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突発性難聴とメニエール病

感音性難聴の代表的疾患である突発性難聴とメニエール病は、いまだに原因がはっきり解明されていません。

しかし早期に適切な治療を受ければ回復する可能性もあるため、聞こえの悪さに気づいたら即刻受診が必要です。治療はまさに時間との戦いなのです。


難聴の分類 

 

難聴を分類すると

 難聴は、大きく「伝音性難聴」と「感音性難聴」に分類されます。伝音性難聴とは、音を拾って増幅する器官(外耳道・鼓膜・耳小骨など)に異常が発生するもので、耳垢詰まり、中耳炎、鼓膜損傷などが該当します。基本的には治療法が確立されており、聴力の回復が期待できる難聴です。

 これに対し感音性難聴は、音を信号に変換し脳に伝える神経系(内耳や大脳)に異常が発生するもので、聴力の回復は非常に困難です。突発性難聴やメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴などが該当します。

 

突発性難聴の症状と治療

 ある日突然、片側の耳の聞こえが悪くなる疾患が突発性難聴です。40代〜60代に多く、発症率は約3千人に1人と推定されています。

 何月何日に発症したとはっきりわかるのが特徴で、難聴が徐々に悪化したり、日によって聞こえの程度が変ったりすることはありません。また約3割にめまいが起こ りますが、1時的なもので、繰り返すこともありません。

 ストレスや過労が発症の誘因になることが多いため、1日も早く入院して安静治療を行うことが望ましく、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内の治療開始が必要です。

 適切に治療すれば、患者さんの3分の1は完治し、3分の1は難聴や耳鳴りが残るものの症状は軽くなり、あとの3分の1は残念ながら治りません。

 目安として、 (1)2週間以内に治療開始 (2)初診時の難聴が高度(90デシペル以上)ではない (3)めまいがない (4)比較的年齢が若い などの条件を満たせば完治しやすいといわれます。

 原因として内耳の循環障害やウイルス感染説が有力視されているため、治療は患者さんの状態に合わせ、様々な方法が試みられます。

 薬剤治療が原則で、ステロイド剤や血管拡張剤・ビタミン剤・代謝を高める薬剤・血液を固まりにくくする薬剤・抗ウイルス薬・漢方薬・鍼灸治療などが行なわれます。

 また薬物治療に併せて頸部の神経に局所麻酔剤を注射する「星状神経節ブロック」、密閉タンクに入って徐々に気圧を上げる「高気圧酸素療法」などが行なわれる場合もあります。

 

メニエール病の症状と治療

 ぐるぐる回る回転性めまいと、通常は片耳の難聴、耳鳴りを主症状とする疾患です。突然の激しいめまい発作が30分から6時間程度続き、その間、難聴や耳鳴り以外に吐き気や嘔吐、腹痛などの症状も伴います。発作時は立っていることができず、じっと横になっているしかありません。めまいが治まると難聴や耳鳴りも元に戻りますが、不定期にめまい発作を繰り返すたびに少しずつ難聴が悪化していくのも特徴の1つです。

 30代〜40代の女性にやや多く、やせ型で几帳面、神経質な性格の人がなりやすいという統計もあります。発症には精神的ストレスや肉体的疲労、睡眠不足が引き金になるようです。初期には突発性難聴や前庭神経炎と鑑別できない場合があるため、確定診断には様々な検査を行なう必要があります。

 原因は不明ですが、患者さんの内耳では内リンパ腔が腫れる「内リンパ水腫」が起きることがわかっています。治療はこの内リンパ水腫を軽減させるため、様々な薬剤が使用されます。最も一般的に使われるのは利尿剤のイソソルビド(製品名はイソバイドなど)で、これにビタミン剤や血流改善剤を組み合わせることもあります。

 繰り返すめまい発作のため社会生活に支障をきたすようであれば、まれに手術も選択されます。過剰な内リンパ液を排出させる穴をあける「内リンパ嚢解放術」と、めまいの原因の平衡感覚を司る神経を切断する「前庭神経切除術」が一般的です。

 普及率の高い内リンパ嚢解放術による再発率は20〜30%といわれますが、より難度の高い前庭神経切除術では95%以上の患者さんのめまいが完治します。

 いずれにしても症状が固定化する前に受診して、早期に治療開始することが重症化を防ぐポイントです。

 

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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