脳卒中の診断・治療


 口から入った食べ物は長い消化管の中を運ばれながら消化・吸収されていきます。「食道」はこの消化管の始めの部分で、咽喉から続く長さ25cmほどの器官です。今回はこの仕組みや食道の病気を取り上げてみました。

脳血管が動脈硬化
食道がんは圧倒的に男性

〔その仕組み〕
 食道は横隔膜に空いた食道裂孔を通って腹部に至り、胃に繋がっています。食べ物が食道の入り口に来ると、収縮していた上部食道括約筋が緩んで輪状筋による蠕動(ぜんどう)運動と、食道から分泌される粘膜によって食べ物はスムーズに運ばれ、次に下部食道括約筋が緩んで胃の入り口の噴門が開いて食べ物を受け入れるのです。(図1)

〔主な病気〕
 今回は「食道炎」と「食道がん」について取り上げます。

◆食道炎 
 何らかの刺激によって食道の内側の粘膜に炎症が起きた病気です。この食道炎が悪化して炎症が粘膜の下まで及んだり、粘膜の一部が無くなったものを食道潰瘍と言います。食道炎には急性と慢性があります。

急性は

@魚の骨など異物の摂取
A服用したクスリが食道に停滞
B放射線の照射
Cアルカリ性や酸性薬剤の誤飲
D過度に熱い(冷たい)飲食物の摂取
E消化液の逆流
Fかびやウイルスの感染

などで起きます。一方、慢性は

@過度の飲酒
A過度に喫煙
B食道疾患による食べ物の停滞

などが原因になります。
 こうした多くの原因の中で最も多いのが、消化液が食道に逆流して炎症を起こす「逆流性食道炎」です。逆流の多くは胃液ですが、十二指腸液や胆汁の逆流もあります。いずれも強い酸性やアルカリ性の消化液であるため、粘膜が保護されていない食道は傷つきやすく炎症が起きます。症状は胸やけや呑酸(どんさん=消化液が口やノドまで逆流すること)、飲食時のつかえ感、胸の痛みなどです。治療は胃酸分泌を抑える薬や、下部食道括約筋のゆるみを改善する薬、粘膜保護の薬などを使います。

◆食道がん 
 50歳以上、特に高齢者に多いがんです。男性が圧倒的に多く、男女比は6対1です。食道は頸部、胸部、腹部を通っていますが、その中で胸部の食道はがんが発生しやすく、80%を占めます。熱い飲食物の摂取や喫煙が発症に関係すると考えられています。喫煙と飲酒の両方の習慣がある人は発生リスクを高める、という報告もあります。
 症状は早期では自覚症状が無いことも多く、治療が遅れる原因になります。進行すると食べ物がつかえたり胃もたれ、胸やけ、物を飲み込む際のしみる感じや違和感を覚える、などが現れます。治療は、ごく早期がんであれば内視鏡による粘膜切除が行われることもありますが、病変部を全て取り除く手術療法が基本。手術では広い範囲で切除が必要なことも多く、胃や小腸で新しい食道を再建します。

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