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先進医療の基礎知識

先進医療というと、みなさんはどのようなイメージを持っておられるでしょうか?

昨年、山中伸弥京都大学教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞し、大きな話題となりました。iPS細胞を使用した技術は近い将来に臨床へと応用され、医療の発展に貢献することでしょう。また昨年は、妊娠中の女性の血液によって胎児の染色体を診断する「出生前診断」という検査方法も、その賛否を含めて話題となりました。こうした医療技術も先端医療の一翼を担っています。

一般的に先端医療というと、最先端の医療技術・機器を使用して難病の治療を行なうというイメージが強いかと思います。

新しい医療技術としては、放射線・高周波をピンポイントで患部にあてて行なうがん治療や内視鏡を活用して行なうがん手術。

最先端医療器械としては、CT、MRI、PETといった検査機器や、できるだけ少ない負担で脳の手術を行なうガンマナイフ、病気になっている患部だけを切りとることのできるITナイフ。また、医療用ロボットの実用化も始まっています。

実際にはこの他にも先端医療という言葉には、様々な治療法や検査法を含んでいます。

例えば、乳がん検診で多くの人に知られるようになったマンモグラフィー検査。これも、先端医療の一つです。また、生活習慣病やうつ病の治療で投与される薬。これらにも、先端医療の様々な成果が反映されています。歯の治療では、人工の歯根を埋めて義歯を装着するインプラント……一つひとつあげていくときりがないほど、 先端医療は身近な治療のなかにも活かされています。

先進医療

最近、保険会社の広告で「先進医療」という言葉を多く目にするようになりました。「先進医療」は、先端医療とよく似た言葉ですが、医療保険の現場では若干違った意味をもって使われています。

先端医療の多くは自由診療によって行なわれています。自由診療とは、保険診療ではない医療ということで、その治療費は全額自己負担となります。そして、日本の公的医療保険制度では、自由診療と保険で認めた治療とを組み合わせる混合診療は原則として認められていません。

そうしたなかで、厚生労働省がその有効性を認め、将来的には保険診療に移行できる可能性の高い先端医療を「先進医療」と定義して、平成16年から、指定医療施設に限って混合診療を認めることになりました。現在では、およそ100種類あまりの治療法が「先進医療」の適用を受けています。代表的な例としては、重粒子線や陽子線を使用した放射線によるがん治療や、腹腔鏡で行なう早期子宮体がん手術、多焦点眼内レンズを使った白内障の手術です。

高額療養費制度

先端医療を治療の選択肢として加える場合、治療費の問題も考慮する必要があるでしょう。

公的医療保険としては、高額療養費制度が活用できます。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。高額療養費制度では、年齢や所得に応じてご本人が支払う医療費の上限が定められており、またいくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています。高額療養費制度の利用は自主申告によって行なわれます。また、還付金の受け取りは、窓口での支払から最低でも3か月後になります。これらの点には注意してください。

公的医療保険には、自己負担限度額を超える治療費の用意がない人のための制度もあります。入院の場合は「健康保険限度額適用認定証」の交付、通院の場合は「高額療養費受領委任払制度」です。また、「高額医療費貸付制度」という、治療費の8割程度を貸し付けてくれる制度もあります。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2013年4月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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