南東北 2009年12月



ピロリ菌と胃の病気

「胃の内部は強酸性の胃液に守られているため、定住できる細菌はいない」と永く信じられてきた常識が、今から26年前にオーストラリアのウォレン、マーシャルの2人の医師によってピロリ菌が発見されて覆されました。マーシャル医師は培養したピロリ菌を自分で飲んで胃炎にかかり、原因菌であることを証明、ノーベル医学賞に輝いたことは知られています。このピロリ菌が胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんとどう結びつくのか、探ってみました。
胃に住み着ける訳
胃液は強い酸なので胃粘膜(上皮細胞)を保護するために厚さ1o程度の粘膜層に覆われています。ピロリ菌はこの粘液層にもぐり込みウレアーゼという酵素を分泌します。ウレアーゼは粘液中の尿素を分解してアンモニアを生成します。アルカリ性のアンモニアがピロリ菌の周囲の酸を中和するので強酸性の胃の中でも生きることが可能なのです。
どう病気と結び付くの?
粘液層に住み着いたピロリ菌はゆっくり増殖し、またアンモニアの刺激で周りの菌も集まり粘液層に巣を形成します。すると分泌される種々の毒素や分解酵素の作用によって粘液が剥がされ、むき出しになった粘膜上皮が傷ついて胃炎や潰瘍が生じるのです。
検査するには
ピロリ菌に感染しているかどうか検査の方法は次の通り。
(1)内視鏡で組織の一部を採取する方法
@迅速ウレアーゼ試験(尿素とph指示薬の入った試験管に組織片を入れると菌がいればアンモニアが出て色調が変わる)A組織鏡検法(組織片を染色し顕微鏡で有無を目で観察する)B培養法(組織から菌を分離培養する)
(2)内視鏡を使用しない方法
@尿素呼気テスト(特殊な尿素を含む検査薬を内服し、その前と後で呼気に含まれる特殊な二酸化炭素の量を測定、大幅に増加すれば感染が確認される方法)簡便で精度が高いA血液や尿の中の抗体検査(菌に感染すると血液中に抗体が作られ尿にも排泄されるので、これを調べる方法。迅速な判定が出来る)B便中の抗原検査(診断用に作られたピロリ菌の抗体を使って便中の抗原と反応させる方法)
除菌は?
現在、日本の40歳以上の人では70〜80%の人がピロリ菌に感染してる、と言われています。ただ、その年齢に該当するからといって、全ての人がピロリ菌の検査・除菌をする必要はありません。ピロリ菌がいても大抵の場合は自覚症状もないまま生涯を過ごせるからです。また除菌による副作用が出ることもあります。ただ、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などにはピロリ菌が関与していることが多く、これらの病気を患っている人は医師と相談の上、検査・除菌を検討すると良いかも知れません。◆除菌治療が勧められる(Aランク)=胃潰瘍・十二指腸潰瘍・MALTリンパ腫◆除菌治療が望ましい(Bランク)=早期胃がんで内視鏡で粘膜切除した人・萎縮性胃炎◆除菌治療が検討される(Cランク)=機能性胃腸症など(FD)病変が無いのに痛み、もたれなどが続く状態。

粘膜層にもぐり込み巣≠作って膜を傷つける

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