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腎臓の働きと病気

 腎臓は腰の上の背中側に、左右ひとつずつある、ソラマメ型をした臓器。握りこぶしほどの大きさです。その主な役割は、血液中にたまった老廃物を身体の外に排出することです。では、腎臓に障害が起きると、私たちの身体に、どんな悪影響が出るのでしょうか?


腎臓はどんな働きをする?

 腎臓の、最もよく知られた働きは、身体のなかでいらなくなったもの、つまり老廃物を体外へ排出する、ということ。腎臓は、血液をろ過して老廃物や塩分を尿として体の外へ捨て、身体に必要なものは再吸収します。コーヒーフィルターのような役割を果たしているのです。

腎臓にはほかにも、

・血液をつくる・血圧を調整する・体液量とイオンバランスの調節・強い骨をつくる

などの働きがあります。

 これらの働きはどれも、私たちが生命を維持していくうえで、とても重要です。こうした腎臓の働きが悪くなると尿が出なくなり、老廃物や毒素が体内に溜まることで、尿毒症になってしまいます。

  腎臓は、機能が著しく低下すれば、むくみや血尿が出ることもありますが、多くの場合、その自覚症状は、かなり進んでから、あるいは末期的な状態になってから現れます。そんなことから腎臓は、肝臓と共に「沈黙の臓器」と呼ばれたりします。

 放置している間に症状が悪化、腎不全に至ると、生命を維持するためには、透析機による人工透析が必要になります。

主な腎臓の病気

 それではここで、主な腎臓の病気とその症状について、みていきましよう。

■糸球体腎炎

 「腎炎」とも呼ばれ、若年期に多い。扁桃腺炎のあとに起こったりする。発症年齢が高い場合は、慢性化しやすいので要注意。

■腎孟腎炎

 尿道や膀胱に生じた感染が、腎孟(腎臓と尿管の接続部〕、さらには腎組織へと広がった疾患。しばしば肺血症などの合併症を引き起こすため、ただちに抗生物質の治療を行う。

■腎不全

 腎機能が正常値の50パーセントを下回った状態。腎臓の調節機能が大幅に失われるが、最近では人工透析により、社会復帰できるようになった。

■腎結石

 女性よりも男性に多く見られ、20-30歳代がピーク。痛みや不快感といった自覚症状のない場合もある。通常は薬物で治るが、結石が1cm以上の場合、外科的な治療対象となる。

◇◇

 ほかに、若年層から三十代までに多く見られるネフローゼ症候群、多くは薬物のアレルギー反応が引き金となって起こる尿細管間質性腎炎などがあります。

新たな国民病と言われる慢性腎臓病って?

 慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが慢性的に低下していく病気で、その患者数は1300万人を超えると言われます。実に、成人の8人に1人が慢性腎臓病ということになります。それが新たな国民病といわれるゆえんです。

 慢性腎臓病は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、メタボリックシンドロームとも深い関連があり、誰もがかかる可能性のある病気なのです。

 腎臓は前述のようにとても重要な働きをしている臓器ですから、慢性腎臓病にかかり、腎臓の機能が低下し続けると、さまざまなリスクが発生し。

 しかもやっかいなことに、初期には自覚症状がほとんどなく、そのために、慢性腎臓病患者が増え続けています。さらに一度悪くなってしまった腎臓は、自然には治りません。放置しておくとじわりじわりと進行し、いきなり人工透析が必要と言われることも少なくありません。

悪い生活習慣はすぐに改善しよう

 腎臓病の自覚症状としては、むくみや倦怠感(常にだるい、疲れやすいなど)、貧血や息切れ、さら夜間の頻尿などがあります、しかし、これらの症状が自覚されるときには、すでに慢性腎臓病が、かなり進行している場合が多く、早期発見が離しいといえます。

 いわば人工透析予備軍ともいえる慢性腎臓病は、脳卒中や心筋梗塞などの発症率、死亡率を高めるともいわれており、発症要因のひとつとなるメタボリック症候群と合わせて注意が必要です。

 となると、やはり少しでも早い時期での発見が重要になります。 そのためにも定期的に健康診断を受け、尿や血圧の検査をしましょう。特に尿たんぱくが陽性の人は要注意です。

 生活習慣やメタボリックシンドロームと深い関係があるということは、裏を返せば、生活習慣病やメタボにならないよう気をつけることで、慢性腎臓病を防ぐことができる、ということになります。

 過労や睡眠不足、ストレス、食生活の乱れや過食、運動不足、さらには過度の飲酒や喫煙といった日々の生活の悪習慣を改善することが、そのまま腎臓病対策になります。食生活では、塩分の取り過ぎや、肉類などたんぱく質の取り過ぎにも気をつけましょう。 こうしてみると、普段の生活を見直し改善することで、腎臓病は防げるということになります。 また、「最近、特に疲れやすい」などの体調の変化を感じたら、早めにかかりつけ医などに相談するようにしましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年2月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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