広報誌 南東北

第245号

感染性胃腸炎にご用心

食中毒予防の原則は加熱

本格的な夏が到来しました。暑さから食欲が落ちて体力の消耗が激しく、細菌やウイルス感染によって下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状を起こす感染性胃腸炎が増えてくるのもこの時期です。代表的な夏の感染症といえば食中毒ですが、7月1日から飲食店で生レバーが提供禁止となりました。改めて感染性胃腸炎の予防法などを考えてみます。
昨年4月中旬から5月中旬にかけ富山、福井、神奈川県の焼肉チェーン店で「ユッケ」を食べた客181人が集団食中毒にかかり、5人が死亡する事件が発生。腸管出血性大腸菌O-111による感染と判った。5月にはドイツで病原性大腸菌O-104による溶血性尿毒症症候群(HUS)が発生、欧州全土で流行した。
厚生労働省は昨夏、飲食店などに牛生レバー提供の自粛を要請。調査でレバー内の菌を除くには加熱する以外に有効な方法がなく、その後も4件発生したことから薬事・食品衛生審議会で今年7月1日から牛生レバーの提供禁止を決定、違反者には2年以下の懲役か200万円以下の罰金を科すことにした。
感染性胃腸炎は嘔吐・吐き気・下痢・腹痛などの胃腸症状を主とする感染症でウイルス性と細菌性に分かれる。ウイルス性胃腸炎は比較的2〜3月にかけて2歳児ぐらいの乳幼児に多発し重症化しやすいロタウイルス腸炎、11月から3月までの冬を中心に乳幼児から成人まで発症するノロウイルス腸炎、夏にプールを介してのどや目に炎症を起こすプール熱≠ナ有名なアデノウイルス胃腸炎などがある。
細菌性胃腸炎は原因菌の付いた食品を食べて起こる食中毒で統計では7、8割が7〜10月に発生している。現在食中毒原因菌に指定されているのは16種類。イカの塩辛など海産魚介類に多い腸炎ビブリオ菌、鶏卵類のサルモネラ菌、鶏肉など生肉のカンピロバクターが三大起炎菌=B
食品の中で増殖・毒素産生(アルコール無効)する毒素型、腸管内で増殖・感染する感染型、腸管内で増殖・毒素産生する中間型がある。毒素型はボツリヌス菌や黄色ブドウ球菌・セレウス嘔吐型、感染型は腸炎ビブリオ菌・サルモネラ菌・カンピロバクター、中間型にはウエルシュ・エルシニアなど。これら全ての型を持つ病原性大腸菌は、小腸で増殖し腸毒素を産生する水様便・軟便の毒素性大腸菌、赤痢菌と同様に大腸粘膜上皮細胞に侵入し増殖する粘血便の腸管侵入性大腸菌、小腸粘膜上で増殖する病原性大腸菌、赤痢菌毒素様のベロ毒素を産生し指定伝染病の腸管出血性大腸菌がある。中でも出血性大腸菌の汚染源は牛で保菌率が高い。70〜90%がO-157。昨年発生したユッケの「111」もある。健康な牛の1〜2%の腸内に存在する。
動物の体内で細菌やウイルスがいるのは、通常は気道と消化管のみで筋肉内部は無菌。牛は反芻するので腸に多い。解体作業でかたまり肉の表面は有害な微生物で汚染されている可能性が高い。ビーフステーキの表面はレアで良いから焼くこと。ハンバークステーキ(挽肉)は中心温度を75度に焼くことが必要だ。
感染性胃腸炎予防の原則は加熱。食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」が大事だ。とにかく野菜や果物など生で食べるものは流水でよく洗うこと。まな板や包丁なども洗うか熱湯消毒すべき。手洗い・うがいは当然。生鮮食料品は購入後早く低温で保存すべき。大半の細菌やウイルスは加熱で死滅する。肉や魚はもちろん野菜なども加熱すれば安全だ。ノロ・エンテロなどウイルス性胃腸炎の予防には85度1分以上、食中毒予防には75度1分以上の加熱を守りたい。

生ものはよく洗い、肉類は中心75度以上に

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