ヒトゲノム解析と遺伝子診断の未来

トのからだは約60兆個の細胞からできています。 それら全ての細胞内には核が存在し、核内には染色体が存在しています。染色体は4種類の塩基からなる2本の鎖が逆方向に合わさった(二重らせん構造)細長いDNAが折り重なってできています。DNAの決められた場所には遺伝情報が含まれており、それが「遺伝子」と呼ばれているのです。
 遺伝子の持つ遺伝情報によって、からだの組織や臓器はつくられていきます。ですからDNA上の遺伝子領域に異常があれば、異常なタンパク質が作られてしまい、細胞は正常な働きが出来なくなります。つまり様々な疾患やがんが引き起こされることになります。

間のDNAはヒトゲノムプロジェクトによって解析が進められました。その結果、DNA医学、分子遺伝学は革命的に進歩し、多くの先天性ならびに後天性疾患が遺伝子レベルで診断できるようになりました。このような新しい医学の進歩は、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などを未然に診断することを可能にし、将来の病気の発症を予防できる時代を迎えています。
 感染症から生活習慣病へ、さらには予防医学を含めた遺伝子医療の世界へ。医療のあり方は科学技術の進歩とともに根本的に変わろうとしているのでしょうか。
 現在、『東京クリニック』と『南東北医療クリニック』で遺伝子診断や治療に取り組んでおられる衞藤義勝先生は、こうした遺伝子医療の世界的権威です。
んや遺伝病など、遺伝子で診断出来る病気も増えています。個々人の遺伝子を調べることによって、個性に基づいた薬の効果を測るテーラーメード医療も始まっています。 誤解されることが多いのですが、遺伝病は決して特別な病気ではありません。遺伝子の異常は誰にでもあるのです。また、そのすべてが遺伝するわけでもありません。今後、医療の道に進む者は、そうした遺伝子に関する知識が必須とされる時代がやってくるでしょう」。
 衞藤先生はこれまで、国際先天代謝異常学会などの会長を歴任、遺伝子医療における倫理指針の取りまとめにも尽力してこられました。
 究極の医療とも呼ばれる遺伝子医療の世界。生命科学の根源を深く問いながら、それは人類理解や社会のあり方にも大きなインパクトを与えていくはずです。

東京クリニック 先端医療研究センター長/遺伝病治療研究所所長

東京慈恵会医科大学遺伝病講座教授

米国マウントサイナイ医科大学兼任教授/UCLA小児病院理事 他

衛藤義勝 先生

Dr.Yoshikatsu Eto