結核について

適切な治療を行えば治る病気です。
 結核は過去の病気と思われがちですが、現在でも年間およそ3万人が新たに発症し、約7万人の罹患者がいる、主要な感染症のひとつです。
 肺結核は、結核菌という細菌を原因とした感染症です。結核菌が体内に入り、肺で増殖することによって起こります。
 ところが、感染者のうち、肺結核を発症してしまうのは10人に1人か2人くらい。これは体内の免疫機能が、結核菌を封じ込めてくれるからです。ただし、免疫によって結核菌の活動は停止しますが、死滅せずそのまま体内にとどまっているケースが多くあります。体内に残った結核菌は、身体の免疫力が低下すると、再び活発化し、肺結核を発症させてしまうことがあります。
 肺結核に対しては、糖尿病や人工透析、大きな手術などで体力が弱っている方、免疫力が低下してしまう疾患がある方や、お年寄りなどは、注意が必要です。
 お年寄りの場合、若い頃に感染していることが多く、その菌が再び活発化してしまうことも少なくありません。また、子ども、特に乳幼児は免疫力が低いので、肺結核に感染すると発症しやすくなります。そのため、予防接種(BCG)を生後6ヶ月までに実施することになっています。
 最近、若い世代で結核が多い理由は、結核に対する抵抗力(免疫)をもたない人が増えたことなどが考えられているようです。
肺結核の症状と治療
 肺結核を発症すると、せきとたんがでて、微熱が続きます。息苦しい、胸が痛い、食欲がないなどの症状も現れますが、かぜと似ているため、重症になってから、初めて受診される方も少なくありません。せきや微熱が2週間以上続く場合には、自己判断せず、かかりつけ医にご相談ください。
 現在、肺結核の治療は、そのほとんどが薬物療法です。3~4種類の薬剤を併用して服用します。服用期間は、症状にもよりますが、およそ6ヶ月~1年です。入院治療が必要な場合もありますが、近年は通院で治療するケースも増えてきています。
 注意しておきたいのは、治療薬を自己判断で中止してしまうと、菌が変異し、薬の効かない菌(耐性菌)になってしまう恐れがあることです。また、症状が治まっても、結核菌は生き残っているケースがありますので、服用は必ず医師の指示に従ってください。(日本では、薬を毎日確実に飲んでもらうためWHOがすすめているDOTSと呼ばれる方法が導入されています。)
 肺結核は感染しても、バランスのよい食事や充分な休養、適度な運動を心がけていれば発症しにくくなります。また発症しても、適切な治療を行えば治る病気です。また、肺結核になると、必ず人にうつしてしまうわけではありません。多くの場合、病状が悪化し、たんから結核菌が検出されるようになった患者さんのみが、せきやくしゃみなどで結核菌を外へ排出してしまうのです。
 しかし近年、肺結核に対する危機感の薄さから、集団感染の報告が多くあります。健康診断を受けるのはもちろんですが、「ただのかぜだと思っていたら、肺結核だった。気がついたときには、周囲の人に結核菌を感染させていた」ということにならないよう、早めに医師の診察を受けてくださいね。