広報誌 南東北

第236号

突発性難聴メニエール病

聞こえづらい、即受診を

徐々にあるいはある日突然に「聞こえ」が悪くなる難聴。その中でも感音性難聴の代表的疾患である突発性難聴とメニエール病は、ストレスや過労が発症の誘因となることが多いが、いまだに原因がはっきりと解明されていません。しかし早期に適切な治療を受ければ回復する可能性もあり、聞こえの悪さに気付いたら即刻、受診が必要です。治療はまさに時間との戦いと言えます。
◎ストレス、過労が誘因◎
難聴は、大きく「伝音性難聴」と「感音性難聴」の二つに分類されます。伝音性難聴とは、外耳道や鼓膜、耳小骨など音を拾って増幅する器官に異常が発生するもので耳垢詰まりや中耳炎、鼓膜損傷などが該当します。基本的に治療法が確立されており、聴力の回復が期待できる難聴です。
これに対して感音性難聴は音を信号に変換して脳に伝える神経系(内耳や大脳)に異常が発生するもので、聴力の回復は大変困難で、突発性難聴やメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴などがあります。
ある日突然、片側の耳の聞こえが悪くなる疾患が突発性難聴です。片耳が大半ですが、両耳の聴力が落ちていく場合もあり「キーン」「ザー」といった耳鳴りを伴うこともあります。40−60才代に多く発生率は約三千人に一人と推定されています。何月何日に発症したとはっきり分かるのが特徴で徐々に悪化したり、日によって聞こえの程度が変わったりすることはありません。三割ほどにめまいの症状が見られますが、一時的なもので繰り返すことはありません。
ストレスや過労がきっかけで発症することが多く、一日も早い入院、安静治療が望まれます。出来れば一週間以内、遅くても二週間以内の治療開始が必要です。適切に治療すれば、患者さんの三分の一は完治し、三分の一は難聴や耳鳴りが残るものの症状は軽くなり、あと三分の一は残念ながら治りません。目安として@二週間以内に治療開始A初診時の難聴が高度(90デシベル以上)ではないBめまいが無いC比較的年齢が若い−などは比較的完治しやすいと言われます。
原因として内耳の循環障害やウイルス感染説が有力視されており、患者さんの状態に合わせて様々な方法が試みられています。薬剤治療が原則でステロイド剤や血管拡張剤、ビタミン剤、代謝を高める薬剤、血液を固まりにくくする薬剤、抗ウイルス薬、漢方薬、鍼灸などが行われています。また薬物治療に合わせて頸部の神経に局所麻酔剤を注射する「星状神経節ブロック」や「高気圧酸素療法」などが行われる場合もあります。
一方、メニエール病は、天井がぐるぐる回るような回転性めまいが繰り返し起こり、通常は片耳の難聴、耳鳴りを伴う疾患です。突然の激しいめまい発作が三十分から六時間程度続き、その間難聴や耳鳴り以外に吐き気や嘔吐、腹痛などの症状を伴い、発作時は立っていられません。めまいが始まると難聴や耳鳴りは元に戻りますが、めまい発作を繰り返すたびに少しずづ難聴が悪化していくのも特徴の一つです。30−40才代の女性にやや多く、痩せ型で几帳面、神経質な性格の人が成りやすいという統計もあります。
こちらも突発性難聴と同じように精神的ストレスや肉体的疲労、睡眠不足などが引き金になるようです。初期には突発性難聴と鑑別できない場合があるほどで確定診断には様々な検査が必要です。
原因は不明ですが、患者さんの内耳では内リンパ腔が腫れる「内リンパ水腫」が起きることが判っています。治療はこの内リンパ水腫を軽減するため様々な薬剤が使われます。一般的なのは利尿剤のイソソルビド(製品名はイソバイドなど)で、これにビタミン剤や血流改善剤を組み合わせることもあるようです。
繰り返すめまい発作で生活に支障をきたすような場合は、まれに手術も選択されます。過剰は内リンパ液を排出させる穴をあける「内リンパ嚢解放術」、めまいの原因の平衡感覚を司る神経を切断する「前庭神経切除術」などです。普及率の高い内リンパ嚢解放術による再発率は20〜30%といわれますが、より難度の高い前庭神経切除術では95%の患者さんのめまいが完治しています。
現代はストレス社会であるばかりか騒音に満ちた環境も多く、さらにイヤホンやヘッドホンで音楽を聴く習慣も定着して難聴の因子はあふれかえっています。いずれにしても症状が固定化する前に受診して早期に治療を開始することが重症化を防ぐポイントのようです。

早期治療は30%完治

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