南東北 2005年11月

トピック
☆がん治療の最先端 切らず、副作用も最低限に
「陽子線治療装置を導入」
 総合南東北病院など医療施設を運営する一般財団法人脳神経疾患研究所では最先端のがん治療機器である「陽子線治療装置」を備えた一大がん治療施設を病院の西隣りに新設することに踏み切り、11月4日に記者会見で発表しました。

 財団では渡邉一夫理事長が「21世紀の医療はがん撲滅の医療を確立することだ」という信念のもと、昨年4月に最先端のがん発見機器PET(陽電子放射断層撮影装置)を5台(PET-CT2台、PETカメラ3台)をいち早く導入し、既に7000人の診断を行っています。ここで早期発見されたがんの早期治療対策が急がれていました。そこで現在、世界で最も新しい放射線治療の機器である「陽子線によるがん治療法」を導入して、早期発見したがんの病巣を陽子線で消滅させる治療のセンターを実現することにしたものです。
 この陽子線治療というのは、エックス線やガンマ線と異なり、標的に合わせて照射ができ、病巣で放射線量を最大にできる特性があるため、ほかの正常な組織への影響を最小限に抑えられるメリットがあります。つまり、切らずに治し副作用が最低限になるわけですから、高齢者や身体の弱い方でも安全に治療が受けられます。現在、日本では国立がんセンターや兵庫県立粒子線医療センターなど6カ所ありますが、いずれも国公立の施設で、民間病院は今回の当財団が初めてとなります。世界でも有数のがん治療施設を目指します。
 今のところ、導入計画としては平成18年の早い時期に着手しますが、機種の選定、設計などのほか、機器は受注製作となるため、治療開始は2年半から3年後になる見通しです。なお、この陽子線治療については今後も「南東北」はじめ、いろいろな広報で皆様にお伝えしてゆくことにしております。

兵庫県立粒子線医療センターの
陽子線治療装置
陽子線の照射
 陽子線は、ある深さで放射線量がピークになる特性を持っています。このピークの位置をがんの病巣に一致させて照射しますので、正常細胞への損傷を低く抑えながら、がん病巣にだけ集中照射することが出来ます。

陽子線治療の研究
 文部科学省では「第3次がん10カ年総合戦略に基づく研究開発」として重粒子線がん治療と取り組んでいます。重粒子線は主に炭素線と陽子線による治療研究です。このうち陽子線治療は国立がんセンター東病院、静岡県立静岡がんセンター、兵庫県立粒子線医療センターなどで研究が行われています。
 陽子線治療システムはアメリカでマサチューセッツ総合病院やロマリンダ大学メディカルセンターなどで、既に稼動しています。今度、一般財団法人脳神経疾患研究所に陽子線治療システムが入れば民間医療施設では日本第1号となり東日本地域における陽子線治療での医学的貢献が期待されます。


☆職員の年間研究を発表
「南東北連合学術学会開く」
 今年で10回目を数える、南東北グループの職員が1年間に医療や福祉業務をやりながらテーマを決めて研究を続けてきた成果を発表し合う「南東北連合学術学会」が11月3日の文化の日に総合南東北病院北棟1階のNABEホールで開かれ、盛会でした。学会には県内のグループ施設はじめ岩沼市、八戸市の関連病院・福祉施設からも駆けつけ、参加者は延べ500人に上りました。
 午前9時から学術委員長の寺西寧総合南東北病院院長のあいさつのあと、1演題5分の持ち時間で合計25の研究結果を発表しました。一方、病院4階の大講堂ではポスターによる研究成果の発表会も行われ、大勢の参加者が詰めかけていました。ランチタイムには「医療・介護職員に対するセクハラ」のテーマで4人によるパネルディスカッションも繰り広げられるなど、バラエティに富んだ学会となりました。
 午後2時に学会を終了、入賞者の表彰のあと、記念講演として鎌倉市の円覚寺から足立大進管長をお招きして「ありがとうの人生」と題した講演を拝聴しました。

連合学術学会で発表する職員


☆病院ボランティアが開催
「第3回ピアノコンサート」
 総合南東北病院や南東北医療クリニックで活躍中の病院ボランティア「紙ふうせん」では患者様を慰めようと、10月20日(木)午後1時30分から中央棟1階のカフェ「エスカフェ」で第3回ピアノコンサートを開催、大勢の方々を楽しませました。今回は紙ふうせんメンバーの柳沼恵さんのピアノのほか、フルートの張簡娜蜜(ちょうかん なみ)さんと清野則子さんのお二人を招き、フルートとピアノのアンサンブルの形になりました。
 会場には入院患者様はじめ、外来、ご家族など沢山の方が詰めかけ溢れ出ました。「となりのトトロ」「アベマリア」「愛のあいさつ」「小さい秋みつけた」「七つの子」など懐かしい曲に拍手が沸き、プログラムが終了してもアンコールの声も。結局さらに4曲を演奏、「もみじ」などはみんなで合唱しました。

大勢の人たちを楽しませたコンサート会場


「医療安全管理室に専任の室長を置く」
 総合南東北病院では医療事故を防止するため、先に院内にMRM委員会を設けて厳しい管理体制をとり、今年2月からは院内の組織を横断した形の医療安全管理室を設置していましたが、さらに対策を強化するため、9月1日から専任の医療安全管理室長を設け、活動を開始しました。
 病院内に組織的な安全文化を樹立し、医療サービスの質を向上させるのが目標で、職員の安全への意識や事故防止への取り組みの意識を高めるため、医療安全管理の院内巡視を行っています。また職員が見た患者様の満足度の調査も行っており、本格的な活動で病院の現状を把握しているところです。まずは、医療安全管理室があるということが病院全体に認識され、組織横断的に医療安全に関する連絡調整がスムーズにできることが今の目標です。
 
 
☆メディア漬けに警鐘
「すこやか子ども食育健康フォーラム」
 子どもの健やかな成長を考える「すこやか子ども食育健康フォーラム」が、10月15日(土)に総合南東北病院NABEホールで開催されました。この催しは、東京の和洋女子大学大学院総合生活研究科との共同企画で、会場には市内外の小学校、幼稚園の先生たちや親子連れなど約60人が参加しました。
 最初に、和洋女子大学家政学部健康栄養学科の学生たちによる「あさごはんでもりもりげんき〜朝ご飯の大切さを知ろう〜」の紙芝居が披露され、成長期にある子どもにとって、朝食をとることがいかに大切かを訴えました。続いて「子どもの発達とメディアゲーム・ネット・ケータイの影響〜むかつく・キレル・社会的事件の背景にあるもの」と題して、国立病院機構仙台医療センター小児科医長の田澤雄作先生が講演しました。実際に自分が治療した子どもの例を紹介しながら「現代の子ども達にまつわる様々な社会問題の背景には、親子のきずなが希薄であることや、子どもたちの脳と体が疲れていることがある。それはテレビ・ビデオ・ゲーム漬けという、メディア=非現実体験との過剰で不適切な接触が原因。メディア漬けの子どもは現実の体験が不足して脳(こころ)が未発達なうえ、親と直接向かいあう時間も減っている」と指摘し、具体的に下記のような6項目の提言を行いました。

6項目の提言
1.2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控える
2.授乳中や食事中のテレビ・ビデオ視聴はやめる
3.すべてのメディアへ接触する総時間を1日1〜2時間に制限する
4.テレビゲームは1日30分までを目安とし、ノー・ゲーム・デーを設ける
5.子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かない
6.保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくる

食育健康フォーラムの会場


☆12月の医学健康講座
「尿漏れの予防」
 総合南東北病院で毎月開催されている医学健康講座の12月講座は12月15日(木)午後2時から病院北棟1階のNABEホールで開かれます。今回は「泌尿器科の癌と、尿漏れの予防・対策」の演題で泌尿器科の深谷保男先生と日本コンチネンス協会の梶原敦子看護師が講演します。梶原さんは8月3日から開設されている「女性のためのよろず相談室」も担当されており、気軽に相談できる方です。午後1時30分に郡山駅前から送迎バスが出ます。帰りは3時40分病院発です。お気軽にお出かけください。

☆PET公開講座今後の日程
12月 18日(日) 石川郡石川町石川共同福祉施設
 
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