体に負担の少ない眼科治療の実際

片目の中心部が見えにくい。加齢黄斑変性の症例

南東北眼科クリニックでの手術風景
難治性角結膜疾患に対しての羊膜移植や、
福島県アイバンクの角膜移植登録の受付及び角膜移植
にも対応する。

 平山義人さん(仮名)は最近視力が落ちていると感じていた。57歳という年齢でもあり、「いよいよ老眼もひどくなったかな」とそのままにしていたが、あるとき左右の目の見え方を比べてみて驚いた。右目で柱時計の文字盤を見てみると、中心部が見えない。
  ほかの病気で総合南東北病院に通院していたこともあり、平山さんはすぐに南東北眼科クリニックを受診することにした。
 検査の結果はやはり黄斑変性。滲出型と呼ばれるもので、網膜の中心にある黄斑に異常な血管が生じ、光が遮られているらしい。
 治療は、特殊な薬剤点滴とレーザーを組み合わせて異常な血管を退縮させる光線力学的療法(PDT)と、薬物注射を行うことになった。
 「正直なところ、眼球にレーザーを当てたり注射したりするというので躊躇しました。怖いですよね。でも、実際に治療を受けてみるとレーザーは20分程度。注射は10分もかからない。痛くも痒くもないので拍子抜けした感じです。入院は1週間。退院のとき、強い紫外線をできるだけ受けないように注意され、退院後は月に一度の通院で、3回ほど注射治療を受けました」
 平山さんは現在も定期的に検査を受けているが、見えなかった右目の中心部も違和感なく見えるようになった。
目がかすむ。視界が歪む。白内障、黄斑前膜の症例
 一方、右目の視界の歪みに悩まされていた谷川美都子さん(仮名)は78歳。近くの眼科で黄斑前膜の診断を受け、手術をすすめられた。眼球を手術するのを考えると怖い。そんなとき知り合いが南東北眼科クリニックで白内障の手術を受けた。様子を聞くと痛みもなく、入院も2日ほどですんだという。谷川さんはそれを聞き、手術を受ける決心をした。
  南東北眼科クリニックでの診断は黄斑前膜と白内障。局所麻酔をして両方の手術を一度に行い、ちょうど1週間で退院した。手術時間は40分程度。黄斑に癒着した膜を除去し、白内障では人工のレンズを入れた。手術前0.5だった視力が退院から1週間ほどで0.7程度になり、以前に比べ視野の歪みも改善したという。
 

総合南東北病院の眼科として的確な診断にもとづく眼科領域の最新治療

 放っておくといつのまにか進んでしまう目の病気。命に危険がないからとそのままにしていると、日常生活に大きな支障をきたしてしまうだけでなく、本当は脳梗塞や脳腫瘍、高血圧や糖尿病などに原因があることも。目に異常を感じたら早めに眼科を受診したい。
 脳神経外科や他科の診療とも強く連携する南東北眼科クリニックでは一般眼科のほか、特に、網膜剥離・黄斑前膜・加齢黄斑変性などの網膜硝子体疾患に力を注ぎ、白内障の水晶体再建術では県内一の実績を誇る。最新の検査機器と治療法で目の健康を支える南東北眼科クリニックを訪ね、小林奈美江副院長にお話しをうかがった。
白内障と最新治療

超音波で水晶体の濁りを砕いて取り出す白内障治療に
ついて説明する小林奈美江副院長

 「白内障は、レンズの役割をする透明な水晶体が白く濁る病気です。水晶体のタンパク質が年をとると白く濁ってしまうためにおきるのです。症状は霧がかかったような見えずらさや、まぶしさ。モノが二重に見えることもあります」
 白内障は年齢を重ねるとともに増え、60歳代で7割、80歳以上ではほとんどの人が白内障になる。主な原因は老化だが、糖尿病やアトピー性皮膚炎の合併症としてかかることもある。手術をしないで放っておくと緑内障、ぶどう膜炎や網膜剥離を起こすことがあり、失明に至る場合もあるから注意が必要だ。
 「白内障で濁った水晶体は、元に戻すことはできません。目薬で改善されない場合は眼内レンズを挿入する手術が一般的です。手術は、まず点眼剤麻酔をし、3ミリほど小切開して超音波で水晶体の濁りを砕いて取り出した後、人工のレンズを入れます。手術時間は10~15分程度です。最新の超音波機器の導入で治療時間も短く、体への負担は少なくなりました。痛みはほとんどありません」
 手術は日帰り、ないし2~3日の入院というケースが多い。
 「術後に気をつけたいのは感染症です。3カ月ほど通院で経過を観察する必要があります」
 白内障手術は新しい医療技術の開発によって年々進歩しており、早期の視力回復・社会復帰が可能になっているという。
眼内レンズの進化
 人工の眼内レンズはピントを合わせる調節力がないため、眼鏡が必要になる。手術後1カ月くらいまでに視力が安定してくるので、この時期に自分の視力に合った眼鏡をつくるが、眼内レンズも最近では進化し、眼鏡が要らなくなることも多い、と小林副院長は説明する。
 「トーリック眼内レンズは乱視を矯正できるもので、保険適用の中で白内障手術と乱視矯正が同時にできます。診察の上、医師の判断が必要になるのですが、手術後は眼鏡をかけなくても支障を感じないという方が多くなります。最近では老眼の改善にも有効な眼内レンズも開発されています。多焦点眼内レンズと呼ばれるもので、従来の単焦点眼内レンズがひとつのピントであるのに対し、遠くと近くの両方にピントを合わせることができ、遠方及び近方の視力回復が可能となります」
 この治療法は『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』と呼ばれるもので先進医療(注)の扱いとなり、治療は保険適応にならないが、南東北眼科クリニックではその施設認可を取得している。
 術後のアンケートでは『メガネが不要で、近くも遠くも見えるようになった』『スーパーの値札がみえるようになった』『お化粧がやりやすくなった』といった感想が寄せられているという。
黄斑変性

 黄斑変性とは、網膜中心部の黄斑と呼ばれるところに異常が現れ、視力障害を引き起こす病気だ。
 網膜の中心である黄斑には、視力をつかさどる重要な細胞が集中している。さらに黄斑の中心部は中心窩(ちゅうしんか)といい、文字などはここで見ているが、この中心窩に異常があると視力の低下が深刻になる。
 「この病気には萎縮型と滲出方の二つのタイプがあり、萎縮型は長い時間をかけてゆっくりと進行するので視力低下もあまり問題にならないのですが、怖いのは滲出型です。網膜の下の脈絡膜に異常な血管(脈絡膜新生血管)がいつの間にか生まれ、そこから水がにじみ出てきたりするのです」
 治療法にはPDTと呼ばれる光線力学的療法や抗VEGF治療がある。
 「PDTは専用のレーザーを病変に照射する治療法で、光を感受する特殊な薬剤を点滴し、薬が新生血管に届いたときにレーザーを当て、薬の化学反応で新生血管を潰します。この治療法は眼科PDT認定医が行う必要がありますが、南東北眼科クリニックでは二人の認定医がおり、治療にあたっています。抗VEGF治療とは、薬を眼内に直接注射することで新生血管の増殖や成長を抑制する治療法です」
 黄斑変性は自覚がないうちに急に進んでしまい、やがて失明してしまうこともあるという。欧米では失明原因の第1位。日本でも身体障害者手帳取得原因の第4位だ。視界がぼやけたり、モノが歪んで見えたり、中心部が見えなくなるという症状を感じたら、早めの受診と治療を心がけたい。
難易度が高い小切開硝子体手術
 一般に眼科選びのバロメーターとされるもののひとつに硝子体手術件数がある。
 硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)は、黄斑前膜、黄斑円孔、糖尿病網膜症など多くの眼底疾患で行われる。
 「手術は、黒目と白目の境目から通常3カ所の穴をあけ、そこから細い精密な器具を出し入れして行いますが、その際、より小さな切開による手術を可能とする器具が開発され、眼球への負担の少ない手術が行われるようになっています」
 これは小切開硝子体手術と呼ばれる難易度の高い手術だ。南東北眼科クリニックはこの手術ができる県内でも数少ない施設のひとつである。
 「診断にあたってはOCTスキャナー(網膜断層解析装置)をはじめ、見え方の評価、眼内レンズ選択時のサポートなどにも有効な最先端の検眼装置を多数導入しています。また、他科に入院中の患者さんも南東北眼科クリニックで診療を行い、全身状態が悪い方は総合南東北病院と連携し全身管理下で手術を行っております」
 読売新聞『病院の実力2011』によれば、硝子体手術は全体で108件(県内2位)、白内障手術929件(県内1位)、緑内障の手術25件(県内4位)、加齢黄斑変性に対するPDT14件(県内3位)など、大学病院にも迫る実績だ。
 

 最後に、目の病気が脳疾患や全身の病気の症状として現れることがあることを知っておきたい。逆に言えば目の網膜の血管の変化を調べることで、高血圧や糖尿病などの早期発見につながることもあるのだ。
 南東北眼科クリニックは総合病院の眼科という位置づけを併せ持つ。
 全身の健康とともに、生活の質(QOL)を維持し、老後を快適に過ごすためにも、眼に不安を感じたら一度精密検査を受け、早期発見、早期治療に努めたい。

◎専門外来紹介

網膜硝子体疾患クリニック

南東北眼科クリニック

  小林 健太郎 院長

加齢黄斑変性症・糖尿病性網膜症・網膜剥離・黄斑円孔・黄斑前膜・増殖性硝子体網膜症・外傷など


ブドウ膜炎クリニック

東京医科歯科大学 望 月 学 教授

月1回・予約制


斜視・弱視・眼形成クリニック

福島県立医科大学 八子 恵子 前助教授

月1回・予約制

総合南東北病院 附属 南東北眼科クリニック
〒963-8052 福島県郡山市八山田7丁目166
TEL.024-934-5434
※ クリニック2階には全室天然温泉の入院病棟を完備。
※ 南東北医療クリニックに隣接。入り口横に天然温泉の足湯があります。
■ 診療科   眼科, 外科, 内科, 形成外科, 皮膚科
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  火・木・土曜 午前8:30~12:00 午後2:00~5:00
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