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身近な依存症

 ― 会社員のAさん。取引先とのトラブルで、後処理に追われてグッタリした1日…「今日、ちょっと飲みに行かない?」「そうですね、こんなときは飲まないとやってられないです!」そしてその夜は居酒屋で、職場の愚痴、不満を思いっきり吐きだし、何だか少しスッキリしたかな― 多くの方にこういった経験があるのではないでしょうか。

 仕事や人間関係など、日々のストレスを自分なりに解消することは、とても大切です。でももし、発散のつもりがエスカレートしてしまったら?……依存症の危険を知っておきましょう。

依存症とは

 「○○依存症」という言葉はよく聞くことがあります。○○に入るのは、アルコール・ニコチン(タバコ)・薬物・ギャンブル(パチンコなど)・インターネット・ゲーム・買い物・性(セックス)・親(または子ども)、など様々な形があります。

 最初のきっかけは、多くはささいなことから始まります。例えば、イライラしているときにタバコを吸うと落ち着く経験があった、お酒を飲むとストレス発散になった、などです。この段階では、自分ではちょっとした気分転換のつもりでいる人も多いでしょう。

 しかし、そこからだんだん量や頻度が増えてきて、それがないといられないような状態になってしまうと依存症への第一歩といえます。普段、寂しさや強い劣等感を感じていたり、抑えている感情をうまく発散できない場合に、こうした行動が依存のきっかけになりやすいようです。

 依存のメカニズムとしては、脳内の神経伝達物質であるドーパミン(快感を感じる物質)が関係します。ニコチンなどを摂取したり、ギャンブルや買い物をして高揚感を得ているとき、ドーパミンの分泌が活発になっており、その状態を求めるために行動を繰り返してしまうようになるといわれます。

 また、依存には心理的なものと身体的なものがあります。行動が習慣になっていて(タバコを吸わないと、その場の間がもたないなど)、やめられないというのは心理的なものといえますが、やめようとすると離脱症状(いわゆる禁断症状)が出現するのは身体的依存であり、もはや自分の意志ではコントロールが難しい状態です。

依存症になると…

 依存が形成され、自分では行動をコントロールするのが難しくなると、様々な面での困難が生じてくるでしょう。まず、健康を害してしまいます(タバコやアルコール、薬物など物への依存の場合)。更に経済的に苦しくなったり、仕事に支障がでるなど社会生活が難しくなると、生活が破綻します。家族や周囲の人に大変な迷惑をかけることにもなります。ただ、その段階になっても本人は「その気になればいつでもやめられる」と考えていたり、「病気だ(治療が必要)」という認識がないこともあり、その点の難しさもあります。

依存症を乗り越える

 依存症は、「本人の意志の強さ」だけでなんとかできる問題ではありません。「病気」 として考え、しっかり治すという意識が大切です。そのためには、精神科や心療内科を受診しましょう。また、自助グループ(同じ問題を体験した人同士で集まりサポートしあえる場)へ参加することも有効です。 本人を孤立させないために、周囲の人たちのサポートも重要なポイントになります。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年9月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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