脳卒中は脳の血管が破れたり詰まったりして、脳に酸素や栄養が届かなくなって血管の一部が壊死ししてしまう病気です。後遺症として手足の麻痺や言語障害が残ることがありますが、できる限り元通りの生活に戻れるよう行われるのがリハビリです。
一般的に脳卒中といわれる病気は、正しくは「脳血管障害」といい、「脳出血」や「脳梗塞」がこれにあたります。脳出血は、脳の血管が破れて出血するもの、また脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまった状態を指していいます。
いずれの場合も脳に酸素や栄養を含んだ新鮮な血液が届かなくなり、脳の血管の一部が壊死してしまう血流障害で、突然、手足のしびれや半身の麻痺、ろれつが回らなくなる、意識障害という発作が起こります。
また、発作が治まっても寝たきりになってしまうと、使わない筋肉がこわばって動かなくなるという合併症も出ます。
さらに、再び発作が起こり死に至るという場合もありますが、医学の発達により、脳卒中の死亡者数は年々減少しています。
脳卒中が疑われればすぐに救急車を呼びますが、病院ではまず、本当に脳卒中かどうか、何が原因かを調べ、治療の方針が決まります。緊急手術が必要な場合もあります。手術の必要がなければ、内科的な治療で様子を見ます。血栓を溶かす薬、血液を固まりにくくする薬などが使われます。
脳卒中で大きな発作が起こると、命は取り留めても、麻療や言葉の障害が残ってしまうことが多くあります。脳の傷ついた箇所がつかさどっていた身体の部分が、働かなくなってしまうために、後遺症が生じてしまうのです。
例えば、運動中枢や神経線維が障害されることにより、片方の手足に麻痺が起こる状態を「片麻痺」と呼びます。この場合、同じ麻痺でも手足のしびれやふるえなどの軽いものから、まったく動けず痛みすら感じられなくなる重度のものまで様々です。
また、同じ言語障害といっても、障害を受けた脳の場所によって様々です。相手との会話がまったく成り立たない「ウェルニッケ失語」や、頭では言葉を理解できても話そうとすると言葉にならない「ブローカー失語」、さらに言葉を理解することも話すこともまったくできない「全失語」、言葉を理解できているのに簡単な単語を忘れてしまう「健忘性失語」といったものがあります。
こういった後遺症の克服が、脳卒中治療後の最も大きな課題となり、少しでも元の状態に戻そうとして行われるのがリハビリテーション(リハビリ)です。
リハビリは入院直後から、始められます。正しい姿勢を保ったり関節を動かしたりという、入院直後からできるリハビリは、関節が固まったり、筋肉が弱ったりするのを防ぎます。さらに回復に合わせて、自力で座ったり歩いたりといったリハビリが、入院中から開始され、退院してからも続けられます。
一般的に、後遺症で最も多いのが手足の片麻疹です。発作当日から手が動かせるようであれば、完全回復が望めます。 足の麻痺の場合は発作後1か月目までに、仰向けに寝た状態で足を上げ、自転車こぎの動きができれば正常の歩行に戻れます。いずれにしてもリハビリは、少しでも早く始め、根気よく続けることが最も大切なことです。
後遺症の克服には、本人が現実を冷静に受け止めること、そして本人はもちろん、家族など周囲の人たちが一緒になって、前向きにリハビリに取り組むことが大切です。後遺症が生じても、その後の薬物治療とリハビリで、かなりの成果が期待できますし、ほとんど完全回復するケースも少なくありません。
リハビリの目的は、元通りの生活に戻れるようにすることですが、それがかなわなくとも、これ以上身体の機能が衰えないようにしたり、残った機能を活用して普通の生活が送れるようにすることにあります。
リハビリには本人の努力や家族の協力も欠かせませんが、その他にも大勢の人の力を結集して行われます。例えば……。
◆看護師
日常生活の訓練や全般的な指導を行う。
◆理学療法士(PT)
手足など、麻痺した身体の機能の回復に必要な訓練や、車いすの操作などの訓練を行なう。
◆作業療法士(OT)
自分の身のまわりのことや家事など、日常生活での作業の訓練を行なう。
◆言語聴覚士(ST)
言葉の不自由、ものの名前が分からないなどの後遺症が出た際に、コミュニケーションをとれるように訓練する。
◆ソーシャルワーカー
患者と家族の社会的・経済的な問題、今後の方針などについて相談に乗る。
他にも食生活の指導を行う管理栄養士や、必要に応じて義肢装具士、リハビリ工学士も加わることがあります。こうした人たちがチームを組んで、患者のリハビリを支えます。
脳卒中を防ぐために最も大切なことは、高血圧や糖尿病といった脳卒中の引き金となるような病気にかからないようにすることです。高血圧や糖尿病を防ぐためには、その原因となる色々な生活習慣を改めることが大切です。
塩分の摂り過ぎ、喫煙、大量飲酒、肥満、運動不足が危険因子と考えられています。 こうした危険因子を取り除く生活を、ぜひ心がけるようにしましょう。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載