南東北 2010年03月



治る肝臓病 脂肪肝

 お酒をよく飲む人や肥満、糖尿病における過剰栄養、などで簡単に起きてしまう「脂肪肝」は、いわば肝臓の現代病とも言えます。C型肝炎などのウイルス性肝臓病と違って慢性化することはないものの、それは生活習慣病の前ぶれでもあるのです。食生活の改善や運動で早めに改善することが重要です。
健康診断で2割の人に見つかる
 検診や会社の健康診断で肝機能障害を指摘されたことはありませんか。健康診断では約2割の人に「脂肪肝」が認められる、といいます。男性は40歳前後、女性ではそれ以上の中高齢者に多くみられ、近年は増加傾向にある病気です。通常、肝臓には健康なときでも3〜5%の脂肪を含んでいるものなのですが、いろんな原因によって肝細胞に中性脂肪が必要以上に溜まると脂肪肝になります。ウイルス性の肝臓病などと違って、それ自体で肝臓の働きが低下したり、慢性化することはありませんが、生活習慣病との関連も深いので見逃せません。
血液検査
検査 正常値 脂肪肝では?
GOT 10〜40IU/I 軽度上昇。過栄養ではGPT>GOT
GPT 5〜35IU/I アルコール性の場合はGOT>GPT
γ-GPT 50IU/I以下 アルコール性では高くなる
コリンエステラーゼ 186〜490IU/ 過栄養で上昇する
総コレステロール 120〜220mg/dl 高くなる
中性脂肪 50〜150mg/dl 高くなる
何故、なるの?
 肝臓の持つ働きは、大きく分けて「解毒」「分泌」「代謝」の3つの機能があります。「解毒」はアルコールやアンモニアなどの有害物質を分解して無毒化する働きです。「分泌」は腸で消化液となる胆汁を作る働きです。また「代謝」は腸から吸収された栄養を体内で利用出来る形に作り変える働きですが、実はこの「代謝」が脂肪肝に大きく関わってくるのです。
 食物として摂取されたバターや肉類の脂質は小腸で分解され肝臓へ運ばれてきます。肝臓ではコレステロールやリン脂質、中性脂肪といった様々な脂肪に合成されて、今度は身体の各細胞に運び出されていきます。しかし、過食や大量飲酒によって中性脂肪が多く作られると、肝臓の外に運び出す能力が落ちて肝臓に脂肪が溜まります。これが脂肪肝を起こすのです。こうした中性脂肪が肝臓に蓄積しているということは、血液中の脂質も高く、動脈硬化や狭心症といった病気に繋がります。
検査と治療は?
 まず検査は血液検査で肝機能の異状がみられれば、超音波検査やCTスキャン、肝生検などの詳しい検査が行われます。超音波検査は痛みもなく信頼性の高い検査で診断に大変役立ちます。この画面に映し出された脂肪肝は肝細胞の中に増えた球状の脂肪によってキラキラ輝いて見えます。
 治療は、脂肪肝の原因の多くが過剰栄養にありますから適正なカロリー、バランスのとれた食事を心掛けることです。特にアルコール性脂肪肝なら、まず禁酒です。日本酒を毎日2・2合飲み続ければ4週間ほどで脂肪肝になると言われます。禁酒と適正な食事で1ケ月ほどで肝機能は戻ります。さらには、運動で過剰な栄養を消費し、肥満なら減量を。糖尿病による脂肪肝は血糖コントロールの悪さから来ますので、糖尿病自体を治すことが先決になります。
実は糖質も元凶に
 バターや肉だけでなく、ご飯・ケーキ・和菓子などに含まれる糖質も中性脂肪の元凶なのです。糖質は肝臓でグリコーゲンとして蓄えられ、本来なら必要に応じてエネルギー源となって使われるのですが、これが余ると中性脂肪として蓄えられるようになります。
 ◎脂肪肝は努力次第で簡単に治りますし、慢性化することもほとんどありません。怖くないので放置しがちですが、生活習慣病を引き起こしますから原因に心当たりが有る方は定期的な健康診断で肝臓の状態をチェックすべきです。

脂肪肝と慢性肝炎では治療法はまるで逆

 太った人の脂肪肝では血中のGPT(肝細胞に含まれる酵素)が長い間、高値を示すため慢性肝炎と間違われることがあります。慢性肝炎は本来ウイルスなどによって起こることが多く「栄養摂取と安静」が原則です。しかし、脂肪肝では「運動と食事制限」が必要ですから、両者の治療法は正反対なのです。2つの見分けは超音波や肝生検で出来ます。

必要以上の脂肪が蓄積/適正な食事や禁酒で治る

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