広報誌 南東北

第253号

VPDを知っていますか?

ワクチンで防げる病気です。子どもから大人まで正しい知識を

ワクチンで予防できるVPDって?子どもたちの健康と命にかかわるといってもピンと来ないでしょうが、現実にわが国で子どもも大人もワクチンで予防できる病気に感染し後遺症で苦しんだり亡くなっています。2月21日(木)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で中沢誠小児・生涯心臓疾患研究所長(小児科)が講演した「VPDを知っていますか」を要約し、予防接種の大切さを考えます。
◎接種率の向上が優先課題 ヒブ、肺炎球菌を定期接種に◎
VPDとは、英語のVaccine(ヴァクシーン=ワクチン)、 Preventable(プリヴェンタブル=防げる)Diseases(ディジージズ=病気)の略。予防接種は子どもだけの問題ではない。子どもが学校で病気を媒介、家族に広げることもあり、子どもからお年寄りまで正しい知識を身につけたいものです。
乳幼児期から学童期にかけ病気予防や軽減できるワクチンはたくさんあります。定期接種分だけでも結核や三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)、麻疹(はしか)・風疹(三日はしか)、ポリオ、日本脳炎など。これは国の補助があり無料。しかし肺炎球菌(肺炎、中耳炎、髄膜炎など)、B型肝炎、ロタウイルス胃腸炎、インフルエンザ菌B型、ヒブ(髄膜炎、敗血症など)、水ぼうそう、流行性耳下腺炎(ムンプス)、学童期以降に接種の子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)、肺炎(肺炎球菌)、全年齢で接種できるインフルエンザなどは任意接種です。国は病気になったら金は出すが予防には金をかけない政治姿勢。予防を避けて通っています。
結核は確かに高齢者に多いが3年前の統計では50歳未満の患者が5561人で36人が死亡。若者の受診の遅れが目立っています。また粟粒結核は小児に多く約20年前に比べ倍増、死亡率も高く髄膜炎などから半身不随、知恵遅れといった重い後遺症が残る結核後進国≠ナす。全国で少ない方の本県もまだ162人の患者さんがいます。
百日咳も減っているが、15歳以上が3割にもなり高齢者も増えています。日本は乳幼児と11〜13歳時の2回予防接種だが、米国では流行抑止に重点を置き乳幼児はじめ成人も10年ごとに予防接種する積極策で日米差が出ています。
麻疹は新型インフルエンザの6〜8倍の感染力。2年前に仏で1.5万人が罹患し6人が死亡。日韓サッカーの時日本ははしか汚染国≠フ汚名を受け追加接種を実施、平成20年に1万人超の患者が一昨年は500人以下に減りました。昨年、台湾旅行の本県成人5人が麻疹に罹患。先進国でも予防接種は大切です。今は麻疹・風疹とも1歳と小学入学前の2回接種。風疹で怖いのは先天性風疹症候群で妊婦が妊娠初期に罹ると難聴、白内障、心疾患などを持つ子が生まれる可能性が高い。昭和54年4月2日〜62年10月1日生まれのうち81万人余りが厚労省の接種中止により未接種で影響が心配です。
昭和35年ごろ6500人超の大流行だったポリオ(小児まひ)は予防接種導入以降激減、80年以降見られません。昨年から不活化ワクチン使用が可能になりました。ただ昭和50年〜52生まれの人はポリオの抗体保有率が低くアフリカや東アジアに行く時は追加接種した方がいいようです。
日本脳炎の発症率は0.1〜1%。死亡率が高く重い後遺症が残る可能性が高い。国内では関東以西に多い。
任意接種のB型肝炎は全世界の約20億人に感染の既往があるといわれます。新規患者は年間1800人、肝がんが約3万5千人。主に母子・性・血液感染です。最近は保育園や運動部での体の接触でも感染するようで予防には出生直後2回の予防接種が大事のようです。
細菌性髄膜炎はヒブ(インフルエンザ菌B型)や肺炎球菌などによる脳やせき髄を包む髄膜への感染症でいろんな合併症が起きます。ヒブの場合は10人に1人、肺炎球菌の場合は5人に1人死亡、または難聴やてんかんなどの後遺症が残ります。しかしワクチンによって肺炎、中耳炎、副鼻腔炎が減っており、早く定期接種にしてほしいものです。
おたふくかぜ(ムンプス)は普通、後遺症を残さず治癒しますが、思春期に感染すると甲状腺炎や難聴、女子は卵巣炎、男子は睾丸炎などを合併し不妊の原因になります。水痘・帯状疱疹の予防接種率は3割程度。ムンプス・水痘ワクチンの接種率向上で年間2500人の入院、30人の重篤後遺症・死亡を減らせます。ワクチンの接種スケジュールはヒブ、肺炎球菌から開始するのが推奨です。同時接種を考えてもいいと思います。
子宮頸がんの増加を防ぐには9歳以降3回接種すると予防できます。成人肺炎球菌も年齢の上昇と共に死亡が増えます。インフルエンザの合併が高いことから2つを一緒に接種するとリスクは少なくなります。インフルエンザワクチン2回のうち1回は肺炎球菌接種をしてもいい。予防接種率の向上で発症はもとより合併症を減らせるし、ワクチン接種の普及が一番です。
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