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脳梗塞を防ぐ生活

  近年、日本人の死因のトップはがん(悪性新生物)ですが、次いで多いのが心疾患、第三位は脳血管疾患で、このふたつはいわゆる動脈硬化性疾患。そして脳血管疾患の主なものとして脳梗塞があげられます。高齢化社会が進むなか、脳梗塞の予防は「元気な老後」をおくるためにとても重要です。


脳梗塞ってどんな病気?

 脳の病気の多くは、基本的に脳の血管が破れたり詰まったりといった障害が起こり、脳の機能の一部が壊れてしまうことによって発症します。そのため、脳梗塞を含めたさまざまな脳疾患を、広い範囲で 「脳血管疾患(障害)」と呼んでいます。 

 脳梗塞の「梗塞」 とは、「ものが詰まり流れが通じなくなる」という意味。脳梗塞においては血栓と呼ばれる血の固まりが血管をふさいでしまい、そこから先へ血液が流れなくなってしまうのです。すると詰まってしまった先の細胞や組織は、酸素や栄養を運んでもらえず、壊死(部分的に死んでしまうこと)してしまいます。当然脳は大きなダメージを受けることになります。脳梗塞は突然発症し、数分から数時間で急速に症状が進みます。 

脳梗塞のタイプと発作

 脳梗塞は、いくつかある脳卒中のひとつで、前述のように脳の血管が詰まってしまうタイプ。脳卒中には、ほかに脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作がありますが、脳梗塞は、脳卒中死亡の60%以上を占めています。

 そしてこの脳梗塞は、次の三つのタイプに大別されます。

(1)アテローム血栓性梗塞

脳の太い血管の内側にドロドロのコレステロールの固まりができ、そこに血小板が集まって動脈をふさいでしまうもの。

(2)ラクナ梗塞

脳の細い血管に動脈硬化が起こり、詰まってしまうもの。

(3)心原性脳塞栓症

心臓にできた血栓が流れてきて血管をふさいでしまうもの。

 

 脳梗塞の発作が起きると、脳の障害が起きた部分がコントロールしていた身体の働きができなくなってしまいます。言葉が出なくなる、ものが飲み込めなくなる、からだの片側がまひするなどの症状が現れ、発作が治まったあと寝たきりになると、使わない筋肉がこわばって動かなくなってしまうという合併症が出たりします。 

脳梗塞の原因

 脳梗塞の原因の大きなものとして、動脈硬化があります。動脈硬化とは、血管の内側の壁にコレステロールなどがたまるなどして血管が厚く硬くなり、血液の流れが悪くなってしまった状態のこと。この動脈硬化を促進させ血管に損傷を与える病気には、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、さらに糖尿病や、心房細動などの心臓病があります。

 そしてこれらの病気の原因となるものには、喫煙、飲酒、肥満、などがあります。日常生活の中にも危険因子はひそんでいるといえます。

 そんなことからも、「脳梗塞などの動脈硬化性疾患は、生活習慣病である」 ということができるでしょう。例えば動脈硬化は、ある日突然、なってしまうものではありません。増えた脂質(あぶら)が少しずつ血管の内側にたまるなど、日々の生活習慣によって進行していくものです。ということは……どうやらこのあたりに、脳梗塞から身を守るヒントがありそうです。

日々の生活から危険因子を排除する

 それではここで、生活習慣の中から、脳梗塞の危険因子について考えてみましょう。次のような人は明らかに要注意です。

◆大量の飲酒=1日に、1合を超える日本酒、中びん1本を超えるビール、ダブルで一杯を超えるウイスキーを飲む人。

◆喫煙習慣=タバコを吸う人は吸わない人に比べ、はるかに脳梗塞(脳卒中) で死亡する人が多い。

◆運動不足=食事で摂ったエネルギーを消費しきれないので肥満につながる。さらに糖尿病や脂質異常症を引き起こしたりする。

◆肥満=肥満は高血圧や糖尿病の原因になり得る。間接的にではあるが、脳梗塞の危険因子。

◆過度のストレス=日々のストレス、イライラに対抗するために、タバコをスパスパ、お酒をガブガブ。脳梗塞に限らず、身体にいいはずがない。 

 

 さらに食生活においても見直しが必要です。高血圧に気をつける必要がありますから、「減塩」を心がけましょう。目安は1日10グラム未満。ただし、すでに高血圧と診断されている人は、6グラム未満におさえましょう。減塩しょう油を使ったり、酢や柑橘系で味付けするなどの工夫をしてみてください。香辛料やハーブなどを利用するのもいいでしょう。

 また、血液の流れを悪くする悪玉コレステロール対策も、左のイラストを参考に、メニューを工夫してみましょう。さらに適度な運動も欠かせません。長く続けるためには、あまり負担にならないウオーキングやジョギング、水泳などがおすすめです。これらのいわゆる有酸素運動 (たくさんの酸素を使って長時間続ける運動のこと) には、脂肪を燃焼させる働きがあります。

 特にウォーキングは、「歩く」という日常の動作ですから、すんなり始められるでしょう。脂肪を燃やすことはもちろん、悪玉コレステロールを減らしたり、血液量が増えるため血管の弾力性を強化することにもつながります。

 

◇◇

さて、ここでひとつ問題が……。実は、動脈硬化には自覚症状がありません。ですから健康診断で脂質異常症や動脈硬化と診断されているにもかかわらず、放置してしまう人が多いのです。発作が起こってしまってからでは遅いのです。脳梗塞を発症後、「寝たきり」になってしまう人も少なくありません。食事・運動など日常の生活習慣に気をつけるだけでも予防効果は大!「元気な老後」を過ごすためにも、今すぐ生活習慣の改善に努めましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2010年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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