胃・十二指腸潰瘍
 潰瘍とは皮膚や粘膜の一部が深く傷つき、えぐれてしまうことを言います。ひどい場合は組織や臓器に孔があくこともあります。胃や十二指腸の場合は、粘膜に炎症が度重なることで、潰瘍が形成されていきます。
〔そのメカニズム〕
 潰瘍が出来るメカニズムはまだ完全に解明されていません。胃粘膜に対して攻撃する因子と、それを防ぐ因子との均衡が崩れたときに潰瘍が出来るのではないかと考えられています。攻撃因子となるのは、胃酸(消化酵素ペプシン、塩酸)や、ヘリコバクターピロリ菌の出す毒素などです。とくに胃酸は胃さえも溶かしてしまう強い消化力をもっています。そのため胃の粘膜は、胃酸を分泌すると同時に粘液を分泌したり、傷ついた粘膜細胞をすぐに修復して自分を守っているのです(防御因子)。しかし、何らかの原因で胃酸が増えてしまったり、また粘液の分泌が減ったり、粘膜細胞の修復が遅れたりすると、胃壁は胃酸にさらされ、傷つくことになります。十二指腸も胃酸の影響を受けるため、同じ仕組みで潰瘍が形成されるのです。
〔ピロリ菌の影響〕
 治療しても潰瘍がなかなかよくならなかったり、繰り返し潰瘍ができる場合はヘリコバクターピロリ菌の感染が疑われます。ピロリ菌が出す毒素により胃に慢性の炎症が起こることがわかっています。
〔薬剤の影響〕
 非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)が、潰瘍の原因となることもあります。これは薬が粘膜を傷つけたり、防御因子の働きを弱める作用をしてしまうためです。
〔その症状〕
 胃・十二指腸潰瘍の症状には、次のようなものがあります。
●みぞおちの痛み
空腹時に起こることが多い。
十二指腸潰瘍の場合は夜間に痛むことが多い
●胸やけ
特に十二指腸潰瘍で起こることが多い。
●吐血・下血
潰瘍が血管を傷つけることで、出血が起こる。口から血を吐く場合を吐血、血の混じった便がでることを下血という。真っ黒なタール便が出ることもある。
〔危険な3大合併症〕
 症状が悪化すると3つの合併症に繋がり、緊急手術が必要にもなりかねません。
穿孔(せんこう)
 潰瘍が進行し、胃の壁に孔があいてしまい、多くは、急性腹膜炎を起こします。
大出血
 大量に出血すると、ショック状態に陥ることもあります。
幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)
 潰瘍により、幽門が狭くなると、食物の通過障害が起きます。

 潰瘍が疑われたら、バリウムや発泡剤を使ったX線検査や、内視鏡検査が行なわれ、がんかどうかを調べるため組織を内視鏡で採取することもあります。

〈薬物療法〉
 現在は、よく効く薬が開発されたため、治療の多くは薬物療法が中心になります。

〈手術療法〉
 危険な合併症が起きた場合は、緊急手術を行います。また、再発をくり返すときも手術療法が行なわれる場合があります。

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