Travel&Walking ふるさとを旅する [福島県郡山市(西田町・高柴)] 
 
人形師の里「高柴デコ屋敷」
 
 
新年の干支、『丑(うし)』の張り子人形づくりで賑わう『高柴デコ屋敷』を訪ねてみました。『デコ』とは人形のことで、今でも五軒ほどが郷土玩具の三春駒や張り子の技を受け継いでいます。ここは古くは三春藩領。幾星霜の歴史と職人たちの思いが、貴重な民芸の文化を支えていました。
郡山市西田町にある『高柴デコ屋敷』は、滝桜などで有名な三春駅から歩いて40分ほどの距離。
デコ屋敷は三春駒や三春張り子の発祥地で、集落の入口には茶店もあり、のんびりと散策を楽しみながら人形の魅力に触れることができる。
毎年6月には『高柴デコ祭り』が開催され、伝統のひょっとこ踊りや七福神踊りなどが披露され、たくさんの人出で賑わう。
  
 
新年の縁起物を探しに
茅葺きの古民家が美しい。その軒をくぐると、昔ながらの落ち着いた土間に縁起物や達磨、七福神たちが所狭しと並んでいる。なかでもとりわけ愛らしい丑の張り子の人形は新年の干支。景気の立ち直りへの願いを込めた。  
 ここは『高柴デコ屋敷』。かつての三春藩領で、300年に及ぶ人形師の里である。  三春藩は古来良馬の産地だった。愛馬の成育への祈りは、馬頭観音信仰とも結びつきながら、いつしか子どもたちの健やかな成長を祈る思いに重なり、三春駒と呼ばれる木製の郷土玩具が生まれたのである。その後、京人形の技が採り入れられ、優美な土人形や和紙の張り子人形が作られるようになった。  
 伝統の三春駒人形は、昭和29年、年賀切手の図案に採用されたことでも知られる日本を代表する民芸品だ。誰もが一度は目にしたことがあるに違いない。  
 「黒駒は安産や子育て、白駒は長寿の守り神です。先代が途絶えかけていた三春駒人形の技を研究し、苦労して復活させました」  集落にある人形師の一人、「彦治民芸」10代目主人橋本高宜さんのお話である。柳宗悦らの民芸運動の刺激もあって、民芸品は新しい視点から見直され、歴史を〝いま〟に繋ぐことになる。  
 手作業を重ね、精根を傾ける職人たちの姿に触れることができるのも、でこ屋敷を訪ねる大きな魅力のひとつだ。  
 「今の時代、手で触れる和紙素材の感触や手づくり独特の素朴さを伝えていくことも、大切ではないかと考えています。これからの未来へ向けて、新しい民芸のあり方を探っていきたいものです」  
 福をもたらす縁起物を求めるなら、作り手の温もりを直に感じられる人形師の里を、一度訪ねてみてはどうだろう。
  
昭和29年には彦治民芸先代作の『三春駒』が、平成10年には10代目橋本高宜さん作の『腰高とら』が年賀切手の図案として採用された。
 
高柴デコ屋敷「彦治民芸」
〒963-0902 郡山市西田町高柴館野80-1 
TEL024-972-2412 
※磐越自動車道郡山東ICより車で約10分 / JR磐越東線三春駅から徒歩約40分
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