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うつ病 最新事情

近年、うつ病の原因として、「脳の血流の低下」が鍵を握ることが明らかになってきました。

うつ病と脳の血流の関係

 うつ病と認知症の症状は見分けることが難しいぼど、よく似ているところがあります。とくに、意欲の低下やもの忘れは、両方の病気に共通してみられます。さらに、マヒのようなはっきりとした自省見症状はないものの、いくつかの小さな脳梗塞が脳内にできる「多発性脳梗塞」が、高齢者のうつ病の発症に関係しているケースが少なからずあります。
 うつ病の多くはストレスにより発症します。大切な人を失うことや、健康や仕事・社会的地位を失うといった「喪失体験」。人間関係や仕事関係のトラブル……。こうしたストレスは自律神経の働きに大きく影響します。そして、自律神経の働きは、脳の血流と密接な関係があります。脳の血流の低下は、脳内に放出される神経伝達物質の分泌や特定の脳組織の働きにも影響をあたえ、うつ病の発症やその長期化につながっていくと考えられています。
 こうしたことから現在、うつ病と脳の血親の関係について調べて診断する、近赤外線を使った「光トポグラフィー」という先端医療機器による検査も注目されています。

双極性障害

 双極性障害という病名をど存知でしょうか? かつては「操うつ病」とよばれていたこの病気は、気分が極端に高揚する「操」状態と、気分が極端に落ち込む「うつ」状態を繰り返すことに特徴があります。
 うつ病と脳の血流の関係が明らかになるにつれ、一つの大きな発見がありました。それは、うつ病と思われていた患者のなかに、実際には双極性障害だったというケースが、かなりの数確認されたのです。これは、光トポグラフィー検査では、うつ病と双極性障害で、画像に違いがでるため、分かってきたことです。
 双極性障害の最大のリスクは、自殺率が非常に高いことです。
 膜状態のときには、常識的には無分別と思われるような行動をとりやすくなります。極端な浪費、無謀な計画の実行、他者に対して高圧的な態度をとる……。これらの行動は、うつ状態のとき、自殺願望をともなうほどの非常に強い自責・後悔の念となって自分に帰ってきます。
 双極性障害とうつ病では、治療方針が異なります。しかし、双極性障害の患者は、うつ状態が辛いときに病医院を受診するケースが多く、操状態のときのことは病気と認識していないことが少なくありません。
 うつ病で受診する場合、操状態のときがなかったかを必ず医師に伝えるようにしましょう。とくに気分的に異常な高揚感を感じているときに、人間関係や仕事上で間違いを犯す傾向のある人は、この点に注意してください。

脳の血流から考える、うつ病対策

 脳の血流がうつ病に関係していることは明らかになってきました。しかし、直接的に脳の血流を改善するという治療法はまだ確立していません。脳神経物質の分泌をうながし、その働きを改善する薬物療法が第一選択肢となります。
 脳の血流に関しては、個人で取り組むことのできることがいくつかあります。
 まずは、日常的に適度な運動を心がけること。適度な運動をすると気分がすっきりとしますが、これは血液の循環とも関係しています。
 負担の少ないイベントに参加することや、身近なところへ旅行するのもよいでしょう。創作活動や、手先を使って何かを作ってみるのもよいかもしれません。これらも脳を刺激し、気持ちを改善するよい機会となります。
 とはいえ、うつ病の症状には「意欲の低下」があります。心身に無理のない範囲で行なうようにしてください。
 40歳を超えた頃から、脳を含めた身体機能の低下が顕著になってきます。年齢的にいって、辛い喪失体験が身体の不調に重なるケースも増えてくることでしょう。こうしたときに、うつ病になりやすいことを覚えておいてください。
 うつ病対策でもっとも有効なのは、早期に心療内科や精神科を受診して治療を行なうことです。うつ病が重症化しないように、自覚症状がある場合は、遠慮なく、かかりつけの医師に相談しましょう。

-すぐに役立つ暮らしの健康情報-こんにちわ 2013年11月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載