トップアスリートたちの食と栄養
 
楽天イーグルスを支えるスポーツ・ニュートリションの実践
 
 野村新監督を迎えて2年目を迎えた『楽天イーグルス』。開幕を飾った一場靖弘投手は4月7日の千葉ロッテマリーンズ戦でプロ入り初完封勝利、6月20日の巨人戦では今季5勝目をあげた。
 また、4月27日の福岡ソフトバンクホークス戦にプロ入り6年目で初先発した愛敬尚史投手が6回途中までを6安打1失点に抑えて勝利。鉄平選手が開幕から1番バッターとして活躍、打率3割をキープしている。
 20年目のベテランスラッガー・山崎武司選手も健在だ。6月17日の巨人戦では2打席連続のホームランを放つ活躍。 戦力補強で西武ライオンズから獲得したホセ・フェルナンデス選手は6月20日現在、本塁打18本と、西武・カブレラ選手と並びリーグ1位の成績だ。
 エースの岩隈久志投手は肩を故障してシーズン開幕からファームで調整中だが、13日には山形で2度目の登板を果たし、143キロをマーク、順調な回復を見せている。
 福島県出身のルーキー左腕・松崎伸吾投手も新戦力として期待を集めている。
 『東北楽天ゴールデンイーグルス』を指揮するのは野村克也新監督。昨年12月には総合南東北病院(岩沼市)の創立20周年記念式典で講演をしていただきました。野球選手にとって、長いシーズンを戦う健康管理やコンディションづくりは避けて通れない課題。『ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ』のスタッフとして数々のトップアスリートの食と栄養をサポートし、現在は『楽天イーグルス』の選手たちに向き合う大前恵管理栄養士に、その取り組みや考え方を伺いました。
大前 恵(Omae Kei)さん
明治製菓株式会社『ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ』の管理栄養士。『ザバス』は誕生以来、常にスポーツを科学し、アスリートに必要な栄養(ニュートリション)とは何かを提案し続けてきた。大前さんらスタッフは楽天イーグルスやヴィッセル神戸などのチームをはじめ、ジャイアンツ上原選手、高橋(尚)選手、木佐貫選手ほかのプロ野球選手、西谷岳文選手(ショートトラック)、庭田清美選手(トライアスロン)、スキーアルペン代表やサッカーの稲本選手、柔道の吉田秀彦選手など多数のアスリートのサポートを行っている。
SAVASとはSource of Athletic Vitality and Adventurous Spiritの略。
 『東 北楽天ゴールデンイーグルス』は、2005年からパシフィック・リーグに参入した東北唯一のプロ野球球団である。本拠地のフルキャストスタジアム宮城(宮城県仙台市)は改修工事も終わり、収容人員は2万3千人。6月21日現在のリーグ順位は最下位だが、セ・パ交流戦では巨人に勝ち越しを果たすなど、野村新監督の指揮の下、『楽天イーグルス』の成長を見せつけた。
 若い三木谷オーナーの理解もあって、スポーツ科学の成果にも関心が深いチームだ。日本人初のコンディショニング・コーチとして『ニューヨークメッツ』に在籍していた立花龍司氏が『楽天イーグルス』のコンディショニング・ディレクターを務めている。そのスタッフは選手の競技力を高めるため、体力的要素の強化・調整をアシストする。食や栄養管理の面でのスタッフも一流だ。様々な種目のトップアスリートをサポートする『ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ』である。

世界と戦う選手たちのために
 『ザバス』は1980年の誕生以来、常にスポーツ選手たちの声に耳を傾け、より実践的な活動を続けてきた。陸上競技から始まり、特にバルセロナ五輪に向けて、柔道日本代表チームの栄養指導に取り組んだことはよく知られている。 そのきっかけを作ったのは、ロス五輪金メダリスト、山下泰裕監督だ。氏が指導者になるために海外で学んだ際、目の当たりにした世界のスポーツの常識を、日本にも取り入れたのだ。サプリメント(栄養補助食品)も含めた、世界と闘う栄養とコンディションづくりの実践である。
 「けれども、基本的な考え方のベースにあるのは、普通に生きる上でのバランスのとれた食と栄養です。ドーピングの問題もありますし、日常の食事がいい加減で、サプリメントだけに頼ろうとするのは間違いですね」
 『楽天イーグルス』をサポートする管理栄養士、大前恵さんはそう語る。
栄養については子供のころから自分で考えられる力を育てることが大事。同時に必要なのが指導者の理解。ザバスが主催する少年サッカー大会などでも、大前さんらザバススタッフはサッカーコーチィングスクールやコンディショニング講習会を開き、食と栄養への理解を深める活動にも取り組んでいる。


将来を見据えた選手育成には 食と栄養への理解が不可欠 
選手、家族とともに実践する食と栄養のサポート
 栄養とは私たちの身体と心の健康を保ち、活動し、成長するために必要な成分である。
 「『楽天イーグルス』では、まず食事と栄養について理解してもらうための講習を行いました。家族や奥様の講習もです。ベテランの選手は理解できているから問題ないのですが、若い選手も増えてきたので、自分で考えて、どこに行っても自分をコントロールできる考え方の養成に主眼があります。今は、何年後かを目指した積み重ねの導入部分でしょうか」
 食べることは生きることの基本である。それはプロ野球選手だからといって特別なことではない。
 「けれども野球選手として特殊な能力が必要であれば、普通の人よりもこれは多く食べた方が良い、という指導はします。やっと栄養士の使い方、食べることについても分かってきて、最近、栄養調査の用紙を配りました。それを分析して選手にフィードバックするんですが、やっていることの意味が分からないのでは仕方がない。講習などを通して、ようやく食べることについて考えられるところにきたかな、というところでしょうか」
 栄養指導で接する時間は限られている。注意深い”観察”をしながら選手が困ったとき、必要としているときにピンポイントでアドバイスをする。今、彼らに必要なことは何か。スポーツと栄養の専門家の立場から問題点を探し出すためには、豊富な経験がものを言う。
 『楽天イーグルス』のエース、岩隈投手は肩の故障のため今季はシーズン当初からファームでリハビリに取り組んでいる。大前さんは奥様とメールなどをやり取りし、食事と栄養に関する相談があれば、具体的なアドバイスを惜しまない。
 こうした選手やチームとの信頼関係を築きながらのより実践的なサポートは、国際大会での日本選手の活躍を見ても分かるとおり、様々な種目で大きな成果をあげてきている。
 
写真左は「フルキャストスタジアム宮城」での試合風景、写真右はチアリーダーズ「東北ゴールデンエンジェルス」。

変わるスポーツの”常識”
 1990年のサッカーワールドカップ・イタリア大会で西ドイツが優勝したとき、ベッケンバウアー監督が「自分たちが選手の頃は試合前に肉を食っていた。でも今は炭水化物を中心に組み立てている」と発言していたという。
 当時、日本では試合前はゲンを担いで「カツ丼」を食べるような環境が当たり前だった。それから十数年でどれだけ常識は変わっただろう。学校の部活などでは練習中に水を飲むことを禁止していた時代もあった。野球そのものも変わってきてる。ウエイト・トレーニングや、投球後のアイシングも、かつては無視されていた。それが今では常識である。栄養・コンディショニングへの意識の急速な変化にはあらためて驚かされる。
 スポーツ選手にとってはサプリメントも常識となった。けれども、食の大切さは変わらない、と大前さんは強調する。
 「噛んで、唾液が出て、消化して。それで体や脳にも栄養がいく。まず噛むことで、脳は刺激されるし、筋肉も刺激されます」
 栄養も食事で済むならそれが一番いい。それが「ザバス」の考え方の基本だ。しかし、トップアスリートになると、通常の人の5倍もの食事量を摂らなければ補給できない栄養もある。
 「ミネラルなら2倍、たんぱく質、ビタミンと、内容にもよりますが、野菜なら2〜5倍くらいでしょうか」
 けれども現実にはなかなか食べきれる量ではない。そこに、『ザバス』というサプリメントの存在理由もあるのだろう。
 トップアスリートをサポートする『ラボ』の実践を知るにつれ、3年後、5年後の『楽天イーグルス』の活躍が楽しみになってくる。
 
左の写真は球団マスコット「クラッチ」と「クラッチーナ」。それぞれオスとメスのイヌワシ。写真右の覆面のMr.カラスコは正体不明のようだが、プロレスラー「サスケ」率いる「みちのくプロレス」にも参戦する。ヒール(悪役)でありながら、宮城県各地に出没しては清掃活動にも汗を流しているようだ。
『楽天イーグルスTV(ホームページ)』では、『東北楽天ゴールデンイーグルス』の試合をライブで楽しめる。料金は無料。
〈楽天イーグルスTV HPアドレス〉 http://tv.rakuten.co.jp/eagles/
〈球団公式HPアドレス〉 http://www.rakuteneagles.jp/
  
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