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なぜ、大腸がんは増えているのか?

わが国において、がんは1981年以来、死亡原因の1位の座を占めています。そして2005年には大腸がんの死亡者は4万人を超えました。近年、男女ともに大腸がんは増え続けていますが、早期発見で、100パーセントに近い確率で完治できます。

近年、日本人にも増えている大腸がん

元々、日本人には胃がんが多く、欧米人には大腸がんが多い、ということがいわれてきました。ところが近年、日本でも男女ともに大腸がん死亡者数が増え続けています。これはどういうことでしょうか?

その、最も大きな原因として考えられるのは、日本人の生活環境、とくに食事の変化の影響(欧米化)です。

同じ日本人でも、ハワイやアメリカ本土に移住した日本人は、胃がんが減り、大腸がんが増えたのです。この調査・研究から、がんの発生には人種的・遺伝的な要因より、食事など環境要因が大きくかかわっていることが明らかになりました。

戦後、日本人の食生活が欧米化したことで、牛肉・豚肉など赤身の肉、つまり高脂肪分を多く摂るようになりました。これはそのまま、大腸がんの原因となるものです。

大腸がんってどんな病気?その症状は?

大腸がんは、長さ約2メートルの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、日本人の場合、S状結腸と直腸にがんができやすいといわれます。

血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ(残便感)、おなかが張る、(排便時の)腹痛、貧血、原因不明の体重減少といったものが共通の症状で、最もよくみられるのが血便です。

ただし、これも日本人に多くみられる痔などの良性疾患であっても同じような症状があります。

大腸がんは、大腸のどこにがんができているか、また、どの程度のがんか、といったことによってその症状は異なります。

また、病状によっては、腸管が完全にふさがってしまい、便やガスが出なくなっておなかがパンパンに張ってくる腸閉塞を起こすこともあります。この場合、緊急手術が必要です。

いずれにしても、早期発見のためには、早めに医療機関を受診する必要があります。

自覚症状がほとんどない早期の大腸がん

大腸がんは、早期がんから進行がんへと進みます。早期がんはポリープ(腺腫)から発生するものと、正常の粘膜から発生するものがあります。

早期の大腸がんは症状があらわれにくく、自覚症状が出た場合にはかなり進行していることも少なくありません。大腸がんを早期のうちに発見するためには、気になる症状がなくても「大腸がん検診」をぜひ、毎年受診しましょう。そして便潜血検査で陽性という結果が出たら、精密検査を受けてください。

大腸がんはこうした検査で早期がんのうちに発見された場合、100%に近い割合で完治するといわれます。進行がんであっても検診で発見された早期のものは、病巣を内視鏡で比較的簡単に切除できますから、高い確率で治癒します。

治療は、さらに外科手術や抗がん剤、放射線治療などが、進行具合によって施されます。

ポリープのなかにがんが発見される場合もある

検査によってポリープが発見されることがあります。ポリープとは、腸管壁(粘膜面)に肉眼的に認められるほどに隆起したもの。

粘膜面は腸管の一番内側で、腸の内容物と接しており、消化物の水分を吸収したり粘液を分泌する機能をもつ細胞から成り立っています。

この粘膜の細胞が突然増え始め、キノコ状に盛り上がったものがポリープです。ポリープにはかんが疑われるもの、ポリープのなかにがんを持ったものもあります。ポリープは種類と大きさに応じ、治療法が決まります。

どうすれば大腸がんを予防できる?

大腸がんのリスクを増大させるものとして、前述の、赤身の肉や脂肪の摂り過ぎ、さらにアルコール摂取や喫煙といったものが考えられます。ですから、赤身の肉を控え、鶏肉や魚中心の食生活に切り替え、野菜や果物、豆、海草、茸などで食物繊維を十分に摂り、毎日適度の運動を続けることが大腸がんの予防に役立ちます。

さらにタバコを吸わない、アルコールは控えめに、といったことができれば、大腸がんのリスクが大幅に減るだけでなく、他のがんの予防や、心臓病、脳血管障害、糖尿病といった、いわゆる生活習慣病の予防にもなります。


40歳代、50歳代になると「がん年齢」といわれ、がんにかかるリスクは、加齢とともに高まります。それでも早期発見により、完治できる場合も増えています。「がん検診」を積極的に受け、早期発見に努めましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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