南東北 2010年02月



脳腫瘍

 今回のテーマは脳腫瘍です。この病名を聞いただけで「怖い病気」「不治の病」というイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、決してマイナスイメージばかりではなく、脳腫瘍はきちんと治療すれば完治する可能性が高い病気でもあるのです。そこで正しい知識を身に付けておきましょう。
脳腫瘍ってなに?
 人間の臓器はそれぞれが重要な役割を持っていますが、とりわけ脳は生命維持のために重要なことはもちろん、心の面でも記憶や感情のコントロールなどを司る、極めて大切な臓器であると言えます。脳腫瘍とはその脳や脳をとりまく組織に出来る腫瘍の総称です。その患者数は「10万人あたり10人程度」と推測され、乳幼児から高齢者まで、あらゆる年代に見られるのが特徴です。
種類と発生原因
 脳腫瘍は頭(頭蓋内)に発生するという点では共通していても、細胞のタイプと性質によって種類は様々です(別表1)。最も多くみられるのは「神経膠腫(しんけいこうしゅ)(グリオーマ)」ですが、これにも幾つもの種類があります。中でも「神経膠芽腫(しんけいこうがしゅ)」と呼ばれるものは増殖のスピードが速く、症状が現れて数カ月で危険な状態に陥る場合もあります。しかし、この場合も早期に治療を開始して手術で腫瘍を切除出来れば、その後の経過は比較的良好です。発症の原因は遺伝子の変異とされていますが、それ以上のことは現在も不明です。ただ腫瘍の進行を助長するものとして高タンパク・高脂肪食品の過剰摂取、過度のストレス、喫煙などが挙げられています。また、他の臓器にがんがある場合、身内に脳腫瘍を発症した人がいる場合は、リスクが高くなると考えられます。
その症状
 大体3つが挙げられます。@慢性的な頭痛:初期では2割程度、進行すると約7割の患者さんにみられます。起床時に最も強く、時間が経つにつれて少し改善する傾向がありますA原因不明の吐き気や嘔吐:頭痛とともに吐き気が続いたり嘔吐するような場合がありますB視神経の異常:腫瘍が大きくなって神経が圧迫されて視力低下などの自覚症状を引き起こす場合があります。この他、発症した部位によって「しびれ・手足のマヒ」「言葉がうまく出ない」「聴覚障害」なども出ます。
検査と治療
 検査の基本は画像診断です。CTやMRIでの診断が一般的です。この画像診断に基づいて腫瘍組織そのものを調べ、腫瘍の種類や悪性度を詳しく知り、これによって治療方針が決められます。治療は、どんな脳腫瘍でも原則は「全てを取り除く」ことです。最も効果的なのは手術による摘出。他に放射線療法(別表2)、化学療法(薬物)を行う場合もあります。
<脳腫瘍の種類:別表1>
(1)原発性脳腫瘍=(a)神経膠腫(b)神経膠腫以外の脳腫瘍の2種。原発性は良性のものが多い
(2)転移性脳腫瘍=脳以外の部位に出来た腫瘍が転移したもの
<放射線療法:別表2>

定位放射線照射

 放射線のエネルギーを利用して腫瘍を小さくしたり、増殖を抑えたりする治療法。手術で取り切れなかった場合や、全てを摘出しても組織検査で悪性腫瘍と認められた場合、さらには小さな病巣が頭蓋内に多発している場合、などにこの療法が行われます。中でも「定位放射線照射」は201方向から放射線を照射して治します。当院で行っている「ガンマナイフ」がこれです。

早期の治療で完治も 〜タイプなどで種類は様々〜

トップページへ戻る