広報誌 南東北

第253号

味覚障害

あなたの味覚、大丈夫ですか、他に隠れた病気があるかも…

「何を食べても味が分からない」「料理の味が薄く感じる」。もしかして味覚障害かもしれません。高齢者に多い病気ですが、最近は激辛の料理を好んで食べたり、タバコの吸い過ぎなどで起こることもあり、若い人でも増えています。命に関わることが少ない病気のため放っていて気が付いたら症状が進行、高血圧や糖尿病など他の病気が隠れている場合もあります。味覚障害の知識を深めましょう。
◎亜鉛たっぷりが最大の治療法 正しい食事で「味のある人生」を◎
味覚は食べ物が安全かどうかを見極める重要な感覚で甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5種類あります。酸味は腐敗したものの味、苦味を持つ物は危険なものです。このため甘味に比べて酸味や苦みに対しては敏感に反応し、かつ簡単に失われないようにできています。舌には味蕾(みらい)という花の蕾の形をした細胞があり、味を感じ味覚神経を介して大脳に伝える役目をしています。
こうした味を感じる経路のどこかに異常があると味覚障害が起こります。@味が薄い・分からないなどの味覚低下A全く味がしない味覚消失・脱失B口の中に何も入っていないのに苦実や渋みを感じる自発性異常味覚C本来の味と違った味を感じる錯味(さくみ)症・異味(いみ)症D何を食べてもいやな味の悪味(あくみ)症―などです。
10年前に日本口腔・咽頭科学会が行った調査では全国で24万人が味覚障害で耳鼻科を受診しています。内科や歯科での受診もあり患者数はそれ以上いることは確かです。
なぜ味覚障害が起こるのでしょう。偏った食生活による亜鉛不足、高齢による味覚の減退、風邪などで鼻づまりするといった臭覚の低下を伴う味覚の低下、舌の表面の異常、薬の副作用や血液中の亜鉛不足、全身の病気(肝・腎・消化器障害、糖尿病など)、食品添加物の影響などが挙げられます。原因が分からない特発性味覚障害もあります。
原因はいろいろですが、共通しているのは身体の組織や細胞に必要な亜鉛の欠乏。体に含まれる亜鉛の量はわずか2gですが、体内の酵素の成分となっており、たんぱく質やDNA、インスリンなどを生成する働きのほか味覚を感じる味蕾づくりに欠かせません。味蕾は短い周期で生まれ変わるためにたくさんの亜鉛が必要で不足すると味覚障害を引き起こすわけです。
味覚障害の治療は症状によって異なるが、亜鉛欠乏性味覚障害の場合は亜鉛をたっぷり補うのが最大の治療法。現在の日本では治療認可薬がなく、亜鉛が主成分で胃潰瘍治療に用いられるプロマック(ゼリア新薬)や亜鉛節剤の投与が多いようです。3〜6カ月飲み続けるとかなり有効なことが分かり、最近は「味覚障害の多くは亜鉛欠乏が関与」が解明されつつあり治療薬開発も進められています。
味覚障害にならないためには亜鉛を含む食品の摂取や栄養バランスのとれた食事をすること。日本では亜鉛の所要量は成人男性12mg、女性9mgとされていますが、体外に排出されるのが大半で3mg吸収されればいい方です。食事で毎日摂取することが困難な場合はサプリメントで補給するのも1つの方法です。コンビニ食やフアーストフードばかり利用している人には亜鉛不足による味覚障害が起こりやすいといわれます。
亜鉛欠乏は味覚障害ばかりでなくやがては高血圧や動脈硬化などの生活習慣病に繋がります。もし、おかしいと感じることがあったら、耳鼻咽喉科に相談しましょう。規則正しい食事で美味しいものを美味しく味わえる「味のある人生」を楽しみたいものです。
[亜鉛を多く含む・食品・食材]    
食品 亜鉛の含有量
(mg/100g)
  食品 亜鉛の含有量
(mg/100g)
生カキ(養殖)   13.2     牛のモモ肉(赤身、和牛)   4.4  
アワビの水煮缶   10.4     コンビーフ缶詰   4.1  
豚レバー(生)   6.9     たらばガニ(生)   3.2  
牛の肩肉(赤身、和牛)   5.7     たらこ(生)   3.1  
どじょう   5.6     うなぎの蒲焼き   2.7  
凍り豆腐   5.2     ホタテ貝(生)   2.7  
ラム肉   5.0     ハマグリ(生)   1.7  
牛の肩ロース(和牛)   4.6     ほたるいか(生)   1.3  
イワシの丸干し   4.4            
※日本人の食事摂取基準より                
あなたの舌は大丈夫?味覚障害度チェック
@毎日2食以上ファーストフードやコンビニ弁当を食べている
A四味(甘味・酸味・苦味・塩辛味)の好き嫌いが激しい
B激辛料理やエスニック料理が好き
C唐辛子や胡椒、わさびなど辛い香辛料を使わないと気が済まない
Dスナック菓子や缶詰、加工食品、インスタント食品を良く食べる
E野菜にはマヨネーズだ
F清涼飲料水を毎日3本以上飲む
G歯を磨く時舌も一緒に磨く
    【評価】
全部チェック = すでに味覚障害
4〜7個 = 80%の危険性あり
@〜Bをチェック = 50%の危険性
Gプラス2個 = 生活改善で防げる
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