広報誌 南東北

第223号

狭心症を知ろう

 狭心症や心筋梗塞を「虚血性心疾患」といい、日本全国で患者数は100万人を越え、毎年7万人が亡くなっています。そこで、今回はこれから冬場に向けて発作を起こす人の多い狭心症について知っておきましょう。
なぜ起きるの?
 狭心症は心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ冠動脈の内側の一部に何らかの原因で狭くなる(狭窄=きょうさく)箇所が発生する疾患です。この病変部には十分な量の血液を通すことが出来ないため心筋(心臓の筋肉)が酸素不足に陥って悲鳴をあげる状態が狭心症の発作なのです。この発作は数分から15分程度で治まるため、狭心症で亡くなることはありません。しかし治療せずに放置しておくと次第に狭窄がひどくなり、やがて心筋梗塞を引き起こして生命に危機が迫るようになります。
どんな症状なの?
 発作の主な症状は胸痛ですが、左ではなく中央部が締めつけられるように痛む人が多いのです。そのため胃の痛みと勘違いします。また奥歯が痛い、背中や左腕が痛い、と訴える人もいます。
薬はどんなものが?
 狭心症発作の薬といえば、昔から使われているのがニトログリセリンです。ニトログリセリンには冠動脈を広げる作用があり、口に含めば1分以内に効果が表れます。この錠剤を舌の裏側に入れるか(舌下錠)スプレーを舌の裏側に吹きつけて粘膜から吸収させるのが正しい使い方です。間違って飲み込んでしまうと、効き始めるまで時間がかかる上、効果が半減しますのでご注意を。
検査や治療は?
 診断は発作が起きた状況を問診し心電図、超音波検査、マルチスライスCTなどの検査を行います。冠動脈に狭窄が確認されればカテーテル検査が行われます。狭窄の程度が軽い場合は薬物治療の対象になります。冠動脈の直径の75%以上が塞がっていればカテーテルで入れたバルーンによって血管を広げてステント(金属の網管)を留置する治療が選択されます。また狭窄が3ヵ所以上に及ぶ場合は、体内の他の部位から切り出した血管で迂回路を作る「バイパス術」が行われます。予防は動脈硬化を起こす高血圧・糖尿病・脂質異常を治し、禁煙することです。
労作時狭心症と安静時狭心症
 労作時狭心症は運動や入浴で発作が誘発されるものです。通勤時の階段の昇り降りやゴルフのプレー中、寒い時期の入浴時などに起きやすく、11月から3月ころまでに多発します。これの原因は動脈硬化です。また症状が軽く、発作の起きる間隔が長いものを「安定狭心症」、動脈硬化が進んで発作の頻度が多くなったり、ニトログリセリンが効きにくくなったり、発作時間が長くなったものを「不安定狭心症」と呼びます。これは放置すると非常に危険ですので入院治療の対象になります。安静時狭心症は発作が就寝中に起きやすいという特徴があり、特に明け方の3時から5時に集中しています。朝起きて冷水で顔を洗った時に起きる場合もあります。そのほとんどは冠動脈が痙攣して狭くなる「冠攣縮性狭心症」が占め、欧米人より日本人が発生しやすい、と言われています。心筋梗塞までは起こしにくいものの、痙攣がひどくなれば突然死の原因である「心室細動」を引き起こす危険が高く油断は禁物です。

冠動脈が狭くなり発作 放置しておくと心筋梗塞へ

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