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子宮頸がんは、予防できる

子宮頸がんは、年間約8000人の方が発症し、2400人以上の方が亡くなっています。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)で、おもに性交渉によって感染します。性交渉の体験のある女性の約8割は一生に一度はHPVに感染するといわれ、感染自体は珍しいことではありません。

HPVは、実際に感染しても多くの場合、身体の免疫力(抗体)によって体外に排出されます。しかし、この免疫力が弱いと感染状態が長期間持続して、子宮頸部の細胞に前がん病変(がん化する可能性ある遺伝子変化)が起こります。これを放置すると、子宮頸がんの発症へとつながっていきます。

ほぼ100%の予防が可能だとされる子宮頸がん。なぜか?それは、とても効果的な予防法があるからなのです。


子宮頸がんの予防ワクチン

子宮頸がんの予防ワクチンが、一昨年から日本でも接種できるようになりました。

このワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVのうち、HPV16型とHPV18型のウイルスに対する抗体を、人為的に体内に作ることを目的としています(ちなみに、HPVは100種類以上の型が発見され、このうち、発がん性の高いウイルスは15種類)。

2010年11月、国は、子宮頸がんワクチンの接種を奨励する「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」をスタートさせました。13歳相当(中学1年生、自治体によっては小学6年生)〜16歳相当(高校1年生)を対象に、公費による助成が受けられます。このワクチンは、性交渉を経験していない、あるいは、HPVに感染していない時期に接種することが最も効果的であるため、このように対象年齢が決められました。

とはいえ、この対象年齢以外の方がワクチンを接種することも、決して無駄ではありません。HPVの持続的な感染状態を防ぐことが、子宮頸がん予防になるからです。ワクチンの臨床試験では、45歳までは予防効果が確認され、55歳までは安全性が証明されています。

子宮頸がん険診とHPV検査

子宮頸がんの検診は、異常を発見できる確率が他のがん検診と比べても高い、とても意味のある検診です。しかし残念なことに、日本における検診の受診率は、20%台。60〜80%台の検診率である欧米諸国と比べると低く、憂慮すべき状態にあるといえます。

かつては、30〜40歳代の方が子宮頸がん検診受診者の中心でした。ところが最近は、この年代の受診者が減ってきています。このことと関連して、1995年以降、子宮頸がんで亡くなる30〜40歳代の方が増えています。

子宮頸がんの検診は、子宮頸部の細胞を綿棒などで採取するだけで、ほとんど痛みもなく、短時間で終わります。20歳以上の女性の方は、子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。また、20、25、30、35、40歳の方には、国から自治体を通して、子宮頸がん検診の無料クーポン券が配布されています。この制度を、ぜひ活用してください。

さらに、30歳以上の女性の方は、子宮頸がん検診と同時に、HPV検査を受けることをお勧めします。

子宮頸がん検診が子宮頸部の細胞自体に異常があるかどうかを調べるのに対して、HPV検査は子宮頸部に発がん性のHPVが感染しているかどうかを検査します。このふたつは同時に受診することができ、併用した検診ではほぼ100%、子宮頸がんの前がん病変を検出することができます。

 


10代の相応しい時期にワクチンを接種し、それと同時に、子宮頸がん検診を定期的に受けるようにしていく。そして、30歳を過ぎたら、子宮がん検診とHPV検査の両方を受診する――。

これらのことを意識していただければと思います。それは、子宮頸がんのない未来へとつながっていくでしよう。


 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年8月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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