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何とかしたいこの疲れ〜慢性疲労症候群〜CFS

 慢性疲労症候群という病気をご存知ですか?いわゆる「慢性疲労」とは違い、原因の分からない極度の疲労感が、長期間続く病気です。診断基準ができたのが1988年と比較的遅く、1990年代ごろから、日本でも国際診断基準に基づく症例が報告され、現在も患者数が増え続けています。

 

慢性疲労症候群とはどんな病気か

 慢性疲労症候群は、身体を動かせないほどの疲労が6か月以上の長期間にわたって続き、日常生活に支障をきたすほどになる病気です。Chronic Fatigue Syndromeという英語名から「CFS」ともよばれています。  

 健康な人が、かぜや気管支炎などを患ったことをきっかけに、かぜに似た症状がいつまでも長引くのと同じような状態で発症することが多い病気です。休んでいても改善しなかったり、摂食障害や不眠などを伴っている場合は要注意です。こうした場合で、血液検査も含む全身の検査(ホルモンの異常、内臓や脳、神経系の検査など)をいくら行なっても異常が見つからないとき、慢性疲労症候群が疑われます。

 

おもな症状

●微熱・頭痛・のどの痛み  

慢性疲労症候群の代表的な症状として微熱があげられます。平熱より0.5〜1.5℃程度高い熱が半年以上にわたって持続します。解熱鎮痛剤などを用いても熱があまり下がらないことも特徴といえます。 また、かぜをひいたときのような、のどの痛みや頭痛がするようになることがあります。

●疲労感

慢性疲労症候群では、日常生活に支障をきたすほどの疲労感が引き起こされます。 ちなみに、仕事や育児など、疲労の原因がはっきりしている場合は「慢性疲労」であり、慢性疲労症候群には当てはまりません。

●筋肉痛

全身または特定の部位に激しい運動をした後のような筋肉痛が現われ、動くことができないほどの痛みになることがあります。

●不眠と過眠

自律神経の異常により、寝つけない、眠りが浅い、早く目が覚めてしまうなどの「不眠」や、朝起きられない、日中に極度の眠気に襲われるといった「過眠」の症状、さらにはこれらが、一日のうち同時に現われることもあります。

●気分障害

うつ病に似た症状がでて、気分の落ち込みが続き、仕事にでられないほどまでになる場合があります。一般的には、うつ病の症状は朝に重く、午後に軽減される傾向がありますが、慢性疲労症候群の場合、午後のほうが憂うつ感が強まる傾向にあります。  また、注意力や集中力の低下などもみられます。物忘れがひどくなるなど、認知症のような症状がでる場合もあります。

 

考えられる原因

 慢性疲労症候群は、その原因が明らかになっていない病気です。しかし、様々な研究の結果、病気の起こる仕組みが少しずつ明らかになってきました。  

 私たちの身体は、神経系、ホルモン系、免疫系の3つがバランスを保って働いています。ところが、ストレスをきっかけにして、神経系の働きに異常が生じ、免疫の働きが低下すると、体内に潜伏していたウイルスが再活性化されます。そして、再活性化したウイルスを抑え込むために、体内では、免疫物質が過剰に作られるようになります。この過剰に作られた免疫物質が、脳の働きに影響を及ぼし、強い疲労感や様々な症状を起こすという説が有力です。

 また、慢性疲労症候群の患者の方には、ある特定の遺伝子に関する異常が認められていることも報告されています。

 

 

 

 

 

 

治療

 慢性疲労症候群の治療は、薬物療法が中心に行なわれます。そのなかでも、主になるのは「捕中益気湯」などの漢方薬を用いて、身体の免疫力を高める治療です。そして、体内の活性酸素による細胞の障害を防ぐため、抗酸化作用をもつビタミンCを大量に服用します。  

 他にも抗ウイルス薬や免疫調整剤が使われることがあり、これらの投与によって免疫系の回復を目指します。また、うつ病向けの薬が効果を発揮することがあり、抗うつ剤、精神安定剤などが使われることもあります。

 また、内科的な治療による効果がみられない場合、ストレスに対処するための方法を患者と医者が話し合いながら見出していくための、カウンセリングによる治療も行なわれます。

 

こんな症状ありませんか?

微熱がある 頭痛がする、頭重感がある 筋肉や関節が痛い のどが痛い リンパ節が腫れている

まぶしくて目がくらむ 疲れている 寝ても疲れがとれない ちょっとした動作ですぐに疲れる

よく眠れない、または寝すぎてしまう 思考力や集中力が低下している 意欲がわかない

ぼーっとすることがある 憂うつである

 

 慢性疲労症候群を完治させるのは難しく、また一般的に治療は数か月から数年かかりますが、治療を続け、徐々に症状の改善を図っていくことが大切です。投薬治療を続けていると、3〜4年で通院の必要がなくなるケースもあるようです。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2009年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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