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女性のがん

 かつては、不治の病として恐れられていたがん。近年は女性のがんの検査法が進歩し、完治する例や、乳房や子宮を温存できる例も増えています。がんを早期に発見できた場合は、完治する可能性が高まり、治療方法の選択肢が広がり、手術で摘出する範囲は少なくてすみます。これらのがんは自覚症状が乏しいですから、早期発見のためには、定期健診を受けることが何より大切です。


乳がん

●乳がんとは  

 乳がんは、母乳をつくって運ぶ「乳腺組織」にできるがんです。日本人女性のがんで最も多いのが乳がんで、30代後半から40代後半にかけての比較的若い世代に多くみられます。

●乳がんの症状

 しこりがある、皮膚がえくぼのようにくぼんだり赤くはれる、乳頭から茶褐色の分泌物がでる、などが乳がんの症状です。ただし、これらの症状があるからといって、必ず乳がんであるとは限りません。診断には、詳しい検査が必要となります。

●乳がんの治療

 乳がんの治療は、外科手術が基本となります。以前は、乳房やリンパ節、胸筋をすべて切除する手術が主流でした。しかし近年では、リンパ節への転移の可能性が低い場合はリンパ節を切除せずに残したり、初期のがんでは乳房のふくらみや乳首を残す乳房温存手術が行なわれます。乳房をすべて切除する場合でも、希望すれば乳房再建手術を行なうことができます。

 手術前に化学療法(抗がん剤)を行なって、がんを縮小させておくこともあります。 治療は手術だけではなく、化学療法(抗がん剤)やホルモン療法も併用します。化学療法は、前述のように手術前に行なう場合もあ りますが、一般的には手術直後から再発防止の目的で行ないます。ホルモン療法は、乳がん細胞の増殖を促す女性ホルモンを抑制する治療法です。

●乳がん検診

 乳がんは、早期発見・早期治療ができれば、90%以上の確率で治る病気です。早期発見のためには、定期的に検診を行なうことが大切です。

 乳がんの検診は、自分で行なうこともできます。まず鏡でよく観察しましょう。乳房の形、色、ひきつれ、くぼみをチェックします。両腕を上げた状態と、下げた状態で観察します。次に、外側から内側へ指をすべらせ、しこりを調べます。また、わきの下にしこりがないか、乳頭から分泌物が出ていないかもみておきましょう。

 

 さらに確実に調べるには、医療機関で画像診断を受けましょう。マンモグラフィーというエックス線検査と、超音波検査があります。これらの検査では、目で見たり触ったりしても分からなかった、小さながんも発見することができます。

子宮頸がん

 子宮の入り口近くに発生するがんで、30〜50歳代の比較的若い世代に多い病気です。HPVというウイルス感染によって起こります。  

 初期にはほとんど無症状で、不正性器出血、下腹部痛などの異常が現われた時には、かなり進行している場合が多くあります。

 治療は、手術療法が主体となります。ごく初期であれば、子宮頸部の病変部を切除するだけで完治します。少し進行したがんでは子宮を摘出したり、リンパ節も含めた広範囲の手術が必要になってきます。さらに進行したがんでは、手術で治すことが難しく、放射線療法や化学療法(抗がん剤)が行なわれます。

 自覚症状の少ない子宮頸がんを早期に発見するためには、婦人科で定期的に検診を受けることが重要となります。また、子宮頸がんの原因であるHPVウイルスの感染を予防するワクチンが、日本でも接種できるようになっています。

子宮体がん

 かつて、「子宮がん」といえば子宮頸がんのことをさしました。しかし、以前は少なかった子宮体がんが近年は急増しています。  

 子宮体がんは、子宮内膜に発生するがんです。子宮内膜は月経のときに月経血として排出されるため、定期的に月経があれば子宮体がんになる可能性はほとんどありません。ですから子宮体がんは閉経した50〜60歳の女性に多くみられます。原因は、女性ホルモンのバランスの崩れや、肥満などです。

 初期の症状は、不正性器出血、おりものが増えて血やうみが混じるなどがあります。進行すると下腹部痛や下肢のむくみなども現われます。

 治療は手術療法が基本で、子宮・卵巣・卵管を摘出します。転移や再発の危険性が高い場合は、手術後に化学療法を行ないます。進行したがんの場合、化学療法でがんを小さくしてから手術を行なうこともあります。閉経前の女性で妊娠を希望する場合は、手術をせずにホルモン療法を行なう方法もあります。

卵巣がん

 卵巣では周期的に排卵が起こっており、その度に卵巣が傷つきますが、やがて修復されます。この修復がうまくいかず、卵巣の表面の細胞が異常に増殖してしまう病気が卵巣がんです。50〜60歳に多くみられますが、20歳代でもかかりうる病気です。  

 卵巣がんは、初期では全くといっていいほど自覚症状がありません。がんが大きくなってから、下腹部のしこりやおなかが膨れた感じがするようになります。

 治療の基本は手術療法で、卵巣・卵管・子宮を摘出します。胃の下にある大網とよばれる脂肪組織や、付近のリンパ節には転移している可能性が高いので、切除する場合もあります。また、手術のほかに化学療法も行ないます。初期のがんで妊娠を望む場合には、がん化した側の卵巣と卵管のみを切除します。

 卵巣は子宮と違って、細胞を採取して調べることができません。婦人科検診で行なわれる一般的な検査方法である超音波検査によって、初期の卵巣がんを発見することが可能です。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年8月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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