広報誌 南東北

 

いま、あなたは健康ですか? ~健診の意義と落とし穴~

「健診」は健康か否かの確認 「検診」は特定病の早期発見・治療

 健康診断や人間ドックを受け「異常なし」といわれた直後に病気が発覚―という話はよく聞きます。全身を診て貰ったからもう大丈夫いう人は意外に多いようです。8月22日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院消化器センター長の西野徳之先生が「いま、あなたは健康ですか?健診の意義と落とし穴」と題した講演内容を要約、健診と検診の違いや健康問題をおさらいします。
 皆さん健康ですか。8~9割の方が挙手しましたが、皆さんはいつか必ず死にます。5年後か10年後か時期は分かりません。問題はそれまでどう生き、元気でいるため何をすべきかです。健診でチェックを受け精密検査でも「異常なし」だと大概の方は、自分は健康だと思ってしまいます。でも我々の診療を受けると、昨年胃がん検診(バリウム検査)で異常なしだったのに今年胃カメラ検査したら進行がんが見つかった。半年前にA病院でドッグを受けて異常なかったが、体調を崩し当院を受診したら膵がん。半年の命でした。毎年健診を受けている30代が頭痛がひどく救急車で搬送されたらクモ膜下出血だった―といった例が結構あります。高血圧治療を受けていた60歳女性が腹痛を訴え当院でPETを受けたところ肝臓に転移、進行膵がんと判明。大腸がん術後定期的にPET検査していた67歳女性も1年前に病変がなかったのに進行膵がんでした。半年早ければ手術できたかもしれないが、膵がんは確実に早期診断できない難しい病気、エコーでも分かりません。
 高血圧や糖尿病、高脂血症、脳梗塞、心筋梗塞などの治療を受けている方、治療の目的判りますか。血圧が高いと動脈硬化が起きます。数値が下がればいいのではありません。加齢につれて心身も老化し体が錆びます。血管は老化が早く高血圧や動脈硬化になりやすく糖尿病や心臓病など生活習慣病を引き起こします。特に高血圧や肥満、喫煙者、皮下脂肪が多い人は動脈硬化が進み心臓病などになりやすい。
 日本女性の平均寿命は昨年86・41歳で2年ぶりに世界一、男性は79・94歳で5位。あなたは何歳まで生きたいか。目標まで逆算して10年生きたいならがんで亡くならない、20年ならその間動脈硬化が起きないようにする。自分の足で歩き、食事もトイレも自分ででき新聞を読み、笑顔で家族と会話できるようにするのが「幸せ」ではないか。無病息災は高望。がんや動脈瘤などはなかなか想定できないが、高血圧などは想定できる病気。防ぐ手立てはある。
 健康診断です。「健診」は健康であるか否かを確かめ(一次予防)、「検診」は特定の病気を早期に発見し治療する(二次予防)ことです。健診で危険因子が判明、リスクがあると分かれば生活習慣を改善して健康管理すべきです。
 健診には職場と地域健診、検診はがん検診(胃・大腸・肺・乳房・子宮)があります。健診では高血圧や不整脈、貧血、肝機能障害、高脂血症、糖尿病、痛風、腎機能障害、肺・大腸がんなどが分かります。でも脳動脈瘤や逆流性食道炎、十二指腸潰瘍、食道・胃・肝・胆嚢・胆管・膵臓・乳・子宮・卵巣がん、狭心症・胆石などは分かりません。
 落とし穴は、例えば肺がん検診で心臓や肋骨に重なる腫瘍はⅩ線で見えません。CTだと分かります。たばこはやめた方がいい。大腸がん検診の「異常なし」は便に血が混じっているか否かで確実ではありません。バリウムの胃がん検診の「異常なし」も映像が不鮮明で早期がんは見逃しやすい。しかし内視鏡だと大腸がんや肺がんなども一緒に見つけられます。冠動脈CTだと心臓だけでなく肝臓、膵臓、乳がんなども分かります。一緒に調べているのは世界で当院だけです。胆石はエコーで調べないと分かりません。超音波や胃内視鏡、腹部CT、大腸内視鏡、頭MRI、心血管造影、PET検診などを受ければ精度は上がります。
 わが国の3大死因はがん、心臓疾患、肺炎。胃がんの死亡は減っていますが、手術や薬の進歩で死亡が減少しただけで罹患率は変らず、肺がんや膵臓がんが増えています。健康管理は自分の人生に対する自己責任です。がんは怖くなく早いうちなら治せます。検査すればがんがあるかもしれません。胃がん検診で「要精検」でも早期がんなら内視鏡治療でOKです。厚労省は内視鏡検診だと早期がんまで見つかるから欠点―と変なことをいっていますが、内視鏡こそ有効です。PETも唯一早期がんは発見しにくく万能でありません。健康は失ってから考えるものではありません。健診で全てが分かるわけではないが、幸せは健康であって初めて実現するものです。


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