広報誌 南東北

 

ラップ療法

 食品の保存に使うラップを患部に巻くだけで熱傷や床ずれが治る―といった情報が13年ぐらい前からテレビやインターネットで広がりました。そのラップ療法を一般家庭で行った結果、一部で非常に重篤な感染症や四肢の切断といった事態が起きました。
 ラップ療法はもともと湿潤療法に使用する医療用シートを食品用ラップで代用したことから始まりました。かつて傷の手当ては、傷口から細菌が体内に侵入するのを防ぐために患部を消毒し乾燥させることが基本でした。乾かすことで細菌の繁殖を防ぐことができるからです。これに対し湿潤療法は、逆の方法を取ります。消毒薬を使わず患部の乾燥も行いません。水分を必要としている自分自身の細胞も増殖しにくいという欠点があるからです。このため湿潤療法では、先ず患部が感染症に罹っていないか的確な判断が求められます。ラップ療法というと手軽なイメージがありますが、これを行うには細心の注意が必要なのです。
 インターネットやテレビでラップ療法など治療法や健康法を取り上げる際、危険性にはほとんど触れず手軽さや効果の高さが強調される傾向があります。日本褥瘡学会は「先ず医療用創傷被覆材の使用が原則。褥瘡の治療に十分な知識と経験を持つ医師の責任と患者の同意が必要」としています。日本皮膚科学会も正しい知識の普及が大事―としています。最善策はかかりつけ医を持つこと。科学的根拠のある医療情報のことを「エビデンス」といいますが、疑問に感じる情報を安易に試すことはやめたいものです。

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