南東北 2009年6月



過敏性腸症候群 〜ストレスが引き起こす〜

  通勤途中で何度もトイレに駆け込んだり、会議前になるとお腹が痛む、といった腹痛・腹部不快感を伴った下痢や便秘が続く症状を「過敏性腸症候群」と呼びます。検査をしても腸そのものには異常がないのに腸の働きが不調になるため起こるのが特徴です。一種の現代病であるこの病気を取り上げました。
過敏性腸症候群での症状
(1)腹痛を覚えるのは主に左の脇腹から下腹にかけてですが、排便や放屁で解消します (2)便通異常では便秘型、下痢型、または双方を交互に繰り返す交替型、の3つのタイプがあります (3)症状が長期にわたります。「年に6回以上便通異常が起きて、しかも1回が3週間以上続く」というのが過敏性腸症候群の診断基準になっています (4)お腹の異常にもかかわらず、食欲が落ちたり体重が減る、といった栄養的な面での問題は起きていない (5)腹部に不快感があり、腹部膨満感(お腹が張る)、ゴロゴロ鳴る(腹鳴)、おならが頻繁に出る、といった症状を伴うことがあります。以上のような症状の他に、別の症状がみられる時は消化器に重大な疾患がある可能性が出てきますので、長く続く場合は消化器専門医を受診して下さい。
発症の仕組み
 過敏性腸症候群は心身症の一種で、ストレスに腸が過剰に反応した結果、発症する病気だ、といえます。ストレスを受けて便秘・下痢が起きる仕組みは自律神経がもとになっています。私達の内臓の働きは自律神経によって支配されています。自律神経には交感神経と副交感神経という相反する働きを持つ2つの神経があり、脳から出される指令に従ってバランスを取りながら内臓の働きをコントロールしているのです。緊張や不安などを脳の中枢が感じると、自律神経への命令系統に乱れが生じます。この結果、大腸は常に副交感神経が働くようになり、腸の動きが異常に速くなったり、腸管の痙攣が起こって慢性的な下痢や便秘といった症状が現れるのです。
対処の方法
 日常生活の生活指導を中心にして、症状によって薬物療法、心身医学的アプローチを組み合わせて行うのが基本になります。生活指導では (1)三度の食事を決まった時間に摂り、間食を無くす (2)早寝早起きをすることで十分な睡眠、心身の疲れをとり、朝の排便の時間をたっぷりとれるようにする (3)便意が無くても朝食後は必ずトイレに行く (4)運動や趣味で積極的にストレスを発散する、を守りましょう。薬物療法はあくまで対症療法で補助的な手段です。心身医学的療法はストレスをハッキリさせて悪循環を断つため医師のカウンセリングを受けて、話し合いで対処法を見つけるものです。
 複雑な現代社会に生きる私たちはストレスを全く避けて暮らすことは出来ません。規則正しい生活でストレスを溜め込まず、過敏性腸症候群と上手に付き合う工夫をして、心身の抵抗力を高めることが治療の第一歩になるのです。

自立神経系に乱れ 〜生活指導と薬物療法で〜

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