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交換記憶

興味深い実験があります。被験者にある文章を入力させて、そのデータをコンピュータのフォルダに保存させました。すると、文章の内容よりも、保存したフォルダの名前のほうを多くの被験者は記憶していたのです。この実験から私たちは、自分の記憶装置としてコンピュータを利用している一面がうかがえます。

人間の脳は、人に尋ねると分かる事柄についてはあまり自分で記憶せず、尋ねるべき相手が誰で、どこにいるかを記憶する性質があります。相手の記憶を自分の記憶として、互いに利用し合っているのです〈心理学ではこれを『交換記憶』とよびます。

近年、記憶に関するこのような脳の性質が、インターネット、特に検索サイトやソーシャルネットワークの進歩によってより顕著になっているようです。

従来の学習は、具体的な事例を記憶することに重点が置かれていました。しかしこれからはコンピュータを人間の記憶装置の一部と位置づけ、情報がどこにあってどうすれば得られるかを教える教育に変わっていくとする専門家もいます。

とはいえ、あまりに多くをネットに頼ることには危険な面もあります。例えば、端末機器が使えないとき、自分自身が有効な情報を持っていないと、状況に応じた手段を講じられないといった事態も起こります。身につけておくべき知識(記憶)は何か。あらためて、明らかにしていく必要があるでしょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年7月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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