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乳がんについて

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乳がんは日本女性の11~12人に1人が罹患すると言われており、女性がかかる癌の第1位です。自分で見つけられる唯一のがんで、乳がん患者さんの約半数が自分でしこりに気付いて受診します。乳がんは発見されたときの進行度により完治できるかが左右されます。大きさが2cm以下と小さく、リンパ節や他の部位に転移がない早期がんでは90%以上の治癒が期待できますが、進行がんで発見されると約50%になり、早期診断・早期治療がとても大事です。

乳房は、乳汁を作る乳腺(小葉)と、乳汁を運ぶ乳管、それらを支える脂肪などからできています。乳がんは、乳管や小葉の細胞ががん化し、増殖することによってできる悪性腫瘍です。乳がんの多くは乳管細胞からできる「乳管がん」で、小葉からできる「小葉がん」や特殊な型の乳がんもあります。がん細胞が乳管の中に留まり、乳管の外にでないものは「非浸潤がん」、がんが乳管の外に広がったものを「浸潤がん」といい、治療法がかわります。

乳腺のMRIでしこりの大きさや数・広がり・位置などを、全身のCT・PETなどでわきのリンパ節転移や多臓器転移の有無を判断し、病期診断を行います。

乳がんの病期分類(進行度)

0期

非浸潤がんといわれる乳管内にとどまっているがん、または乳頭部に発症するパジェット病(皮膚にできるがんの一種)で、極めて早期の乳がん

Ⅰ期

しこりの大きさが2cm以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない

ⅡA期

しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性があるまたは、しこりの大きさが2~5cmでリンパ節や別の臓器への転移がない

ⅡB期

しこりの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性があるまたは、しこりの大きさが5cmを超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がない

ⅢA期

しこりの大きさが5cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周辺の組織に固定されている状態、またはリンパ節が互いに癒着している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節に転移がある場合あるいは、しこりの大きさが5cm以上で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節への転移がある

ⅢB期

しこりの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたり皮膚がむくんでいるような状態炎症性乳がんもこの病期から含まれる

ⅢC期

しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移がある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある

ⅢA期

しこりの大きさが5cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周辺の組織に固定されている状態、またはリンパ節が互いに癒着している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節に転移がある場合あるいは、しこりの大きさが5cm以上で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節への転移がある

Ⅳ期

別の臓器に転移している乳がんの転移しやすい臓器:骨、肺、肝臓、脳など

治療・手術

乳がんの治療の基本は外科治療(手術)です。手術には、乳房の一部を切除する「乳房温存術」と、乳房を全部摘出する「乳房全摘術」があります。
乳房の手術の際、わきの下のリンパ節の手術も行います。

乳房温存術
(乳房部分切除)

しこりの大きさが3cm以下で、大きく広がっていない場合、原則として術後放射線療法を行います。

乳房温存術
乳房全摘術
(乳房切除術)

しこりが大きい、複数ある、皮膚にひきつれがあるなどの場合、大胸筋・小胸筋を残し、乳腺組織を全て切除します。

乳房全摘術
センチネルリンパ節生検 リンパ節に転移がない場合、術中にリンパ節を1-2個採取し転移がなければ腋窩郭清を省略します。
感覚障害や腕のむくみを起こさないようにします。
腋窩郭清

リンパ節に転移がある場合、わきの下のリンパ節を全て取り除きます。わきの下の感覚が鈍くなったり、腕がむくんだりすることがあります。

手術後は、薬の治療を行うことで再発率が減少し、生存率が向上します。病理組織検査の結果(サブタイプ分類)から、乳がんの特性と進み具合を判断し、治療を選択します。ホルモン療法と抗がん剤療法があり、治療の必要性と患者さんの希望を総合的に判断し、治療法を決めていきます。

サブタイプ分類

ホルモン受容体 HER2蛋白 増殖能(Ki67)
ルミナルA型 あり なし 低い
ルミナルB型(HER2陰性) あり なし 高い
ルミナルB型(HER2陽性) あり あり 高い
HER2型 なし あり
トリプルネガティブ なし なし

ホルモン療法(内分泌療法)

乳がんは「ホルモン受容体」のあるものとないものに分けることができ、ホルモン受容体のある乳がんでは、女性ホルモンががんの増殖に影響しているといわれています。ホルモン療法は、女性ホルモンの分泌や働きを妨げることによって乳がんの増殖を抑える治療法です。

抗がん剤療法(化学療法)

がん細胞は、正常細胞とは異なり、際限なく増殖し続ける性質があります。抗がん剤療法は、細胞増殖を制御しているDNAに作用したり、がん細胞の分裂を阻害したりすることで、がん細胞の増殖を抑える治療法です。

分子標的治療

がんの増殖に関わっている分子を標的にし、その働きを阻害する薬剤による治療法です。

サブタイプ分類による術前・術後薬物療法選択

サブタイプ分類 選択される薬物療法
ルミナルA型 ホルモン療法、(抗がん剤療法)
ルミナルB型(HER2陰性) ホルモン療法、抗がん剤療法
ルミナルB型(HER2陽性) ホルモン療法、分子標的治療、抗がん剤療法
HER2型 分子標的治療、抗がん剤療法
トリプルネガティブ 抗がん剤療法

乳房温存術のあと、温存した乳房やリンパ節での局所再発の予防のために放射線治療が行われます。
また、再発した場合のがんの増殖や骨転移に伴う痛み、脳への転移による神経症状などを改善するために行われることもあります。

放射線治療

放射線により、細胞の増殖を阻害し、がん細胞を死滅させる治療法です。
治療には約5週間かかり、通院治療で可能ですが、遠方で通うのが大変な場合は入院治療もできます。

乳がんが再発した場合や診断時に遠隔転移がある場合は、患者さんに合った薬で治療を行っていきます。当院ではがんによる痛みや精神的な悩みなどを一緒に解決してくれる「緩和ケアチーム」があり、一緒に診察させていただきます。

男性の乳がん

女性化乳房 男性の片方または両方の乳房がふくらみ、乳頭の下がしこりのように触れたり、押すと痛みを伴ったりするものです。
50~70歳代に多く、発生頻度は0.03%(1万人に3人)くらいで、原因は女性ホルモンの増加によるものと考えられますが、肝機能障害や薬の副作用(高血圧剤、利尿剤、前立腺剤など)によっても引き起こされます。
また、男性にも乳がんは発生するため、鑑別には病院での検査が必要になります。