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基礎からシリーズ・2 高血圧症

高血圧症の患者は推定で3500万人から4000万人、正常高値血圧(高血圧症予備軍)を含めると、5500万ともいわれています。

日本人のほぼ2人に1人……あなたご自身はいかがでしょうか?

高血圧症の怖さ

 

 頭が重い(痛い)、動悸・めまい・耳鳴りがする、赤面など、これらが高血圧の代表的な症状と思われている方も多いと思います。しかし、このような症状は、高血圧以外の疾患が原因で起こることが多くあります。実際、こうした症状の起こる頻度を、高血圧の人とそうではない人と比べてみても、極端に大きな差はありません(ただ、これらの症状が高血圧による場合、高血圧がだいぶ進行していることも考えられます)。  

 すでに数値の上では高血圧症あるいはその予備軍なのに、自覚症状がない……高血圧の怖さはここにあります。高血圧症は、これといった症状のないうちに発症し、進行していく病気なのです。

 健康診断を受ける。あるいは医療機関や家庭で血圧を測る。これらのことを意識的にかつ、定期的に行ないましょう。高血圧の発見が遅れ、診断されたときは、すでに重篤な合併症を引き起こしていたといったことにならないように。

 

高血圧症とは

 血圧とは、心臓から血液が送りだされたとき、血液によって血管の内壁にかかる圧力のことをいいます。血圧は、心臓が収縮するときにもっとも高くなり(収縮期血圧)、心臓が拡張するときにもっとも低くなります(拡張期血圧)。  

 食塩の過剰摂取・ストレス・運動不足・過労・肥満などの「生活習慣による要因」と、体質などの「遺伝的要因」の重なり。さらには、腎臓病やホルモンの異常などの「病気による要因」。そうした影響を受けると、心臓は働きを強め、血液をより多く身体に送り出そうとします。その結果、高い圧力が血管にかかることになります。

 この状態が長い期間、続いているのが高血圧症です。高血圧とされる血圧の値は、おおむね収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上。どちらか一方でもこの値を超えていると高血圧と診断されます。

 高血圧の状態が続くと、血液の圧力に血管が耐えるために動脈の壁が厚くなります。このため、血液の通り道は狭くなります。さらに血管が傷ついたりすると、コレステロールなどの脂質が溜まりやすくなり、内腔は狭くなります。このときの血管は、健康時の血管よりも柔軟性を失い、硬く破れやすくなっています。これが動脈硬化です。

 高血圧で問題なのは、この動脈硬化を引き起こすことです。そして、高血圧と動脈硬化は、悪循環しながら症状が進行していきます。

 

高血圧症の治療

 高血圧を治療する目的は、動脈硬化によって起こる、脳卒中、心臓病、腎臓病などの合併症を防ぐことにあります。  

 高血圧の原因の90%は、遺伝的要因と生活習慣の乱れが重なって起こります。高血圧の治療を進めるときにも、まず、生活習慣の改善が基本になります。

 日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009』には「初診時の高血圧管理計画」として、血圧がどの程度高いのかと、高血圧以外の危険因子がどのくらいあるかによって治療をどう進めていくかを、3段階に分けて紹介しています(図参照)。

 低リスク群は、生活習慣の改善が治療の中心となりますが、3か月続けても血圧が基準値以下に下がらない場合には、薬による治療が併せて行なわれます。

 中等リスク群も生活習慣の改善から取り組みますが、低リスク群より早く、1か月後に基準値以下にならない場合には、薬物療法を併せて行なっていきます。

 高リスク群は、高い血圧のままでは患者が危険なため、生活習慣の改善と薬物療法を同時に始めます。

 高血圧の治療のために使用される降庄薬には、血管を広げる薬と血液量を減らす薬があります。

 降庄薬の選択には、いろいろな要素が絡んでくるため、簡単には決められません。医師とよく相談して治療を進めていってください。

 

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年8月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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