インフルエンザによる死亡者の90%近くは、65歳以上の方です。かかりつけ医と相談のうえ、ぜひ、予防接種を受けるようにしてください。
インフルエンザ予防の基本は、ワクチンの接種と、手洗い・うがいの習慣化にあります。しかし、欧米に比べて日本は、ワクチンの接種率が低いのが現状です。
インフルエンザ・ワクチンに関する最大の誤解は、ワクチン接種を受ける目的についてかもしれません。
インフルエンザ・ワクチンの目的は、「ウイルスに感染しても発症を抑える」 こと、そして、「発症しても重症化させない」 ことにあります。感染自体を防ぐのではないことに留意する必要があります。
日本で使用されているインフルエンザ・ワクチンは、予防に関して非常に高い効果をあげています。「インフルエンザ・ワクチンの効果に関する研究 神谷酉(国立療養所三重病院)」によると、65歳以上の健康な高齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったとしています。また、65止戚未満の成人でも、健康状態がよい人の場合、70〜90%の発症予防効果があるといった報告もありました。
毎年、千人から二千人がインフルエンザで亡くなっています。インフルエンザによる合併症(肺炎など)を含めると、一万人もの死亡者がでる年もあります。こうした人のなかには、インフルエンザ・ワクチンの接種で、死亡を防げたと考えられるケースも少なくありません。
インフルエンザ・ワクチンの接種は、ごく一部の場合を除いて、すべての人が受けられます。なかでも、次のような条件にあてはまる人には、とくにワクチンの接種をお勧めします。
(1)65歳以上のすべての方。
(2)60〜64歳で、呼吸器、心臓、腎臓、免疫のいずれかに障害がある。
(3)糖尿病を患っている。
(4)集団感染する可能性が高い、児童・学生。
(5)生後6か月以上の乳幼児。
日本では、毎年12月〜3月がインフルエンザの流行期にあたります。インフルエンザ・ワクチンは接種後、効果が現れるのに約2週間かかります。10〜11月は、ワクチンの接種にもっとも適した時期といえるでしょう。
インフルエンザワクチンの接種は原則的に全額自己負担となりますが、(1)・(2)の条件に当てはまる場合、市町村によっては公費の助成が受けられます。
インフルエンザの重症化を防ぐためには、ワクチンの接種だけでなく、適切な治療が必要です。多くの方がご存知の通り、「インフルエンザ迅速診断キット」によって、インフルエンザ・ウイルスの有無やその種類を短時間で調べることができるようになりました(ただし、2〜3割の方は、正しく診断されないケースもあります)。
ウイルスに直接作用する薬も開発され、インフルエンザに対しては、解熱や重症化の予防という治療が可能です。
インフルエンザ治療薬は、発症から48時間以内に服用することが推奨されています。48時間を過ぎると、体内のインフルエンザウイルスが増え過ぎてしまい、治療薬の十分な効果が期待できなくなる場合もあるためです。インフルエンザが疑われる場合は、早急に病院を受診してください。
なお、インフルエンザの疑いで受診する場合は、まず病医院に電話して状況を説明してからにしましょう。インフルエンザの感染拡大を防ぐためにも、ぜひ守っていただきたいルールです。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年10月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載