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リンパ浮腫のセルフケア

乳がん術後などにみられる、リンパ浮腫の予防・治療には、ご自身によるセルフケアがとても大きな役割を果たします。


リンパという言葉には元々、「清い水の流れ」という意味があります。

医学用語で使われるリンパは、細胞組織の間に存在する体液のことで、リンパ管のなかを流れ、免疫機能の働きや、細胞から生じる老廃物の運搬を担っています。

よく「リンパが腫れた」という言い方をしますが、正確には、細菌やウイルスを排除するために働いた白血球の残骸などが「リンパ節」に過剰に溜まった状態です。リンパ節は、リンパ管の節目にあって、リンパ液が運んできた物を漉し取り、浄化したリンパ液を再びリンパ管に送り返す役目をします。

全身に800個ほど存在するこのリンパ節ですが、とくに乳がんの手術では、がん細胞とともに切除せざるを得ないケースがあります。そして、リンパ節が切除されたことによって、本来、浄化されてリンパ管に戻るべき水分が皮膚の下に溜まってしまい、皮膚のむくみとなることがあります。これが『リンパ浮腫』です。

リンパ浮腫は、リンパ節を切除した患者すべてに起こるわけではありません。乳がんの手術を受けた2割程度の人に起こるといわれています。またリンパ浮腫は、リンパ節を切除した手術から2〜3年後に発症するケースが多く見られます。

リンパ浮腫を発症すると、皮膚を押してもへこみが戻らない状態になり、さらに進行すると、押してもへこまないほど皮膚が硬くなります。このような状態からでは、症状の改善が難しくなります。そうなる前にしかりと予防し、適切な治療を受けましょう。

セルフケア・予防

リンパ浮腫の予防で注意したいポイントは、リンパ液の流れに関係しています。身体に負担をかけたり、締め付けたりすることが、リンパ浮腫発症の原因となるのです。重い荷物を持つことやきつい下着を着用するといった、ささいなことの積み重ねに注意してください。

右胸の乳がん手術を例にとると、リンパ浮腫が起こりやすいのは、右胸や右手、つまり手術をした側になります。こうした点をふまえて日常生活に生かし、また同時に、早期発見に努めるようにしましょう。

皮膚の傷がきっかけとなり、傷口から入り込んだ細菌によって、皮下組織に炎症が起こる蜂窩織炎。皮膚が硬く厚くなって、腕や脚に変形を起こす象皮病。リンパ浮腫でもう一つ注意したい点は、こうした合併症です。

けがや火傷だけでなく、ペットからのひっかき傷や虫刺されといった軽い傷からでも、リンパ浮腫を発症していると合併症を引き起こす可能性があります。

セルフケア・治療

リンパ浮腫の治療は、おもに4つの方法を組み合わせて行なわれます。

@スキンケア

保湿クリームで皮膚を保護し、細菌の感染による症状の悪化を防ぐ。

Aリンパ誘導マッサージ

皮膚下に溜まった水分を、マッサージによって適切なリンパ管に誘導する。

B圧迫療法

弾性のある医療用の着衣で、むくみがある部位に圧迫を加え、リンパ液が患部に溜まることを防ぐ。

C運動療法

弾性のある医療用の着衣を使用したまま運動やストレッチを行ない、リンパ液の流れを促進する。

Aに関して、エステティックサロンで行なわれている美容目的のリンパマッサージのなかには、リンパ浮腫の治療には適さない施術があることに注意してください。そして、BCでは、患部に加える圧迫の力加減が治療のポイントになります。

治療には、家庭におけるセルフケアが欠かせませんが、自己判断では決して行なわないようにしましょう。リンパ浮腫の疑いがある場合は病院を受診して、専門医の指導を受けてください。予防・治療ともに、専門的な知識が必要です。自己判断で行なうと、症状を悪化させる恐れがあります。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年9月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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