広報誌 南東北

第237号

入眠障害

良質な睡眠、生活改善から

睡眠の悩みで寝つきが悪い入眠障害を訴える人が多いようです。ストレスなどの心理的要因や何らかの身体的な疾患、あるいは普段の生活習慣が原因になっていることが考えられます。早く眠れるよう酒を飲んだり、薬を使用する人もいますが、今回は質の良い睡眠に導くためにぜひ知っておきたい情報を紹介します。
睡眠を得るには@一定の周期で眠くなるA疲労によって眠くなる-という脳の中で起きる2つの仕組みが関係しています。@は体内時計が脳の機能として存在し、起きた時に強い光を浴びる時刻とその生活のリズムが規則正しい場合、毎日ほぼ同じような時間帯に眠気が訪れます。Aの疲労で眠くなるのは脳や身体の活動で脳内に分泌される様々な睡眠物質が関係し、脳に蓄積され睡眠を促します。
★アルコールと睡眠の問題点
寝つきが良くなるようにお酒を飲んで寝る人もいますが、適量のアルコールは入眠を促す効果が認められるものの睡眠薬代わりに利用するには2つの問題があります。
1つはアルコールの摂取には習慣性や耐性があるため飲酒量が徐々に増えてしまう傾向があることです。最初は1杯で寝つけたのが2、3杯以上の量を飲まないと眠れない状態が続き、アルコール依存症へ進んでいく可能性が高まります。眠るためのアルコールですが、皮肉なことに習慣性があるため依存症には不眠が含まれています。
もう1つの問題は、アルコールは睡眠の質を低下させることです。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられ、深い(質の良い)眠りが起こるのは、ノンレム睡眠の時です。入眠後まずレム睡眠が始まり、しばらくするとノンレム睡眠に移行します。これを1セットとして、6時間の睡眠をとる人の場合、約4回このサイクルが繰り返されます。
アルコールを摂取すると、入眠後3時間ほどしてからノンレム睡眠の時の深い眠りを妨げることが分かっています。つまり6時間睡眠の場合、その半分は睡眠の質が低下した状態になります。さらにアルコールには利尿作用があり、睡眠の途中にトイレに行きたくなり、目が覚めてしまう問題があります。アルコールを睡眠薬代わりに使うのはお勧めできません。ごく稀に眠れないことがあるという人以外は避けた方が良いでしょう。アルコールは睡眠の3時間前までに適量呑むことを習慣にしましょう。
★睡眠改善薬と睡眠薬の違い
睡眠改善薬という市販の薬が数種類あることをご存知ですか。これらの代表的なものは風邪薬やアレルギー性疾患の薬に使われる抗ヒスタミン薬を主成分としています。
このため身体がすぐに薬の作用に慣れてしまうという特徴があり、長期の服用には効果がありません。時差による影響や突発的なストレスなど極端な環境の変化があった場合に起きる一時的な不眠を対象とした薬です。医師の処方せんが必要な睡眠薬とは違うものと覚えておき、非常時のみ服用しましょう。
睡眠不足は不安や不快を本人にもたらすだけでなく、事故の発生などを通じて他の人へ重大な影響を与える可能性もあります。睡眠に悩む人は、精神科や心療内科を受診し睡眠の質を低下させている原因を根本から見極め治療していくことが最善です。1週間に3日以上の不眠が1カ月を超えて続くような場合は、不眠の症状や他の疾患の治療とも関連しますが、睡眠薬を使用した薬物療法が行われることがあります。
睡眠薬に不安を感じる人もいますが、現在主に使われている睡眠薬のほとんどが安全性が高く、また耐性ができにくいものになっています。
★睡眠不足症候群
皆さんの平均睡眠時間はどのぐらいですか。日中に強い眠気を感じる悩みで受診される人の中で増えているのが、平均睡眠時間が5時間以下という人です。不規則な勤務シフトにこうしたケースが多く見られ睡眠不足症候群と呼ばれます。病気ではありませんが、いずれは心身に悪影響が及ぶことになります。良質な睡眠は最低でも6〜7時間の睡眠が取れるように生活改善をしたいものです。
★睡眠の常識?
1日に必要な睡眠「量」は、人によって違います。不眠に悩む人は8時間という数字にとらわれず睡眠の「質」を高めた方が良いようです。
「早寝早起き」は素晴らしい習慣です。不眠の人が生活改善していく場合、この言葉を逆にして「早起き早寝」というように意識してはどうでしょう。早く寝なければ、ということをストレスにしないように。多少無理しても朝、早く起きることが次の入眠を楽にしてくれます。

睡眠薬代わりの酒は誤解、習慣性で依存症も

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