夏バテ 一掃
その対策を先取り

ノーベル賞で話題に

 今年のノーベル医学生理学賞はバリー・マーシャル西オーストラリア大学教授とロビン・ウォーレン同大名誉教授の二人に決まりました。このニュースでびっくりさせられたのが「ウォーレン氏が発見した胃の中に住むピロリ菌を、マーシャル教授が自ら飲んで急性胃炎になり、研究の正しさを証明した」という逸話です。そこで今月は「ピロリ菌と胃病・胃がん」を取り上げてみました。
悪性腫瘍につながる
 
日本人 40歳以上の7割が保菌
〔ピロリ菌とは〕
 人の胃は食べ物を消化するため粘膜から塩酸を含む強い酸性の胃液を分泌しています。このため「胃の中には細菌はいない」と長い間信じられてきました。しかし豪州王立パース病院の病理医だったウォーレン氏が1973年に胃の組織を切り取って検査した患者の半数で胃の出口である幽門(ピロリ)付近に螺旋形(ヘリコ)の細菌が集まっていて、細菌周辺の胃粘膜が常に炎症を起こしていることを発見しました。そして「胃の幽門にいる螺旋状の細菌」という意味のヘリコバクター・ピロリ菌と名付けました。
 当時は、胃潰瘍の原因はストレスや食生活が原因、と考えられていましたので、この細菌原因説はなかなか受け入れられませんでした。そこで1984年に、共同研究をしていたマーシャル氏は自分からピロリ菌を飲んで実証したのです。急性胃炎になり、胃の炎症部分からピロリ菌を検出して自説の正しさを証明しました。
 
〔胃病・胃がんとの関わり〕
 ピロリ菌の発見は、これまで原因がハッキリしなかった内臓の炎症が慢性の感染症だったことを示しました。現在はピロリ菌が慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍はじめ、胃がんやリンパ腫など悪性腫瘍の発生にも繋がることも報告されています。
 ピロリ菌は飲食物を通じて感染しますが、日本人は先進国の中でピロリ菌感染が多く、40歳以上の7割以上が保菌者とされています。北海道大学の畠山昌則教授の研究では「ピロリ菌が胃がんに関係することがハッキリ解明された唯一の細菌。除菌すれば予防につながる」とされています。しかし、一方では完全に除去すると、食道炎や食道がんの発生につながることも明らかになってきました。このことから、「ピロリ菌は胃に寄生する常在細菌として、人間と共生しているのではないか」との学説も出ています。(毎日新聞記事から)
 
〔胃がんの原因〕
 慢性胃炎を起こす要因がそのまま、胃がんの原因になると言えるでしょう。原因と考えられているのは@塩分の多い食事A喫煙B刺激の強い食べ物CストレスD遺伝、です。ピロリ菌が慢性胃炎を起こす細菌、と言われていますが、ピロリ菌だけでは胃がんに結びつくことはありません。ただ、ピロリ菌が感染している胃粘膜に危険因子が加わると、胃がん発生に結びつくことがある、と言われているのです。
胃がんの危険因子
・塩分の多い食事
・喫煙
・刺激の強い食べもの
・ストレス
・遺伝
 

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