広報誌 南東北

第233号

慢性閉塞症肺疾患 肺気腫

肺胞の壁が壊れ減少、酸素とのガス交換に支障

喫煙者に高い確率で発生する「肺気腫」や「肺がん」―。とくに肺気腫が中高年層で増加していることは、まだあまり関心が持たれていないようです。慢性気管支炎を含めて呼ばれる「慢性閉塞症肺疾患(COPD)」について今回よく学んで、一度壊れたら再生しない肺胞の病気が発生しないよう気を付けましょう。
慢性閉塞症肺疾患
肺の中にはたくさんの仕切り壁があって、仕切れている1つひとつの部屋は肺胞(はいほう)と呼ばれています。肺はこの肺胞の集まりなのです。肺気腫とは、この仕切り壁が破壊されて肺胞同士が融合してしまい、その数が減っていく病気です。この肺気腫が進行すると肺のガス交換効率が低下して、身体に必要な酸素を十分に供給出来なくなるため、最後には呼吸不全に陥ります。この肺気腫の特性や原因が慢性気管支炎と共通する点が多く、単独で診断されることが稀なほど、肺気腫には慢性気管支炎を伴っています。そこで、病気の性質上、両者を含めて「慢性閉塞症肺疾患(COPD)」と呼んでいます。
肺気腫になると…
肺胞が破壊された肺は弾力が無くなり、伸びきった風船のような状態になります。肺胞の壁に張り巡らされていた毛細血管は減り、血液を通して酸素と二酸化炭素のガス交換が行えなくなります。つなり呼吸の効率が低下するため、空気中の酸素だけでは呼吸が困難になり、ひいては酸素吸入をしながら生活しなければならなくなります。弾力が無くなり、吸い込まれた空気がうまく吐き出されなくなった肺は樽状に膨張していき、肺の下にある横隔膜(呼吸肺)を押し下げます。さらに、心臓も圧迫して心疾患などを併発することがあります。
90%は喫煙者
肺胞が破裂される原因はハッキリと解明されたわけではありません。しかし、疫学的にみて肺気腫の患者さんの90%が喫煙者であり、個人差はあるものの、罹患率はタバコの本数や喫煙歴に比例しています。発病に至るまでには別の要因も重なっているものと思われますが、肺気腫はタバコの害が顕著に示される疾病の代表と言えるでしょう。肺気腫の発症は60〜70歳代が多く、加齢による肺機能の低下も病気の進行に影響しています。ただ、この病気は10年から20年という長い期間にゆっくり進行するのが特徴ですから、自覚症状が現れるのが遅くても、実は若い時期から病状が進んでいたと考えるべきでしょう。
なぜ肺胞が壊れるのか
私たちの身体の中では病原体や感染に対する防御機能が働いています。この働きをするのが白血球です。白血球はタバコなどの有害物質によって刺激を受けると、タンパク質分解酵素を活性化させます。同時に、これを抑制しようという抑制酵素も分泌され、正常な細胞まで攻撃しないようにバランスを保っています。ところが、絶えずタバコの有害物質による刺激を受けていると、この分解酵素と抑制酵素のバランスがとれなくなり、分解酵素が過剰に分泌されて正常な細胞まで攻撃してしまいます。こうして肺胞の壁が壊れれるのです。
壊れた肺胞は再生出来ない
一度壊れた肺胞は再生することは出来ません。治療とはそれ以上の肺胞の破壊を止め、併発している呼吸器異常を改善して生活の質を少しでも高めることを目的としています。そのためには、なんといっても禁煙が大原則となります。治療は理学療法、薬物療法、酸素療法を並行して行いますが、肺気腫が進行すると感染症に罹りやすくなったり、様々な疾病を合併する危険があります。重症の患者さんの20%は肺がんを合併している、といわれています。
早期発見と禁煙
一度発症したら完治は不可能な肺気腫は早期発見によって悪化を食い止めることが重要です。自覚症状としては・軽い運動で息切れしやすい・慢性的にセキ、痰がつづいている・息を吐き出すときに口をすぼめる・風邪をひくと呼吸が困難になる・満腹状態になると息苦しく、次第に痩せてきた、などです。実際には自覚症状が現れるころは、かなり進行しているとおもわれます。喫煙者は遅くとも40歳代からは定期的にCT検査を受けることをお勧めします。

中高年層で増えています…

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