今月から3回にわたって特集する、生活習慣病の基礎―第1回目は、40歳以上では10人に1人ともいわれる「糖尿病」。「肥満・偏食・運動不足・ストレス」を普段から自覚されている方には、ぜひ読んでいただきたい記事です。
800万人以上ともいわれる「糖尿病を強く疑われる人」。このうち、糖尿痛の治療を行っている人は約3割程度にとどまっています。そして、糖尿病を放置した結果、重篤な合併症を招くケースが増えています。さらに、「糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備軍)」にあたる人は1050万人ともいわれ、その数は驚くほど増加しています。
(厚生労働省「糖尿病実態調査」および「国民健康・栄養調査」)
糖尿病は、高血糖(血液中のブドウ糖濃度が高い状態)が続き、「血管に障害」をもたらすという病気です。日本人の糖尿病の95%は、遺伝的な要因と生活習慣(内臓肥満・食生活・運動不足・ストレス)が原因で起きています。
私たちの身体は、食物から摂取したブドウ糖を血液によって全身に運び、細胞に取り込んで、活動のためのエネルギーとして使用しています。また、エネルギーとして使用されなかったブドウ糖は、形を変えて筋肉や脂肪に蓄えられます。
このときに、必要不可欠な働きをするのが、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。インスリンの働きによりブドウ糖は、血液から身体に取り込まれます。インスリンの分泌が不足したり、働きが低下すると、高血糖が引き起こされます。
日本人は欧米人に比べて、体質的にインスリンの分泌が少ない人が少なくありません(遺伝的要因)。さらに、内臓肥満・食生活・運動不足・ストレスなどは、分泌されたインスリンの働きを弱める原因となります。
糖尿病は、血管の障害が起きても、自覚症状が遅れて現れる病気です。代表的な自覚症状としては、極端にのどが渇く・食事量が増えているのにやせていく・視力の低下・皮膚のかゆみ・手足の冷えなどがありますが、こうした自覚症状が現れてきたときは、すでに症状が進んでいる可能性があります。
早期発見のためには、定期的な健康診断の受診が欠かせません。糖尿病予備軍であれば、生活習慣の改善によって正常な状態に戻すことも可能なのです。
糖尿病発症の有無を調べるため、次のような様々な検査を行ないます。
《尿糖検査》
正常な血糖値の範囲内である140mg/dlであれば、尿には糖がでない(腎臓が正常に機能していると仮定)。血糖値が160〜180mg/dlを超えると尿に糖がでる。
《血糖検査》
血液検査により血液中のブドウ糖濃度を調べる。空腹時血糖値とブドウ糖負荷後2時間値、この2つの検査の組み合わせで、糖尿病および糖尿病予備軍の診断を行なう。
・空腹時血糖値
夕食を食べてから10時間以上経った状態での血糖値。この検査で血糖値が126mg/dl以上は、「糖尿病型」と判定される。
・ブドウ糖負荷後2時間値
空腹時血糖値を調べた後、ブドウ糖75gを飲み、2時間後の血糖値を調べる検査。血糖値が200mg/dl以上は、「糖尿病型」。
糖尿病は自然には治らない病気です。治療は、食事療法・運動療法・薬物療法により、合併症を予防するための血糖値コントロールという形で行なわれます。このうち食事療法が最も大事で、食事療法がうまくいかないと他の治療法も効果がありません。
糖尿病を放置すると、症状がでてからおよそ5〜7年で合併症が現れてきます。糖尿病の治療に比べて合併症の治療は、さらに身体への負担が多くなります。糖尿病には、早期発見・治療、そして治療の継続が大切なのです。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載