南東北 2009年7月



嚥下障害と誤嚥性肺炎とは

 高齢者にとって、肺炎は死につながることも多い、恐い病気です。こうした高齢者の肺炎を引き起こすキッカケになりうるのが「嚥下(えんげ)障害」と、そのために起きる「誤嚥(ごえん)性肺炎」です。そこで、誤嚥性肺炎について理解し、日頃から予防のための健康管理に役立ててはいかがでしょうか。
誤嚥とは
 唾液や食物、胃液などが気管に入ってしまうことを言います。その食物や唾液に含まれた細菌が気管から肺に入り込むことで起こるのが誤嚥性肺炎です。起きている時に気管に物が入れば、むせて気づきますが、眠っている間に唾液を少しずつ誤嚥することがあって、気づきにくいのです。特に高齢者はなおさらで、誤嚥性肺炎は高齢者に多く発症し、しかも再発を繰り返す傾向があります。この発症と治療を繰り返すなかで、菌が薬に対して抵抗力を持つようになり、薬が効きにくくなります。このため、まず予防に努め、かかってしまったら完全に治すことがきわめて大切です。治療には抗生物質を使いますが、ステロイド剤を用いることもあります。呼吸がうまく出来ずに酸欠状態になった場合は酸素吸入や、状態によっては人工呼吸器を装着することもあります。
その予防策とは
 次のことを心掛けましょう。@口腔も清潔を保つ:口腔は肺や胃腸の入り口です。適度な湿度と温度が保たれている口腔は細菌にとって居心地がよく、歯磨きやうがいを怠るとすぐ細菌が繁殖します。歯磨きをしっかり行って細菌を繁殖させず、肺に入れないことですA胃液の逆流を防ぐ:げっぷや胸焼けなどがある場合は、胃液の逆流が起こりえます。この場合は食後2時間くらい座って体を起こしておくことで逆流が防げますB嚥下反射を改善する:嚥下とは物を飲み下すことを言います。これがうまくいかない状態を嚥下障害といい、誤嚥性肺炎を引き起こす原因の一つですC薬を用いる:誤嚥性肺炎の再発予防には脳梗塞予防薬が有効とされ、使われることがあります。
嚥下障害とは
 食べ物を噛んだり、唾液や噛み砕いた食物を飲み下したりすることが出来にくくなる状態です。食物を嚥下するときは、口の奥の天井部分(軟口蓋)が鼻腔を塞ぎ、気管の蓋である喉頭蓋が閉じます。これで食べ物は気管や鼻に入り込むことなく食道から胃に送り込まれるのです。しかし、脳卒中や脳神経系の障害、筋肉障害などが生じた場合、この一連の動きに支障が起こります。これが嚥下障害で以下のような症状がみられます。(1)飲み込むときに痛み・苦痛がある(2)口から食べ物がこぼれたり、口の中に残ったりする(3)よだれが出る(4)口が渇く(5)食べるのに時間がかかる(6)飲み込んだ後に声が変わる(7)飲み込む前後や最中にむせたり咳き込んだりする(8)食物や胃液が口の中に逆流したり吐いたりする。
 これらの症状がみられたら病院で診てもらい、食事や介助の方法を相談して誤嚥防止に努めてください。
日常生活での配慮
〈食事のとき〉
 前かがみの姿勢をとって食べることが大切です。椅子に座って食事する際は図のように深く腰かけ前かがみになれるようにし、イスはかかとが床につく高さのもの、テーブルは高すぎないものを。〈食べ物の内容〉嚥下に至るプロセスのどこに問題があるのかを見極め、それに応じた切り方、煮方、とろみ、などに配慮しましょう。

高齢者に多く発症 食物や唾液が気管→肺に

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