知るほどTOPICS

増えています逆流性食道炎

胃液が食道に逆流して、食道の粘膜に炎症を起こす『逆流性食道炎』。 発症のひとつは加齢。超高齢化社会を迎える日本において、この病気を患う方が増えています。


みぞおちの辺りにチリチリとした不快感があってスッキリしない。こうした胸焼け″と呼ばれる症状は、胃から食道に逆流した胃酸が、食道の粘膜を刺激することで起こります。このとき、食道の粘膜に炎症が起きている場合は、『逆流性食道炎』と診断されます。逆流性食道炎の症状としては胸焼けの他に、胃液がのどや口腔にこみ上げてくる呑酸″もあげられます。

食道と胃の境界部分(噴門)には、食物を胃に送る一方、胃からの逆流を防ぐ「弁」 の働きをする機能があります。この機能は、噴門周辺の筋肉や靭帯によって維持されていますが、加齢や肥満によって弁に緩みが生じると、逆流性食道炎が起こりやすくなります。 逆流性食道炎から食道がんを発症するケースは、日本人の場合、まれです。とはいえ、逆流性食道炎による不快感は、食生活や睡眠といった日常生活に大きく影響します。症状は多くの場合、薬物療法と日常生活の改善で緩和できます。胸焼けが慢性的に起こる、あるいは1か月以上続いている方は、かかりつけ医にご相談のうえ、消化器内科など専門科を受診しましょう。

薬物療法

逆流性食道炎の薬物療法には、「プロトンポンプ阻害薬」や「H2ブロッカー」が使用されます。これらの薬には胃酸の分泌を抑える働きがあり、これによって食道の粘膜への刺激を減らして炎症を起こりにくくします。効果は非常に高く、多くの方の場合で、その症状を抑えることができます。また、こうした薬と併用する形で、食道の粘膜を保護する薬や胃酸を中和する薬、胃の運動を活発にする薬を使用することもあります。

残念ながら、噴門周辺の筋肉や靭帯の緩みそのものを矯正する薬は開発されていません。食道の炎症が軽い方には、症状があるときだけ薬物療法が行なわれます。しかし、薬物療法を中止すると流性食道炎の再発が度々起こる方の場合、維持療法(再発予防のために薬を服用し続ける治療法)が必要になる場合があります。

日常生活の改善

逆流性食道炎の方の日常生活の改善は、噴門が緩むケースに注意を向け、胃液の逆流をできるだけ起こさないようにすることをおもな目的として行ないます。

 

◆食事の仕方に注意する◆

胃に食べ物が入っているとき、胃の内部では圧力が高まっていて、噴門が緩みやすくなっています。食べ過ぎや飲み過ぎは、さらにこの状態に拍車をかけることになります。胃の内部の過剰な圧力を逃すためです。

食後すぐに横になる習慣のある方もいらっしゃるでしょう。前述の理由から噴門が緩みやすい食後すぐは、胃からの逆流が起きやすい状態にあります。食後2〜3時間ぐらいは、横になるのを避けるようにしましょう。身体を起こしておいたほうが、胃からの逆流は抑えられます。

食材にも目を向けてみましょう。脂肪分の多い食べ物やアルコールを摂取するときに分泌されるホルモンは、噴門に緩みを生じさせます。同様に、甘い物や刺激物、炭酸飲料にも注意しましょう。これらは、胃酸の分泌を促すという点にも注意しなければなりません。過剰摂取は禁物です。

 

◆寝るときの姿勢◆

逆流性食道炎の方で、寝るときに仰向けで寝る方は、上半身を高くして寝るように工夫するとよいでしょう。胃液の逆流を防ぐことにつながります。

枕を高めにする、上半身から枕の下にかけてバスタオルなどを敷いて高くするなどの方法がおすすめです。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2011年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

トップページへ