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入眠障害〜質の良い睡眠に導くために

睡眠の悩みでは、入眠障害(寝つきが悪いこと)を訴える方が多いようです。ストレスなどの心理(精神)的な要因や何らかの身体的な疾患、あるいは普段の生活習慣が原因になっていることが考えられます。

入眠に導くためにアルコールを利用する方、または薬を使用する方。今回は、質のよい睡眠に導くために、ぜひ知っておきたい情報をお届けします。


アルコールと睡眠に関する誤解

 適量のアルコール摂取には入眠を促す効果が認められますが、睡眠薬の代わりに使用することには大きな問題があります。

 そのひとつは、アルコールの摂取には習慣性や耐性があるため、飲酒量が徐々に増えてしまう傾向があることです。最初は一杯で寝付けたのに、二〜三杯以上の量を飲まないと眠れない……こうした状態が続くと、アルコール依存症へと進んでいく可能性が高まります。

 眠るためのアルコール。しかし皮肉なことに、前述のような習慣性があるため、アルコール依存症の症状には不眠が含まれています。

 もうひとつの大きな問題は、アルコールは睡眠の質を低下させることです。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。深い(質のよい)眠りが起こるのは、ノンレム睡眠のときです。入眠後、まずレム睡眠が始まり、しばらくするとノンレム睡眠に移行します。これを1セットとして、6時間の睡眠を取る方はおよそ4回このサイクルが繰り返されます。

 アルコールを摂取すると、入眠後3時間ほどしてから、ノンレム睡眠のときの深い睡眠を妨げることが分かっています。つまり、6時間睡眠の場合、その約半分は睡眠の質が低下した状態になります。

 さらに、アルコールには利尿作用があるため、睡眠の途中でトイレに行きたくなり目が覚めてしまうという問題もあります。

 アルコールを睡眠薬代わりに使用することは、お勧めできません。ごくまれに眠れないことがあるという方以外は、避けたほうがよいでしょう。アルコールは、睡眠の3時間前までに、適量、飲むことを習慣にしましょう。

睡眠改善薬と睡眠薬の違い

 『睡眠改善薬』 という、市販の薬が数種類あることをご存知でしょうか?これらの薬の代表的な物は、かぜ薬やアレルギー性疾患の薬に使われる「抗ヒスタミン薬」を主成分としています。このため、身体がすぐに薬の作用に慣れてしまうという特徴があり、長期の服用には効果がありません。時差による影響や突発的なストレスなどの極端な環境の変化があった場合に起きる一時的″な不眠を対象とした薬です。

医師の処方が必要な『睡眠薬』とは違うものということを覚えておいて、非常時のみ服用しましょう。


 睡眠不足は、不安や不快を本人にもたらすだけでなく、事故の発生などを通じて他の人へ重大な影響を与える可能性もあります。睡眠に悩む方は、精神科や心療内科を受診して、睡眠の質を低下させている原因を根本から見極め、治療していくことが最善です。

 診療の結果、1週間に3日以上の不眠が1か月を超えて続くような場合、不眠の症状や他の疾患の治療とも関連しますが、睡眠薬を使用した薬物療法が行われることがあります。

 睡眠薬に不安を感じる方もいらっしゃいますが、現在、おもに使われている睡眠薬のほとんどは、安全性が高められ、また耐性ができにくいものになっています。医師の指示に従い、処方通り服用すれば、まず心配する必要はありません。

 いずれは睡眠薬を服用しないでも眠れるように治療は進められていきます。安心して、医師に相談してください。

◆睡眠不足症候群◆

 みなさんの平均睡眠時間は、どのぐらいでしょうか?日中に強い眠気を感じるという悩みで病医院を受診される人に増えているのは、平均睡眠時間が5時間以下という方です。 長時間労働や夜間勤務、そして、不規則くな勤務シフトによる労働をせざるをえない職業の方にこうしたケースは多く見られ、睡眠不足症候群と呼ばれています。

 何らかの疾患による症状ではないため、病気ではありません。しかし、睡眠不足の状態を続けていると、いずれは心身に悪影響が及 ぶことになります。

 良質な睡眠は、睡眠時間だけで得られるものではありませんが、最低でも、6〜7時間の睡眠が取れるような生活改善が必要です。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年7月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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