとりまく組織にできる腫瘍の総称で、複数のタイプがあります(次の「脳腫瘍の種類と原因」で詳しくご紹介します)。
 脳腫瘍の患者数は10万人あたり10人程度と推測されており、乳幼児から高齢者まであらゆる世代にみられるのが特徴です。
脳腫瘤の種類と原因
○種類
 脳腫瘍は、頭(頭蓋内)に発生するという点は共通していても、細胞のタイプと性質によって種類は様々です。右表参照)。 
 最も多くみられるのは神経膠腫(グリオーマ)ですが、このグリオーマにもいくつもの種類があります。
 なかでも神経膠芽腫とよばれるものは増殖のスピードが速く、症状が現れて数か月で危険な状態に陥る場合もあります。しかしこの場合も早期に治療を開始し、手術で腫瘍を切除できれば、その後の経過は比較的良好です。
○原因
 脳腫瘍の原因は遺伝子の変異とされていますが、それ以上のことは現在でも不明です。ただし、腫瘍の進行を助長するものとして、高たんぱく・高脂肪食品の過剰摂取、過度のストレス、喫煙などがあげられています。また、ほかの臓器にがんがある場合、身内に脳腫瘍を発症した人がいる場合は、脳腫瘍のリスクが高くなると考えられます。
 
脳腫瘍の症状と検査
○症状
 脳腫瘍の主な症状として、次の3つがあげられます。
(1)慢性的な頭痛
  初期では2割程度、進行すると7割程度の患者さんにみられます。起床時に最も強く、時間が経つにつれて少し改善する傾向があります。
(2)原因不明の吐き気や嘔吐
  頭痛とともに吐き気が続いたり、嘔吐するような場合もあります。
(3)視神経の異常
  腫瘍が大きくなって神経が圧迫され、視力低下などの自覚症状を引き起こす場合があります。この他、発生した部位によっては「しびれ・手足のマヒ」「言葉がうまくでない」「聴覚障害」などがあります。
○検査
 基本的に、まずは画像によって行ないます。とくにCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像)、脳血管造影が一般的です。 
 次に、画像検査での診断をもとにして、腫瘍組織そのものを調べます。これは脳腫瘍の種類や悪性度を詳しく知るためで、この結果によって治療方針が決められることになります。
 
脳腫瘍の治療と治療後の生活
○治療
 どのような脳腫瘍でも、治療の原則は腫瘍をすべて取り除くことです。最も効果的なのは手術による摘出ですが、その他に、放射線療法(右囲み参照)や化学療法(薬物療法)を行なう場合もあります。


○治療後の生活
 手術や放射線による治療がひと段落した後も、しばらくは定期的に通院し、経過をみなければなりません。定期検診では、画像検査や血液検査が行なわれます。

以上、脳腫瘍について基本的なことをご説明しましたが、「身体の調子が悪い……」、「おかしいな……」と思ったら、早めに病院で検査をしてもらうことが大切です。早期発見できれば、それだけ治療もしやすくなりますし、治療を受けて完治すれば、普通の生活に戻れるのです。また、脳腫瘍は原因が「遺伝子の変異」としかわかっていないため、適確な予防法がありません。しかし、腫瘍の進行を助長するような行動を改めるなど、脳にとっても健康的な生活習慣(下囲み参照)を心がけて、脳を労わるようにしてみましょう。
(参考資料:「脳腫瘍のすべてがわかる本」監修・久保長生 発行・講談社) 
 
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年3月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載
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