診療の羅針盤として最新医療の水先案内を行う東京クリニック。国内トップクラスのドクターたちが集結し、急性期病院に匹敵する高度先進医療機器を備える。正確で迅速な検査と多彩なドックや、医療の未来を切り拓くクリニックとしてのあり方も特徴的だが、とりわけ標準治療を超えた最新のがん治療に対する取り組みには、多くのマスコミが注目する。

診療の羅針盤?東京クリニック/最高の医療を提供するために

 2006年、東京クリニックは南東北グループによってJR東京駅前に開設された。院長の宮崎東洋先生はペインクリニックの第一人者である。原因不明の痛みに苦しみ、悩みながら暮らす人たちから神経ブロック注射と呼ばれる方法で慢性的な痛みを取り除く。杖をついて治療に訪れた患者さんが帰りには杖もつかずに帰っていく。テレビなどでもたびたび紹介されているが、そんな光景には誰もが目を見張る。
 東京クリニックには、そんなスーパードクターたちが集結している。「神の手」と讃えられる天才脳神経外科医・福島孝徳先生や、大腸内視鏡の権威・工藤進英先生らの存在も大きな話題だ。
 2009年10月にはフロアーを地下2階まで拡張し、リニューアルオープンした。注目の診療科としては美容、形成外科がある。大学病院と深く連携し、「美のベストパートナー」と呼ぶにふさわしい美容医療は東京クリニックならではの抜群の信頼と安心を誇る。最新の光治療やレーザー治療機器の導入も通常の美容クリニックのレベルをはるかに超えるものだ。
 がん治療においてはどうだろうか。南東北がん陽子線治療センターとの連携は緊密で、不破センター長らによる外来が設けられ、PETドックとともに、陽子線治療の首都圏における相談窓口として、その利便性は高い。

東京クリニック副院長

照沼裕先生

照沼先生は郡山市の総合南東北病院
でも診療中です。

 東京クリニックの副院長を務めるのは照沼裕先生である。がんへの自己治癒力を強化するための免疫療法や、温熱療法によるがん治療・予防の相談と実践、低用量の抗がん剤や分子標的薬を用いたがん休眠療法を実践する。
 先日テレビ放映された免疫療法について触れておきたい。患者さんは60歳の女性。7年前に乳がんを発症、手術をしたが、2年前に再発。がんは肺に転移していた。抗がん剤や放射線治療を試したが、副作用がひどく、痩せて髪の毛も抜けてしまい、家事もできなくなった。そこで体に負担の少ない治療法を探し、免疫療法にたどり着く。
 治療は2週間に1回の外来通院。横になって、点滴を受けるだけだ。本人の血液の免疫細胞(樹状細胞)とリンパ球を大量に培養し体内に戻すのだという。これを6~7回繰り返す。副作用もなく、女性は両親の介護ができるほどに回復、日常の生活を取り戻し、「がんを治療しながら生きる道」を見いだしたと語る。
 照沼先生は免疫研究の第一人者。マイアミ大学助教授などを務め、アメリカで研究を続けた。エイズ対策で飛躍的な進歩をとげた免疫研究の最新の成果が、がん治療に新たな光をもたらしている。

南東北グループの中核、総合南東北病院(郡山市)。南東北医療クリニック地下1階の南東北PET・ガンマナイフ高度診断治療部門にはPETカメラとPET?CTが合わせて5台導入され、充実したPETがんドックを提供する。ほかにも脳ドックなど、健診メニューは豊富だ。そのなかでも、最新の話題として注目されているのが「もの忘れ・がんPETドック」だろう。誰もが漠然とした不安を覚える認知症。その早期発見にもPETが力を発揮するという。

総合南東北病院?高精度のPET検診/認知症早期診断への応用

 がんの形状ではなく、がん細胞の活動を画像化するPET(ペット)。がんを早期発見するだけではなく、最近では治療方針の検討や治療効果の判定でも欠かせないものとなってきた。南東北がん陽子線治療センターでは、世界で唯一の試みとして専用のPET?CTを導入し、陽子線照射が治療計画通りに行われているかをチェック、治療の正確性を支えている。
 PETの開発と研究を牽引してきたのは東北大学である。同大学でPETによるがん検査の原理を確立し、検査薬剤FDGを開発、実用化を果たしたのは、松澤大樹先生(現・東京京橋未来クリニック院長)である。松澤先生は総合南東北病院でも高次脳機能研究所所長を務めたが、がんの早期発見にもたらした功績は大きい。
 ところが、そもそもPETとは、脳研究のための装置として開発されたものだという。その成果のひとつがβ(ベータ)アミロイドイメージングPET。認知症を診断する最新の検査技術だ。
 厚生労働省科学研究報告書(平成19年)では、2035年には認知症患者は450万人ほどに達するという。認知症は医療分野はもとより、福祉、介護においても日本が抱える大きな課題であり、この研究の重要性は言うを待たないだろう。
 ところで、認知症に新たな光りを当てるこの研究は、実は南東北病院で「もの忘れ・がんPETドック」としてすでに応用されている。先日はノンフィクション作家・桐山秀樹氏が総合南東北病院に取材に訪れ、「文藝春秋SPECIAL冬号」にその記事が掲載された。

総合南東北病院の「もの忘れ・がんPETドック」はβアミロイドイメージングPETに神経心理検査・MRI検査などを組み合わせて海馬の萎縮度を評価するなど、認知症の早期診断を目指すと同時に、PETがんドックを行います。
βアミロイドPET

東北大学大学院医学系研究科

機能薬理学分野教授

谷内一彦先生

 さて、11月20日、東京都内で行われたあるセミナーで、この研究の第一人者、東北大学教授・谷内一彦先生の講演が行われた。決して避けることのできない〝老い〟。認知症には誰もが漠然とした不安を抱くもの。将来、認知症を発症する可能性がPETで分かるというその仕組みを、谷内教授は分かりやすく解説した。
 「認知症全体の約6割を占めるのはアルツハイマー病で、これは脳に特有のタンパク質が蓄積された結果、発症すると考えられています。そのひとつ、βアミロイドはアルツハイマー病の発症の20年ほど前から少しずつ蓄積されると考えられており、これが老人斑と呼ばれる脳の黄色いシミとなって現れるのです。
 βアミロイドPETは脳のどの部分にどれだけそれらの蓄積があるかを調べる検査です。
 PETを利用しますが、検査薬剤の生成に巨額の投資が必要なため、なかなか一般化しない状況があります。結果として検査費用も安くはなく、自費による健診として国内数箇所で行われているのが現状ですが、認知症発症の可能性を超早期診断できれば、治療薬や生活習慣の改善、適切なケアなどで、その進行を遅らせることもできるわけです」
 医療、科学技術の進歩は著しい。総合南東北病院には、その最前線の研究成果が遺憾なく取り入れられている。開頭せずに脳の病巣を治療するガンマナイフ治療や、脳神経外科、脊椎・脊髄外科、小児の心臓ステント手術や、難病とされる疾患(遺伝子疾患、血管奇形)など、注目の医療は枚挙に暇がない。

南東北がん陽子線治療センターが開設1周年を迎えた。陽子線の照射を受けた患者数は2009年10月16日現在で328人。舌がん、頭頚部のがんや肝臓がん、前立腺がんとともに、3期肺がんなどで大きな治療効果を上げている。公的資金によらない、民間初の陽子線治療の導入は各界から大きな関心を集めてきたが、その治療実績から、陽子線治療の驚くべき実力が明らかになりつつあるようだ。

南東北がん陽子線治療センター/最先端のがん治療?がん治療成績を大幅に向上

 南東北がん陽子線治療センターの陽子線治療が、最新のがん治療法としてマスコミに取り上げられることが多くなった。
 がん治療を特集した雑誌や書籍にもすでに多くの掲載があるが、テレビ放送でも何度か紹介されてきた。
 それぞれの番組では、実際に治療を体験した患者さんたちが登場することも多く、体にメスを入れず、リラックスして受けられる治療であり、照射そのものも数十秒という治療時間の短さに、一様に驚きの声を上げる。
 陽子線治療は最新の科学技術の結晶でもある。加速器で陽子を光の早さの約7割、1秒間に地球を約5周する早さまで加速する。水素の原子核を超高速でがんにぶつけ、がん細胞とそのDNAを破壊するという治療法で、正常細胞への影響が少なく、病巣に集中照射が可能だ。夢のがん治療だが、装置とそれを格納する建造物にかかる費用は100億円規模と高額であり、十分に普及しない状況があった。事実、現在全国で7カ所の治療施設のうち、民間の医療機関は南東北がん陽子線治療センターだけである。
 去る10月17日に行われた開設1周年の記念施設見学会、及び記者説明会では、総合南東北病院の寺西寧院長が挨拶に立ち、不破信和センター長が陽子線治療の実績と施設の概要などを解説した。
がん治療成績の改善
 症例内訳に関する統計資料は本紙4面に掲載したが、ちょうど1年目の09年10月16日までの症例数は328人である。同センターでの陽子線治療では、頭頚部、肺がんの占める割合が高く、消化器系及び食道がんの症例も多い。進行がんの治療実績の向上を目指す同センターでは、化学療法との併用と、陽子線独自の高度な局所制御能力を活かし、従来の放射線治療では避けられなかった副作用を抑えた治療を実現させている。三期の肺がんなど、そのなかには陽子線治療でなければ救えなかった命も多い。切らずに治し、高いQOL維持を可能とする陽子線治療だが、治療から治療後にかけて、通常の生活に支障なく暮らす患者さんたちの姿には驚かされる。
 「早期の肺がんなら、たった一回の照射で治る可能性もあるのです」
 そう語る不破センター長。南東北がん陽子線治療センターの実践は、これまでのがん治療成績を大幅に改善することに繋がるだろう。
 12月にはセンターの始動から現在に至るまでの姿を一冊にまとめた「福島孝徳とチームプロトン 陽子線が拓く21世紀のがん治療」(徳間書店)が刊行される。免疫療法との併用を含め、南東北グループが持つがん医療の実力は、がん治療の未来を指し示すものとなっている。
南東北がん陽子線治療センター開院1周年記念
「施設見学会及び記者説明会」2009年10月17日(土)


写真下は挨拶に立つ寺西 寧・一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 総合南東北病院 院長(中)と、不破 信和・南東北がん陽子線治療センター長(左) 写真右はセンター見学会で記者の質問に回転ガントリーの仕組みを説明する診療放射線科・鍵谷 勝技師長

不破信和

南東北がん陽子線治療センター長

 

寺西寧

一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属

総合南東北病院 院長

診療放射線科

鍵谷勝技師長

 

 

レポート&メッセージ

>>南東北がん陽子線治療センター センター長 不破信和先生による開設1周年記念記者説明会資料より
南東北がん陽子線治療センターの取り組み

図2 舌癌

図1 食道癌

 本施設では頭頚部癌、肺癌、食道癌、肝臓癌、前立腺癌を陽子線治療の主な対象例と考えているが、特に頭打ちとなっている進行癌の治療成績の改善を目的としている。
 具体的には頭頚部癌、食道癌、肺癌には化学療法との併用による化学陽子線療法を施行している。
 従来の放射線治療では食道癌あるいは肺癌の場合、心臓、肺が照射されることによる治療後の副作用が大きな問題として指摘されている。また照射部位の制御率も頭打ちになっているが、陽子線治療と化学療法との併用療法により副作用の軽減と治療効果を上げることにより、治療成績を大幅に改善することは可能であると考えている。
 図1は食道癌に対する陽子線治療の線量分布を示すが、心臓への線量が大幅に軽減していることが判る。進行舌癌例には動注併用陽子線治療を施行しているが、従来の放射線治療では下顎骨への照射による障害、あるいは治療後に歯牙が脱落することが多かったが、陽子線治療では図2に示すように下顎骨への線量が大幅に軽減されるため、有害事象が大幅に軽減されるものと考えている。この治療は世界初の試みである。

<治療前>        <治療終了後3カ月>

進行舌癌に対する動注併用陽子線治療

進行舌癌の動注併用陽子線治療第一例

(FDG)PET-CT

進行食道癌に対する陽子線治療

(FDG)PET-CT

 
民間初の陽子線治療施設としての当センターの役割
 現在、75歳以上の後期高齢者は1160万人であるが、2025年には2167万人に急増するとされ、病期如何に関わらず、手術が出来ない患者層が増加し、放射線治療・粒子線治療の果たす役割は否応なしに重要性を増すことを意味する。
 今後の高齢化社会において重要な役目を果たす粒子線治療を普及させるには医療経済の問題は避けて通れない。現在、先進医療として約290万円の医療費が必要である。来年より疾患限定で保険収載がされる可能性があるが、患者側での負担の問題については単に医療行政だけで決めるのではなく、国民の参加による合意で決める必要があると考える。
 陽子線治療に限らず、医療への貢献度、責任の重さは民間、公的医療機関に等しく課せられた命題である。
 その意味で南東北陽子線センターと他の公的機関の使命は同じであると考えている。本施設での実績が我が国での陽子線治療の普及、引いては今後のがん治療の行方に大きく影響するものと考えている。
Southern TOHOKU Proton Therapy Center (2009年10月16日現在)
 
 一般財団法人脳神経疾患研究所附属南東北がん陽子線治療センターでは2008年10月17日より陽子線治療が開始された。陽子治療施設としては全国で6番目の施設となり、民間では最初の施設となる。
 南東北陽子線センターの治療室は全3室(回転ガントリー室2室、固定ポート1室)であるが、当初は回転ガントリー1室のみで治療開始した。また使用エネルギーの関係で、対象例は当面、前立腺癌のみであったが、2008年12月より頭頚部癌、2009年1月より呼吸同期を必要とする肺、肝、食道癌が開始された。
 全室稼働の時期は2009年3月からであったが、建屋着工から治療開始まで約2年6カ月であり、すでに薬事承認された陽子線治療装置(三菱電機社製)であることを考慮しても、非常に短期間で治療が開始されたことになる。
 建物は地下1階、地上4階建てであり、加速器、治療室は地下1階、診察室、画像診断装置は1階、病室(19床)は3階、4階は患者相談室、アメニティーのためのフロアーになっている。
 2009年10月17日現在で照射人数は300人を超え、現在のペースは年間400人の治療人数に相当する。
>>南東北がん陽子線治療センター センター長 不破信和先生による開設1周年記念記者説明会資料より
陽子線治療の対象例
  • 脳腫瘍
  • 進行頭頸部がん
  • 早期肺がん
  • 進行肺がん
    (腫瘍径が8cm以内である一塊になっている例)
  • 転移性肺がん
    (原則は1ヶ所で腫瘍径が5cm以内である例)
  • 縦隔腫瘍(胸腺がん)
  • 早期食道がん
  • 進行食道がん
    (腫瘍長径が10cm以内である例)
  • 肝臓がん
    (腫瘍径が10cm以内である例)
  • 転移性肝がん
    (原則は1ヶ所で腫瘍径が8cm以内である例)
  • 前立腺がん
  • 膀胱がん
  • 直腸癌骨盤内手術後再発例
  • 小児のがん