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食物アレルギーとアナフィラキシーショック

天然由来の成分を使用したある石鹸を使用していた方のなかに、重篤な食物アレルギーを発症するケースが報道されました。この事例の原因となったのは、小麦粉を原料とした「加水分解コムギ末」とされています。

今回の知るほどトピックスでは、この事例をきっかけに大きな関心が高まった、食物アレルギーとアナフィラキシーショックを取り上げます。

食物アレルギー

食物アレルギーは、ある特定の食物を摂取することによって、蕁麻疹などの皮膚症状のほか、下痢や吐き気、呼吸困難や意識障害といった症状が現れることをいいます。原因となる食品は、小麦・卵・牛乳・そば・豆類・魚介類・甲殻類など、多岐にわたります。食物アレルギーは、こうした食物に含まれているたんぱく質によって起こります。

たんぱく質は、血液や筋肉を作るための主要な成分であり、身体のエネルギー源としても使われます。また、生命の維持には欠かせない多くの酵素の元となる成分でもあります。その一方で、人間の身体では、たんぱく質そのものを、利用したり貯蔵することはできません。たんぱく質を分解し、他の物質に生成する必要があります。では、分解・生成作業が追いつかないほど過剰に摂取されたたんぱく質はどうなるのでしょうか?

身体は、分解されなかったたんぱく質を異物として認識します。そして、それを排除するために抗体を作ります。こうした感作が繰り返されると、増えすぎた抗体によって、通常であれば問題のない量のたんぱく質にも身体は、過剰な反応を示すようになります。これが、たんぱく質によるアレルギーのメカニズムとして有力とされている説です。

ある石鹸によって起きた事例は、加水分解コムギ末に含まれているたんぱく質が眼や鼻から体内に入ることで、たんぱく質の過剰摂取となり、引き起こされたと考えられます。

食物アレルギーの治療は、原因となっている食べ物を食べないようにする「除去食療法」が基本となります。除去食療法を行なうときは、どの食べ物がアレルギーの原因になっているか、慎重に判断しなければなりません。極端に食品を除去することは、その食品に対する耐性を獲得できず、食物アレルギーが治りにくくなる場合もあります。また、食物アレルギーの原因となる食品には、良質なたんぱく質やカルシウムといった大切な栄養素が多く含まれているため、代替食品を利用するなど、栄養面での対応も必要です。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックとは、急性アレルギー反応のひとつで、アレルギー症状が短時間で全身に起こるという特徴があります。なかでも急激な血圧低下が現われ、ショック症状を引き起こす場合、これを、アナフィラキシーショックとよびます。アナフィラキシーショックは、食物アレルギーだけでなく、蜂に刺されたときや、薬物の使用によって起こるケースもあります。

アナフィラキシーショックが起こった場合、事態は緊急を要します。自己注射用のアドレナリン注射を所持している方はその処理を行ない、至急、救急車を手配します。

アナフィラキシーショックのなかでも、アレルゲンを摂取した後、運動を行なうことによって引き起こされるケースがあります。これを、運動誘発アナフィラキシーとよびます。食物アレルギーとの関連でみると、食後2〜3時間以内に運動を行ない、運動開始から30分以内に皮膚症状が現われ、その後、呼吸困難や意識障害を発症するケースが多いようです。

食物アレルギーによる運動誘発アナフィラキシーの予防には、原因食物を避けることと、食後3時間以内の運動制限があげられます。ただし、これは自己判断するのではなく、医師に相談して、指示に従うようにしましょう。さらに、食後に運動して蕁麻疹ができ出た経験のある方や、過去にアナフィラキシーショックを経験したことのある方は、緊急のときに使用する自己注射用のアドレナリン注射を携帯する必要があるか、医師に相談してください。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年4月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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