増えている大腸がんを防ぐ
食生活の改善と禁煙 早期発見なら100%完治も  
 
 がんの中で最近急増しているのが「肺がん」と「大腸がん」です。特に、ここ10年で患者数が倍増した大腸がんは2015年には羅患率でトップ、死亡率では肺がんに次いで2位になる、と予想されています。「この大腸がんを防ぐにはどういった点を注意すればいいか」を取り上げてみました。
◇大腸がんは何故ふえる?
 大腸がんは「結腸がん」と「直腸がん」に大別されます。かつては日本人の大腸がんといえば結腸がんを指す、と言われたのですが、最近は直腸がんが増えS状結腸がんがそれに続いています。大腸がんが増えている大きな理由として「日本人の食生活の変化」が挙げられます。食物繊維の多い穀類や野菜、とくに根菜中心の伝統的な和食が減って、動物性脂肪の多い食事を摂る機会が増えたことが原因です。(図1)
 動物性脂肪を消化するには胆汁が大量に分泌されます。その一部が腸内細菌によって酸化され二次胆汁酸に変化します。これが発がん物質として働くのです。大腸の終点に近いS状結腸や直腸は、この発がん物質と接する時間が長いため、結果的に大腸がんが多発する、と推定されています。
◇症状と検査・治療法
 大腸がんは比較的長い時間をかけて進行するため、早期にはほとんど自覚症状がありません。進行するにつれて
@排便時の腹痛
A病巣部からの出血により便に血が混じる
B通過障害により便が細くなる
C排便後にも残便感がある

などの症状を自覚するようになります。これに加え体重の減少、だるさや微熱などの不調を感じたら、迷わず受診しましょう。
 検査としては、健診・人間ドックに取り入れられている便潜血検査で肉眼で分からない出血が見つかります。検査した人の7%が陽性ですが、多くは痔の出血かポリープで、がんが発見されるのは陽性者の0・2%程度で
す。確定診断は注腸造影検査(バリウムを入れる)、内視鏡検査などで行いますが、南東北医療クリニックでのPET(陽電子放射断層撮影装置)検査が最も有効です。
これは放射性物質と糖を含むクスリを注射して一度に全身を検査できるため、がんの早期発見にとても効果があります。
 治療は、がんが粘膜や粘膜下層にとどまっていれば内視鏡での切除が可能です。深い所までがん細胞が達していたり、転移があったりする進行がんの場合は開腹手術を行いますが、腹腔鏡下手術が選択されることも多くなってきています。(図2)
◇予防策は
 がんの1次予防とは、がんにならないよう日常生活に注意すること、2次予防とは定期的に検診を受けて、早期発見・早期治療して完治させることを言います。1次予防の柱は食生活の改善と禁煙です。動物性脂肪を減らし食物繊維の多い野菜などをたっぷり摂ることです。ヨーグルトなどの乳酸菌は胆汁酸を酸化させる腸内細菌を減らすし、カリウムはニ次胆汁酸と結合して排出させる作用があり、ともに大腸がん予防効果が期待されます。また、肥満の男性に大腸がんが多いことから、運動による体重コントロールも重要です。
キーワード
 大腸がんはゆっくり進行するので、早期発見できれば100%完治させることが可能です。発症には遺伝的要因もかかわるため、祖父母・両親・兄弟にがん患者いる人や、40代以上の人は必ず検診を受けましょう。「禁煙・食事・運動・検診」が大腸がん予防のキーワードです。
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